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金ローの冒頭映像について

コロナ禍でのステイホームがそのきっかけだろうが、お家時間を充実させるために動画配信サービスの需要が高まり、その傾向は現在も続いている。
いわゆる動画サブスクである。
私はサブスクに加入していないのでその恩恵を受けることなく日々を過ごしている。
そもそも映画館に足を運ぶこともあまりないのだが。
金曜日の夜に自宅で味わう映画気分は非常に楽しみにしている。
金曜ロードショーのことである。
自宅のテレビを通してしか吸収できないエンタメがここにある。
仮にこれをお家映画館と名付けよう。
このお家映画館の楽しみのベースとなっていたのは、あのオープニング映像なのかもしれない。
そう考えるのは、つい最近のことである。
金曜ロードショーについて熱く語りたいところだが、実は毎週見ているわけではない。
年に数回程度、思い出したようにテレビの前に座る、といった具合なのである。
ライフスタイルが変われば子供の頃のように毎週視聴時間を確保できるわけでもないし、むべなるかな。
だから、すぐには気が付かなかったのである。 
金曜ロードショーのオープニング映像が刷新されていたことに。
私の預かり知らぬところで、あのオジサンは引退していたのだ。
幼き日の私を映画の世界に連れ出してくれていた、チャップリンのような格好の、あのオジサン。
黒いシルクハットを被った、あのオジサン。
レトロな雰囲気を醸し出す、あの山吹色の背景。
カタカタ回るフィルムの音。
徐々に大きくなって映し出される作品タイトル。
すべてが失われ、見知らぬ数多の女たちがひしめく赤い空間に、タイトルが現れ、本編スタート。
現在のオープニングに文句をつける気はまったくないが、以前のオープニング映像を気に入っていたために、少々寂しく感じている。
あのオジサンに別世界に連れ出されるような高揚感と一抹の恐怖感がミックスされた複雑な気持ちが、いわば、お家映画館への誘いの儀式と化していたのだ。
知らず知らずのうちに刷り込まれていたのだろう。
これもサブリミナル効果だろうか。
また、いつか、あのオジサンに会えないだろうか。
失って初めて、彼の偉大さに気がついた。
映画館で映画泥棒と警察官の映像がなくなったら、やはりこんな気持ちになるのだろうか。
私は今日も赤い空間でお家映画館を開催する。
オジサンと世代交代した女たちに誘われて。

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