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油絵を描いて気づかされたこと2

  私の本職はテニスコーチです。小さな子供から初老の方まで幅広く指導しています。逆にプロテニスプレーヤーや世界に出ていくような選手は扱ったことがありません。私の受け持つ老若男女の生徒さんにはそれぞれに導いていきたい山頂があって、それにはどの道順でどういう工程で登っていくべきかを、生徒さんの環境や能力によって決めていきます。その計画はコーチ側が主導で決めていくこともあれば、生徒さん側が決めていくこともあります。また、途中でその道順や工程期間を変更することもあり様々な形があります。

 私が小さな頃から描いてきた絵と、今回挑戦した油絵は決定的な違いがあります。それは制作時間です。そもそも退屈な授業の暇つぶしに描き始めたのがきっかけですから、先生にバレないように、授業中の時間内で書き上げなければなりません。大人になってから描く絵も、本業のテニス資料や、ブログの挿絵として使うためで、そのためには自分の中での納入期限があるものばかりです。ですから、これまで描いてきた絵の制作時間は長くて3時間くらいです。しかし、今回の油絵は1枚に3週間かけました。同時進行で風景画、次男の野球している姿、Yoshikiのドラムソロなども制作中ですが、やっと次男の絵が完成に近づいているくらいです。当然ながらプロの画家ではありませんから納入期限はありませんが、そもそも油絵の完成は描いている側の人間が決めます。つまり書いている側が「納得すれば」「これで完成」とすれば終わりなのです。ちなみに有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』は、厳密にいうと作者が存命中に完成していません。しかも制作期間は数年という単位です。

 そんな中で、とくに我が子である次男の絵を描きながら、親として何でも社会的に決まった期間や、周りの進捗状況と合わせて育てている部分があるのではないかと自問自答していました。すぐそばにいる2つ上の長男とも比べやすく、例えば学校の勉強などは少し理解力が乏しく点数が芳しくありません。嫁が焦って塾に通わせているようですが、その結果が出ないのでイライラしています。小6にもなるのでそろそろ自分がどういう位置にいるのかも理解しているでしょう。

 油絵を描きながら心地よかたことは『期限がない』ということと『何度でも失敗が許される』『何を描こうが自由』ということでした。初挑戦なだけに絵の具やオイル量も幾度も間違えました。ただ、余り過ぎた絵の具がもったいないから背景に使ったり、オイル量が少なすぎて擦れてしまったら、偶然にもぼかしが綺麗に写ったりと、最初にイメージした山頂に向かって最短距離で進ものではなく、むしろ紆余曲折で山頂にすぐに近づきたくないような感じがしながら描いていました。

 二人の男の子を育てている父親として、本業では数年前から本格的にジュニア指導に本腰を入れている今、こんな油絵に挑戦しているような『ゆっくり』『優しく』『純粋な』気持ちになるような環境を子供たちと作っていきたいなと強く感じました。

 子供の成長には早い、遅いがあります。その子の成長に合わせて導いていく必要があります。そんなことは前からわかっています。ただ、油絵をして少し考え方が変わりました。その成長はその子の成長に合わせてではなく、全ての子供にとって、とにかくゆっくりと時間をかけて遅いくらいの方がいいのではないかと思っています。

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