予防接種健康被害救済制度と副反応疑い報告制度の違い

「コロナワクチン副反応で救済が認められたからといって,因果関係があるわけではない」という言説に反論するためのnoteです。

因果関係はありまぁす!

「予防接種健康被害救済制度」と「副反応疑い報告制度」という,似て非なる制度があり,紛らわしいと言われています。
両方とも予防接種法

に基づく制度です。

「予防接種健康被害救済制度」の「死亡一時金または葬祭料、障害年金及び障害児養育年金」に関して,令和6年4月17日現在で,

進達受理件数 :1,316件
認定件数 :561件
否認件数 :182件
保留件数 :2件

となっています。→

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001246550.pdf

そして,副反応疑い報告制度で因果関係が認められているのは2件です。これを根拠に,救済が認められたからといって因果関係があるわけではない,という言説がまかり通っています。

救済制度は,予防接種法第15条が根拠です。

第十五条 市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種等を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、次条及び第十七条に定めるところにより、給付を行う。

いいですか?
繰り返しですが,

当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したとき

です。救済されたということは,ワクチンが原因だと政府が認めたのです。
当たり前です。国費を給付するのですから,「ワクチンのせいと言えないけど,ま,いっか」なんてあり得ません。

そして,「副反応疑い報告制度」は予防接種法第12条,第13条が根拠です。

第十二条 病院若しくは診療所の開設者又は医師は、定期の予防接種等を受けた者が、当該定期の予防接種等を受けたことによるものと疑われる症状として厚生労働省令で定めるものを呈していることを知ったときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない
第十三条 厚生労働大臣は、毎年度、前条第一項の規定による報告の状況について厚生科学審議会に報告し、必要があると認めるときは、その意見を聴いて、定期の予防接種等の安全性に関する情報の提供その他の定期の予防接種等の適正な実施のために必要な措置を講ずるものとする。
 厚生科学審議会は、前項の規定による措置のほか、定期の予防接種等の安全性に関する情報の提供その他の定期の予防接種等の適正な実施のために必要な措置について、調査審議し、必要があると認めるときは、厚生労働大臣に意見を述べることができる。
※第4項に,製薬企業や接種者などにも協力を求められるとあり,それを根拠に製薬企業などからも報告が上げられています。

いいですか?
「厚生科学審議会」が接種の適正な実施のために政府に意見を述べるためにある制度です。

検討を行うのは,厚生科学審議会の下の,「予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」です。その役割は, https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000014793_1.pdf に,

厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の設置について
1.設置の趣旨
厚生科学審議会令(平成 12 年政令第 283 号)第5条に基づき、予防接種施
策全般について、中長期的な課題設定の下、科学的な知見に基づき、総合的・継続的に評価・検討を行い、厚生労働大臣に提言する機能を有する予防接種・ワクチン分科会を設置する。
2.分科会の組織及び所掌事務
○ 副反応検討部会
1.予防接種法の規定により審議会の権限に属させられた事項(副反応報
告に係る事項に限る。)を処理すること。
2.予防接種による副反応に関する重要事項を調査審議すること。

と述べられています。純粋に科学的な検討を行うのが役目です。

ざっくり言えば,ワクチンが原因かどうかについて,救済制度は総合的に,報告制度は厳密に科学的に検討します。

「総合的に」とはどういうことか。医療行為と有害事象の因果関係の判断基準について,「ルンバール事件」と呼ばれる医療事故裁判の判例があります。

この判決に,

「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」

とあります。
一見難しいですが,要するに,厳密な科学的根拠がなくても,ほとんど誰が見てもワクチンのせいだよね,と思えるなら十分,ということです。認められたということは,まあ誰が見てもワクチンが原因だと思うよね,ってことです。

さらに,現在の救済制度の審査ではこれすらも守られていないと青山弁護士が指摘されていたような記憶があります(違ったらすみません)。

副反応検討部会の検討なんて,本来役所内部の検討であり,一般人が立ち入るものではありません。そこでの因果関係の検討なんて高度な科学の世界の話です。科学的に厳密な因果関係の証明なんて,そう簡単にできるものではありません。実際の社会で行われる医療行為のほとんどは厳密な根拠などなく動いています。厳密な科学的根拠にこだわっていたら何も動きません。一般人が気にする世界ではないのです。

一般人が関係するのは,救済制度です。ここで認められたならばそれは社会的に因果関係はあると判断されるということなのです。


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