「指示」じゃなくて「エール」を贈る。愛され部長 中島の“応援力”
エン・ジャパンには、部下から絶大な支持を得る事業部長がいます。
派遣会社支援事業部を統括する、中島純さん。ご本人にナイショでメンバーの方々に行なったアンケートには、
「顔色が悪いとか、元気なさそうとか、ちょっとした変化に気づいてくれる」
「時短勤務の社員を気にかけてくれる」
「穏やか。家族のエピソードを話してくれて和む」
「誰に対してもフラットで誠実。正しくないときはちゃんと言ってくれる」
「真摯な態度でじっくり話を聞いてくれる」
「忙しいはずなのに、返信がマメ」
などなど。(※いっさい仕込みなし!)
確かにメンバーたちの心をつかんでいる中島さん。彼のマネジメントの秘訣を探れば、迷えるリーダーたちの道しるべになるかもしれない…!ということで、お話を聞かせていただきました。
見えてきたのは、ある意味で、メンバーの活躍を陰から支える“黒子”に徹するマネジメントの形。
「個人が成長するほど組織は成長する。だから、メンバーが元気で前向きに働けるよう整備するのが、私の役割なんだと思います」
メンバーを元気づけるために、いったい何をしている?中島流・マネジメント術に迫ります。
「自分はここにいていいんだ」と思えるように
─じつは、中島さんのもとで働く社員にアンケートを取らせていただきました…!「純さんはちょっとした変化に気づいてくれる」という声が多く、すごく素敵だなと。
なんか恥ずかしいですね…(笑)。あんまり意識したことはないですが、確かに、メンバーの様子は気にかけているかもしれません。
たとえば、顔色を見て体調が悪そうだったら「大丈夫?」と声をかけてみたり。日報を読んで「文章がなんとなくネガティブになってきてるかな…」と思ったら、MTGの前やお昼に「最近落ち込んでない?」とさりげなく聞いてみたり。
もちろん、私が声をかけたからって何かが変わるわけではないけれど、人って「自分のことを見ていくれている人がいるんだな」と感じると、安心できると思うんです。
それから、私の部署は小さいお子さんがいて時短勤務で働くママさん社員も多いから、仕事と育児の両立で無理していないかな?ということも気になりますね。
これは意識的にしているというよりは、自分にも6歳の娘がいて、妻の大変さを実感しているからかもしれません。
たとえば、お子さんが熱を出して早退した社員がいたら、翌日おはようと同時に「お子さん大丈夫だった?」って。ついでに、最近の自分の娘の話もしちゃったりする。時短勤務だから肩身が狭い…なんて思わずに働いてもらえたら嬉しいですね。
ただ、メンバーを気にかける上では、気をつけていることもあります。たとえば、髪型や服装の変化、「誕生日おめでとう」とかは、なるべく言いません。
これは事業部長という立場上、みんなに平等に接するため。全員の変化に気付けるならいいですが、もしも気づけなかったら「あの人には言ったのに私には言ってくれない…」という気持ちにさせてしまうかもしれない。それは私の本意ではなくて。ひいきなしに、みんなに対してフラットでありたいんです。
「できていること」と「強み」に目を向ける
─普段のコミュニケーション以外に、メンバーとの接し方で心掛けていることはありますか? 自己肯定感といいますか、「自分で自分のことを認められるか」という点も、仕事をする上ですごく大事なんじゃないかなと。だからメンバーの「できていること」や「強み」は、積極的に本人に伝えるようにしています。
社員と面談をしていると、「自分なんて…」とか「自分には強みがないんです」という言葉がけっこうな頻度で出てきます。肌感ですが、比較的女性社員に多いかもしれません。
でもね、強みがないなんてことは絶対ないんですよ。私の場合、「強みがないんです」と言われたら、「誰と比較しているの?」とまず聞きます。
確かに、なかには毎月すごい業績を残すハイプレーヤーがいるから、そこと比べたら自信をなくしてしまう気持ちは分かります。でも、本人は悲観的になって気づいていないけど、ちゃんと出来ていることがあるんですよ。しかももっと俯瞰して見たら、その悩みのずっと手前で苦戦している人だっている。
だから面談の場では、「君はこのレベルをクリアしているんだから、それだけで素晴らしいじゃない」と伝えるようにしています。
人ってできていないことには敏感で、できていることには鈍感なんじゃないかな。そういった意味でも、「いかにメンバーを元気づられるか」って大事な能力だと思います。
「マネジメントって元気づけることだと思う」と話す中島さん。クールで冷静な印象とは裏腹、表情や言葉からはやさしさが滲み出た。
何回でも「失敗できる組織」をつくる
─なんでしょう。中島さんって、部下の「サポーター」みたいな存在なのかなと。
そうですね、私の中で上司の役割って、「管理」とか「引っ張る」とかではなく、メンバーが意志を持って働けるよう「背中を押すこと」だと思うんです。
自分の型に当てはめてメンバーを管理するって、正直上司のエゴだなと。たしかに「こうすべきだ」と自分のやり方を強制すれば、部下も組織も失敗せずに済む確率が高いですし、ラクなんですよ。でもそれって、目先の成功や業績しか見えていない。
だから私は、「こうしなよ」とはできる限り言わない。もしメンバーが「いつまでに◎◎の達成を目指します」「こんなプロジェクトを立ち上げたい」と自分から意見をあげてくれたら、「いいね、やってごらん」と任せます。その内容が「ぶっちゃけ上手くはいかなそう…」と思うものでも(笑)。
つい余計な口出しをしたくなっちゃうことってあるんですけど、その気持ちを抑えてドシッと構えて見守るスタンスをとるんです。
仮にそれが失敗したとしても、起きてしまったことに対してはグチグチ言いません。本人の感情が落ち着くのを待って、「何が足りてなかったと思う?」とたずねる。失敗してしまった現状を、まずはどうしたら良い方に持って行けるか考えることだけに集中してほしいから。
みんなには、とにかく失敗を通して学んでいってほしい。それが一番成長につながるし、意思を持って働けることにつながるんだろうなって。いつまでたっても上司に口出しされる組織なんて、面白くないじゃないですか。
「数字の話ばかりで怖い」と言われてしまった過去
─中島さんのお話を聞いていると、すごくメンバー一人ひとりを大切にされているのだなと感じます。いつから、このようなマネジメントスタイルに? 今でこそ偉そうに話していますが、昔は全然メンバーのことを考えられていない上司だったんです…。
あれは、求人広告の営業を5年経験してマネージャーになりたての頃かな。当時、私の役割は、人材を採用したい企業のニーズをとってくる「営業」と、その求人広告を制作する「コピーライター」の両方を管理することでした。
ですが、自分がマネージャーになってから何ヶ月も未達が続いて。次こそは何とか取り返さなければ、と正直焦っていました。そして気づけば、毎日「達成まであと◎万円だぞ」みたいな数字の話ばかりしていたんです。
ついてきてくれるメンバーもいましたが、多くはそうじゃありませんでした。特に、コピーライターは違った。売上が伸びればコピーライターの書く原稿もその分増え、キャパシティが逼迫する。そうすれば1本1本の原稿のクオリティは担保できない。そう考えるメンバーもいたんですね。
だんだんと、朝礼で私が話をしても、コピーライター数名があまり目を合わせてくれなくなるのを感じました。「こんな風に原稿の本数目標ばかり追う仕事がしたかったわけじゃない」と言われることもあったりと、彼らの仕事のやりがいに寄り添うことが出来なかったなと反省しています…。当時は、「中島さんって数字の話ばかりで怖い」と思われていたんじゃないですかね。
その時、個々が大事にしているものは違うということを身を持って学びました。目標を達成することに喜びを感じる人もいれば、クライアントとの商談や取材が好きな人もいる。表現より企画で勝負したい人もいれば、とにかくコピーが好きでクリエイティブ賞を狙うことにこだわる人もいる。
みんな一人ひとり違うのに、通り一遍なコミュニケーションをしててはいけませんよね。もっと個人と向き合って、個々にあったコミュニケーションをとらなければいけなかった。それに気づけず苦しめてしまったメンバーたちには、今でも申し訳なく思っています。
「悩んでいること」自体が素晴らしい
─最後に、マネジメントに悩んでいる人に何かアドバイスをするとしたら? なんだろう…「悩んでいること自体を肯定的に捉えよう」と言いますかね。悩んでいるということは、成長したいという意欲の表れ。だから、存分にもがけばいいよ、と。
正直、どうやったら組織がうまくいくっていう“特効薬”みたいなものは、ないと思います。私だって今もずっと悩んでいますから(笑)。
ずっと悩み続けて10回くらい失敗して、やっと自分の中で答えが見つかる、くらいに思っていた方が良いんじゃないでしょうか。
ただ、もし今掲げている理想が高すぎるなら、少しハードルを下げてみるのもアリなんじゃないかなと。できることから、コツコツやっていけばいい。
そしてメンバーを本気で思うなら、まずは自分が行動を変えてみる。これに尽きると思います。
「メンバーから“純さん、なんか顔怖いですよ!(笑)”と言われることもあります」と笑う中島さん。「メンバーから言われたことは、素直に受け止めます。指摘されたとしてもそれは個人批判じゃない。個人として言葉を捉えず、組織として受け止めるようにしているんです」と語ってくれた。
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