移住者が神社を再建するまで(序)

七ツ石神社を何らかの形で保護しようと志した当初は、「再建」まで辿り着けると思っていなかった。
標高1700mほどの山上にあって、作業は難しく予算も嵩むだろう。
大学を出たばかりで社会人経験の乏しい私には、数十万の記念碑建立という案ですら想像のつかない予算だった。
後に2千万近くかかる事業となるこの神社再建が、こんなにも大きな仕事になるとは誰が予想しただろう。
神社との出会いから5年、プロジェクト開始から3年、無事に神社は再建された。

一大事業を終えてある意味燃え尽きてしまったと思った私に、初めて出会った仲間から呼びかけられる。
「あなたの遠吠えが聞きたい」と。
2019年の12月に開催された「狼座談会」の夜に投げかけられたこの言葉は、
私の中に燻っていた火種に風を送ってくれた。
書かなければ再建を終われない。新しい社はこの先の100年も残ってほしいと思うが、形あるものはいずれ壊れるし、命あるものはいつか滅びる。
しかし物語は語られる限り生き続け、人が消えても歴史は残るだろう。
この「七ツ石神社再建」を物語として生き残らせたい、そういった思いが生まれた。

そしてこれを機に、今までの狼との縁から順に神社再建までの道のりを思い返してみようと思う。

滝の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞こえけれ

いつか私の命を越えて駈けて往くこの物語が、誰かに届く時どんな形をしているだろうか。

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