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【ライブレポ】SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"2022

 今回はライブレポです。11月26日と27日、ACIDMANの結成25周年を記念して開催されたフェス”SAI”に行ってきました。ACIDMANと同世代で00年代を代表するバンド達を中心に、先輩も後輩も入り乱れての超豪華な19組。青春時代を彩ったバント達の共演に夢のような2日間でした。
 開催から1ヶ月が経過し、ライブレポとしては新鮮さも失われ、かつ公式で投稿されている『BARKS』さんのクイックレポが非常に優秀なので、私のレポとしては本当に感想とアーティストを知った経緯とかを手短に書こうと思います。

東京スカパラダイスオーケストラ

 ACIDMANにとってスカパラが恩人であるのはファンとして周知の事実。スカパラはキャリアも長いだけあって、私が生まれる前から活動を続けている。そんなスカパラを知ったのは小学生の頃、今思えばとても大人な田島貴男さんとのコラボ曲『めくれたオレンジ』だった。
 当時の頃の曲でもある『銀河と迷路』やライブで聴いたことのなかった『水琴窟』なんかは大人の余裕を感じて嬉しかったし、大木伸夫も参加しての『追憶のライラック』など、朝にふさわしい快活さと大人っぽいビターな味わいを残したトップバッターを務めてくれた。

DOPING PANDA

 私が音楽にのめり込んだ中学生の頃、ACIDMANと同世代として精力的に活動していたのを名前だけは知っていたが、当時はギターロックが王道で少し変化球な彼らには興味を示していなかった。その後活動休止となり、今年ようやく再結成。今思えば非常にもったいないことをしたと思うが、この期間は私の音楽性が多様化したということでもある。
 そんな訳で今回の出演者の中で唯一ライブを見たことなかったが、再始動後の曲である『imagine』もカッコよかったが、当時からの代表曲である『MIRACLE』が驚く程にカッコよかった。2006年発表だったと思うが、あまりにも時代を先取りしていて、令和の今ようやく時代が追いついた感を感じた。スター・フルカワユタカはACIDMANの3人と同い年。ようやく再び盟友が動き出したことに喜びを感じるライブだった。

SiM

 今回出演した全19組の中でバンド内最年長メンバーで数えると1番年下の後輩バンド。といっても36歳で、Vo.のMAHが言う「おっさんばっか」のフェスなのは間違いない。悪魔(という設定)のMAHらしく、先輩のACIDMANに対しても踏ん反り返っていたのだか、その節々に先輩へのはリスペクトを感じた。
 ライブも大学生の時に知った代表曲の『KiLLiNG ME』はもちろん、進撃の巨人のテーマでもある『The Rumbing』等では流石の凶悪でヘヴィなサウンドを聴かせてくれた。ただ最も響いたのは『The Sound of Breath』だった。重い曲を携えた彼らが聴かせる、静かにそれでも熱く内から燃え滾るロックバラードは心を大きく揺さぶられた。
 彼らが主催するロックフェス・DEAD POP FESTIVALに出演する日も近いのかもしれない。ACIDMANにとってもSiMは可愛い後輩であることはひしひしと伝わってきた。

back number

 来年、バンドとしては20年以上のキャリアを積んだモンスターバンドのみが到達している5大ドームツアーが決定しているback number。元々ブレイク前夜ぐらいから名前だけは知っていたバンドだが、ライブはいつかのCDJで1度見たことがあるぐらい。正直あまり知らない部類ではある。
 ただ1曲目に彼らの代表曲である『クリスマスソング』のイントロが鳴り響いた瞬間のどよめきは凄まじかったし、彼らの人気を実感する場面でもあった。またNHK朝ドラ『舞いあがれ!』をたまにではあるが見ているので、主題歌の『アイラブユー』も聴けてハッピー。
 MCで「ACIDMANの『赤橙』『造花が笑う』『アカシア』の3部作に衝撃を受けてバンドを始めたんですけど、思い描いていたあんなカッコいいバンドにはなれませんでした」とVo,Gtの清水依与吏は笑うが、今の柔らかな彼らが本当に多くの人達に支持されているのだから、それはそれで素晴らしいバンドになったのは間違いない。

氣志團

 本人達もMCで仰っていたが、一見するとACIDMANと氣志團に何の繋がりがあるのか?と思う人も居るかもしれない。私が彼らのライブを初めて見たのは長崎でのイベントだったと思うが、そこにはACIDMANと今日の出演者であるストレイテナーも参加していた。なので彼らがACIDMANと同期なのは知っていた。
 ライブでは、当時は感じなかった80年代のメタルのような重厚でエッジの効いたサウンドを響かせて驚きも感じた。どうしても彼らといえばVo,Gtの綾小路翔のエンターテイナーっぷりのイメージがあるだけにギャップを感じた。
 とはいえ『One Night Carnival~造花が踊る~』という、ACIDMANの造花が笑うのメロディをサンプリングした彼らの代表曲を披露し、ACIDDAN or KICIDMANという洒落も効かせるなど、やっぱり彼らのエンターテイナーっぷりも再認識したライブだった。

LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERS+

 この日のメンツではスカパラと共にACIDMANにとっては先輩にあたるアーティスト。自ら”KING OF 部外者”と名乗っていたが、ACIDMAN含めSAIの面子の中では良き兄貴分であることはお馴染みだ。
 彼が元々やっていたSUPER STUPIDというバンドがあるが、私が音楽に興味を持った時には活動停止していた。なのでソロになってから知ったアーティストだが、彼が持つ独特のポップパンクセンスは今回も素晴らしかった。最後に演奏したソロ初期からの代表曲である『Makin' Magic』はこの世代の人なら必ずは聴いたことがあるだろう、そんな曲をたまアリの大きなステージで聴けることが嬉しかった。
 ACIDMANといえば大木伸夫の帽子姿をイメージする人も多いと思うが、彼もまたハットがよく似合う人でもある。ファッション的な部分も含めて永遠にカッコいい”イッチャン”であった。

MAN WITH A MISSION

 前回のSAI 2017にも出演したオオカミ達だったが、今回はグッズの物販列がback numberと共に最も長かったらしく、5年経って今や不動の人気となった。それはライブでも実感し、GOWポーズでフロアが埋め尽くされる光景は圧巻だった。フェスではいつもトリ付近を任されることが多いが、そんなバンドが中盤に普通に配置されるのもこのフェスの豪華さでもある。
 彼らは度々カバー曲を披露するが、前回はNIRVANAの『Smells Like Teens Spirit』だったが、今回はAC/DCの『Thunderstruck』を披露。こういう他人が主催するフェスでも気にせず自分達を貫くのは人ではない?彼らだからこその度胸かもしれない。
 最後に披露した『Get off My Way』は5年前にも披露しているが、イントロのリフから貫禄を感じるパフォーマンス。まさに狼がACIDMANを喰うようなステージだった。

ストレイテナー

 彼らがまだ2人だったインディーズ時代から親交がある、ACIDMANにとって最も古い付き合いのバンド。Vo,Gtのホリエアツシは「俺たちのフェスへようこそ!5年ぶりに開催できました!」とMCで戯けていたが、ACIDMANの繋がり=彼らの繋がりと言える程に、彼らにとっても馴染み深いバンドが集結した。
 若手時代から切磋琢磨していた頃の代表曲の一つである『SAD AND BEAUTIFUL WORLD』を近年のアレンジで披露する一方、ACIDMANの宇宙に関連した最新曲『宇宙の夜 二人の朝』を披露したりと、盟友ならではのリスペクトを感じるライブ。ラストの『TRAIN』は観客的にも世代の人が多く、沸いた人も多いのではなかろうか。
 そういえば前回のSAI同様にライブでは必須のアンセム『Melodic Storm』を披露していない。彼らなりの1歩引いた引き立てなのかもしれない。

Dragon Ash

 音楽性的には全く方向性が違うACIDMANとDragon Ash。ACIDMANも24歳ぐらいでスマッシュヒットを飛ばし若い時からブレイクしていたが、彼らは20歳でデビューし、すぐにミリオンヒットを飛ばしていたので、同世代ながら感覚的には先輩バンドの感覚がある。私も今日の出演者で最も古くから知っているバンドである。当時TVから流れていた『Let yourself go,Let myself go』をフェスで繰り出す彼らの度胸は流石の百戦錬磨。
 後半は以前に対バンでACIDMANがサビをカバーした『百合の咲く場所で』や最定番曲の『FANTASISTA』などのキラーチューンを繰り出す。kjの煽りにはコロナ禍ということを考えれば違和感を感じる人も居たかもしれない。ただ彼らにとっては”いつものDragon Ashを届ける”ことが盟友・ACIDMANに対する最大限のリスペクトだと感じた初日トリ前のライブだった。

THE BACK HORN

 2日目のトップバッターを任されたのは盟友のBACK HORN。ACIDMANと昨日の出演者であるストレイテナーと”THREE for THREE"という3マンのイベントを開催したこともある程の親交の深さだからこその信頼感ではある。
 1曲目から最終曲としてやることが多かった『刃』を放つともなれば、朝イチからボルテージがMAXになるのはひしひしと感じた。リーダー・Dr.松田晋二のMCも気合いが入った内容。彼らがフェスで1曲は入れることが多いバラード枠は『空、星、海の夜』だったが、これもACIDMANがテーマとする生命と宇宙に寄せているのかなと感じた。いつも通りのライブ、いつも以上に盟友への祝福を感じるパフォーマンスはまさに彼らがテーマとする”共鳴”なライブだった。

sumika

 昨日のback numberと同じく、ACIDMANに憧れた後輩バンド枠。爽やかボップロック路線とは一見整合性が無さそうではあるが、Vo,Gtの片岡健太の力強い歌声や作曲センスは影響を受けていることを窺わせるライブだった。
 彼らと出会ったのは5年程前のフェスだったと思うが、当時はポップすぎると思っていたそのサウンドも年々好きになっているのは、前回のSAIから音楽の好みも年々変わっていることの証明でもある。ただ当時から彼らの楽曲の中では異質さのある四つ打ちロックの『ふっかつのじゅもん』はやはりフェスで映える楽曲。
 そして最後に披露した『Shake&Shake』ではしっとりと丁寧に演奏をする彼ら。音楽に対する誠実さやACIDMANへのリスペクトを感じる、正統派フォロワーの後輩バンドだった。

the band apart

 彼らもまたACIDMANと同世代のバンアパ。Vo,Gtの荒井岳史は「あんた達一体誰なんだよって思うかもしれない」とMCをする。確かに今日のメンツを見ればアリーナを簡単にソールドにするモンスターバンドばかり。しかし私は彼らのことは2004年ぐらいと割と昔から知っていて、決して見劣りはしないだけのパフォーマンスなのは知っていた。
 その中で定番曲ではなく、今夏発売の新作から複数曲を披露するなど、自然体なのか挑戦なのかわからないが彼ららしいオシャレな雰囲気のライブだった。最後は定番曲の『夜の向こうへ』でたまアリにミラーボールが輝きムーディな雰囲気でオシャレ空間に変えてみせた。
 2023年には彼らの地元・板橋で主催フェス『iTa FES』の開催が予定されており、きっとACIDMANも今日のお返しで出演してくれることだろう。

マキシマム ザ ホルモン

 バンアパのカッティングを活かしたオシャレな雰囲気から、サウンドチェックの段階でヘヴィかつ重厚な雰囲気へと一変したホルモン。本人達のMCにて「塾の友達の誕生会みたい」と表現したが、確かに彼らとACIDMANは似ても似つかない音楽性ではある。だた私の周りの学生時代のコピーバンドの候補曲にはACIDMANの『造花が笑う』も、ホルモンの『恋のメガラバ』も上位に位置していた。間違いなく同世代の雄の1組である。
 接点がないと言いつつもVo.のダイスケはんは大木伸夫とは家が近所らしく、ある日の宇宙に関する話をスライドショーにしたり、Dr.Choのナヲと共に本日出演の大御所ミスチルを捩ったりと、流石のエンターテイナーっぷり。
 ACIDMANは彼らを「ラーメンで例えると二郎系」と表現していたが、まさに今日のライブも、麺カタコッテリでパンチがあるのに癖になるライブだった。

BRAHMAN

 いわゆるAIR JAM 2000の世代であり、ACIDMANにとっても先輩に当たるバンド。ある一定の年代からは『SEE OFF』が高校野球やJリーグの応援歌として使用されていることで知った人も多いだろう。私も曲と名前が一致したのはその類ではある。
 彼らといえばVo.TOSHI-LOWがオーディエンスを踏み付け薙ぎ倒すパフォーマンスが特徴だが、コロナ禍の今は”暗影演舞”と題して、映像演出も駆使した魅せるライブを披露。怒涛のように畳み掛ける楽曲の中、今ではすっかりお馴染みとなった細美武士とのコラボで歌う『今夜』や大木伸夫が前回のSAIでもリクエストした『ANSWER FOR…』を大木本人とのデュエットで披露。
 最後の『真善美』でTOSHI-LOW以外が掃けた後、彼は「たった1度の人生、3度だけ見たことがある大木の帽子の中身…意外と生えてた」と笑いを取るが、続けて「今でも毎年3月11日はあの福島で、夜まで酒を飲んでくれるあいつらを本当に誇りに思っている」とのMCには舞台袖の大木も涙。最後は”一度きりの意味を お前らが問う番だ”とマイクを落として暗転する。まさに圧倒のライブだった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

 我々の世代にとってアジカンとのファーストインプレッションはアニメ『鋼の錬金術師』のテーマソングで知ったという人が多いだろう。私はCDTVのテーマソングでACIDMANの方が少しだけ先に知ったが、いずれにしても小〜中学生のかなり早い時期から知っているバンドである。
 今日のライブはその『リライト』や『ソラニン』といった、古くから彼らを知る人への代表曲縛りのセトリと、近年リリースした楽曲による2部構成のような形。SAIはACIDMAN主催のフェスだが、どこか00年代を席巻したバンド達の同窓会のような側面もある。昨日のDragon Ashやストレイテナーのように当時の曲も多めに持ってくるバンドもあれば、今日のアジカンや前のバンアパのように、あえて今の姿を魅せるというバンドも居ていい。
 「なんか違うなって思ったらトイレ行っててもいいよ」とVo,Gtの後藤正文は語ったが、決して力みも媚びもしない彼ららしいライブだった。

ELLEGARDEN

 5年という年月は長いようで短いようでやっぱり長い。5年前のSAIにはVo,Gtの細美武士のバンドであるthe HIATUSとしてフェスに出演したが、あれから5年の間にエルレは復活した。彼らの活動期が主に中学時代だった私は、ライブには行けずに活動休止となった。2019年のNANAIRO-ELECTRIC TOURで初めて出逢えたが、今日も幾ら定番曲のセトリだろうがキッズに戻って最高でしかないセトリだった。
 OpeningのSEから骸骨を纏ったELLEGARDENロゴの登場→Fire Crackerという流れは、それだけて青春を取り戻すのには充分すぎるのであった。細美武士は「こんばんは、ELLEGARDENと申します。初めて見るよっていう人も居ると思いますが、以後お見知り置きを」とMCする。今日のメンツでエルレ通っていない人など居ないだろうに謙虚である。
 実際に『The Autumn Song』はベスト盤にこそ収録されていたが、カップリング曲でしかないのに異様な盛り上がり様だった。当然ながら『Supernova』や『ジターバグ』やらが大盛り上がりだったのは言うまでもない。
 これだけでも大満足なのは間違いないが、最後に披露したのは新曲の『Strawberry Margarita』だった。またエルレの新曲が聴けるライブを見られたこと、そしてACIDMANや今日の出演者達に「これからもよろしく!」と言っている様な気がして、最後までハッピーなライブだった。

10-FEET

 エルレとミスチルに挟まれるという、かなり難しいタイムテーブルの中でのライブになった。Vo,GtのTAKUMAは「今トイレ行ってる奴はトイレ爆発してまえー!」とユーモアも交えつつ、「自分の為に頑張るのはみんなもしんどいと思うねんけど、誰かの為なら頑張れるやろ。俺らも今日はACIDMANの為に頑張る」と、彼ららしいMC。彼らと出会ったのはいつだったかもう覚えていないが、音楽性だけではない、人間性の部分での彼らの素晴らしさを実感したのは大人になってからだと思う。今日も特に深刻に悩んでいる訳でもないのに、とあるMCを聴いて目が潤んでしまっていた。
 彼らと言えば前回のSAIでACIDMANのコスプレが記憶に新しいが、今回はコスプレ衣装こそ忘れたが、『ライオン』の曲中で前回もカバーしたACIDMANの『赤橙』をさりげなくサンプリング。しかし歌詞が延々と「そして少年は一握りの」が繰り返される適当さもまた彼ららしい。
 力強さ・カッコよさ・面白さ・優しさ。その全てを詰め込んだ彼らのライブには人間力や魅力が詰まっている。この難しいタイムテーブルをこなせるのは彼らしかいなかったし、そういう意味ではモンスターバンドにも引けを取らない素晴らしいライブだった。

Mr.Children

 最終発表で出演が発表された時は誰もが驚いただろう。ACIDMANとはap bank fesやプロデューサーの小林武史氏とで繋がりが多少はあったものの、まさか出演するとは思っていなかった。
 もはや説明不要、知らない人は居ないだろう大御所バンド。恐らく30代以下の人はいつ知り合ったかとか覚えてなく、気づいたらもう知っていた状態だと思う。
 そんな彼らの1曲目は『終わりなき旅』だった。きっとACIDMANが紡いてきた25年を意識するかのような選択。Vo,Gtの桜井和寿が発するハイトーンボイスと圧倒的な声量。私は2012年と2018年に2度ツアーで見ているが、初めて見る人も圧倒されたのではないのだろうか。
 『名もなき詩』に続いて「今日はちょっとなら声を出せるらしいので、良かったら一緒に歌いませんか?」と披露されたのは『HANABI』で、イントロが鳴り響いた時の響めきは今日間違いなく1番だった。決して大きな声でもないが「もう1回 もう1回」の声が会場に鳴り響いた。ミスチルはこのライブが新様式になってから初めて声のあるライブだったらしく、4人の表情にも色が出ていた。
 その後『himawari』と続き、彼らのラストは最新曲の『生きろ』。コロナ禍の今ここに集まった全ての人達、そして生命をテーマにするACIDMANに向けての強烈なメッセージだったと受け止めている。
 紛れもなく大御所の国民的バンドなのだか、桜井はMCで「僕らは今年30周年を迎えました。経歴では僕たちの勝ちです」とお茶目な場面も見せた。ここにいる全ての人が圧倒されたであろうライブ、30年のキャリアが紡いだ圧倒的なオーラと技術にただただ圧巻。5曲は少なすぎる…と思う35分だった。

ACIDMAN

 両日共にトリはもちろん主催者のACIDMAN。正直言えば出演者が豪華すぎて、ACIDMANはもはやメインディッシュではなくデザートになるのでは…と思っていた。しかしDragon Ashやミスチルが終わっても減るどころか増えていく観客を見て、極端な話ここまでの9組が前菜なのかとすら思う光景だった。
 初日は『to live』、2日目は『World Symphony』というACIDMANのテーマでもある生命と宇宙を、それぞれ歌い上げるロックナンバーでスタート。フェスだろうとACIDMANらしさでスタートし、初日は続けて『造花が笑う』を披露。この日氣志團が盛り上げカバーを披露したアンサーでもあるし、上記で触れていた私の青春時代の思い出の曲でもある。また『ある証明』では5年前のSAIでサプライズ登場したスカパラの谷中敦・加藤隆志が登場し、あの場面を再現するなど、個人的に過去を思い起こさせる内容だった。
 2日目は『夜のために』や『ALMA』を披露しセットリストチェンジ。この日披露した『ALMA』は個人的にACIDMANが掲げる宇宙や生命を端的にかつ深みのある彼ららしい楽曲で完成度もピカイチだと思っているが、たまアリの舞台でそれが更に輝いていた。そして両日共に大きな気を引いたのが『廻る、巡る、その核へ』だった。通常は稀にライブの最終曲として披露される10分弱ある超大作。これを持ち時間が短いフェスで披露する彼らのチャレンジ精神であると共に、MVの厳しい業に晒されるような映像もスクリーンに映し出され、ACIDMANが持つ世界観にただただ圧倒されて言葉を失う10分間だった。
 両日共に最終曲の『Your Song』は5年前と同じこの曲。しかし冒頭で述べた様に、この5年は個人の問題以前に世界情勢としても激変だった。自由に声は出せないし、モッシュ・ダイブは当然禁止。それでも会場全体に控えめに響いた「Your OK!」は、確かに制約や苦難はあったにせよ、その光景は5年前と何ら変わらなかった。
 全てのライブが終了し、ステージで記念撮影を行う。大木伸夫は「どうも総合プロデューサーの大木です。ACIDMANの2人に大きな拍手を」と冗談を飛ばすが、各日共に朝イチから出演したほぼ全てのアーティストが残っていた、その事実こそがACIDMANの人望やこの日のライブの偉大さを物語っていた。ちなみに2日目はTOSHI-LOW、細美武士、ダイスケはん、10-FEETら賑やかし軍団が大木のコスプレを披露した。TOSHI-LOWは被っていた帽子を桜井和寿に被せるなどお茶目な一面を、また細美武士のハット姿は貴重な1コマ。桜井がMCで語った「バンドマンに愛されるバンド、それがACIDMAN」という、まさにそんな光景で至福の2日間は締めくくられた。

あとがき

 前回2017年のSAIも参加していたが、あの時の面子を見たらどうなっても楽しめると思い最速先行で申し込んだ。結果的に復活したエルレとドーパン、そしてミスチルが出演するという、ここ数年で最も豪華だと確信すると共に信じられないフェスになった。
 このフェスはACIDMANの主催ではあるが、出演者は彼らと同じ世代のバンド達で、まるで同窓会でもあった。10代の頃に追いかけていたバンド達、その中に我々と同じく彼らを追いかけていた後輩バンドが居る光景。いつまでも青春に戻れる2日間であり、同じ憧れを持ったバンド達が奮闘する追体験でもあった。また、年々私よりも年下のバンドが台頭し、フェスの参加層も若くなる中で、この世代でもドンピシャで楽しめる憩いの場のフェスでもあった。
 このフェスの参加きっかけがACIDMANではない人も多いと思う。しかしながら、今回の面子ならきっと同じシーンを追いかけていたバンドの中にACIDMANが存在したのではと思う。私は小学生の時にCDTVで『赤橙』を聴いたのがキッカケだったが、今日のバンド達が台頭した00年代中盤のシーンのバンドは、きっといつまで経っても好きであり続けるのだろうと思う。それと同時にONE FOR ALL,ALL FOR ONEという言葉があるが、このALLがまさにACIDMANだったフェスだと思う。ACIDMANを全力でお祝いするために頑張り、ACIDMANは全力でおもてなしする。そんな心意気を感じたフェスだったと思う。
 改めてACIDMAN結成25周年、メジャーデビュー20周年おめでとうございます。次は30周年のSAI 2027になるだろうか。彼らを盛大にお祝い出来る機会でもあり、どれだけ歳を重ねても10代のあの頃にタイムスリップ出来るのがSAIでもある。次回の開催が今から楽しみで仕方がない。

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