言葉の暴力、「マンスプレイニング」

マンスプレイニング (mansplaining) という、言葉の暴力がある。率直に言って、卑劣で迷惑な行いだ。

"mansplaining"は、Oxford辞書に定義が掲載されている↑

定義はいたってシンプル。

"the practice of a man explaining something to a woman in a way that shows he thinks he knows and understands more than she does (ある男性が、ある女性よりも「自分がよりよく知っていて、よく理解している」と示す様な態度で、女性に何かを説明する行い)"

この"mansplaining"という単語が、辞書に掲載されるきっかけととなった著書は、これだと言われている↓

レベッカ・ソルニット著「説教したがる男たち」

例えばこんな事、日常どこでも発生している↓

小島慶子さんの経験談。「あの映画をみて、こんな風に感じました」と言ったら、ある男性が、その男性は件の映画を見てもいないのに「それは違う」と即否定したとのこと。(←AERA誌へのリンクあり)

②女性が(知識がありながらも)発言を控えた瞬間に「そんなことも知らないのか」と言葉に出して侮辱し、偉そうな態度をとる男の存在。

note筆者(稼得者、ワンオペ家事育児雑用経験者)が「家族の食事作りに年間600時間かかってる」と言ったら、家族全員のメシ作りを毎日やったこともないのに「そんなわけない」と即否定した知人男性。

④海外勤務していた20代の頃、業界関係者の会合で米国人男性から「職業は?」と聞かれた。note筆者は「会計士だよ」と答えた。即座に帰ってきたのは「Are you sure? No! Really?」。「本当か、嘘だろ」とは何たる無礼。ヒマ人でない限り、脳を通さず発言する類の人間と係る必要はない。米国に女性会計士は5万超、珍しい事では無い。

⑤小学校時代の話。ツチノコ、というありもしない生き物が「いる」と主張した男子小学生。「ツチノコなんて知らん」と言ったnote筆者のことを、「こいつ、ツチノコも知らないんだって!遅れてる!」と、大声で連呼した者がいた。知ったかぶりをして「そこの公園で目撃されたらしいってさ!」とのウソを自慢げに語る。実証してから話せ。

⑤が特に馬鹿馬鹿しい思い出だが、「根拠がない主張である」という点において、上記①②③④のケースは、本質的には上記⑤の小学生男子の偽証と同質同程度のものだ。

ツチノコなんて「知らない」ことが正解なのだが、「正しさ」より、「偉そうに見えることを目指す」「感じたいことしか見えない」愚者がいる。

どう対応すべきか。
a. バカ男から目を逸らし受け流す
b. 無礼だ、とその場で喧嘩する
c. 第三者を含めて議論する

自分の時給を考えると、a.が正解。でも、
社会を変えるには、b.とc.を繰り返すべき。

「マンスプレイニング」は、これから社会人になろうとする女性達と、家族など将来ある女性の周囲の者たちが知っておいて損はない概念だ。

つまり、あなたが親なら、娘や妹達が、彼女達の人生において、何百回でもこの「マンスプレイニング」に遭遇するだろうことを、事前知識として伝えることは有意義だ。

ちょっとややこしいのは、時には女性も、根拠のない偉そうな主張を行うことがあることだ。例えば、「母が娘に向かって」「女性上司が部下に向かって」「女性の先輩が後輩に向かって」というケース。おそらく、その年長女性や女性上司も、長年「マンスプレイニング」の被害者であった経験から、受け売りのようにして「マンスプレイニング」を他者に行うに至るのだろう。負の言葉の連鎖は容易に再生産される。

ついでに言うと、人間(特に男)は、権力を偉そうな態度で振りかざすことを「嬉しい」と感じる生物だ。

結論として、

多くの社会において(特にこの国で)は、「若年者と女性は、格下であると見下され」そして「マンスプレイニング」という言葉の暴力が、いつでもどこでも横行しているのは事実。その事実を一言で説明する概念として、被害当事者である女性本人だけではなく、女性の家族や子供を持つ者も「マンスプレイニング」被害の可能性を認識しておくと、父兄夫などの男自身も言葉の暴力がもたらす、心理的な悪影響を減らす一助になる。

ひいては、今マンスプレイニングする男が、老いて被介護の社会的弱者になった時、言葉の暴力で復讐される危険を予防できる利点もある。男のために良い循環を生み出すためにも、即座な一言は飲み込み、むしろ日々他者を褒める訓練を!

言葉はあなたに戻ってくる。

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