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#10 大丸の2階にいったら、気持ちが上がった話。

100日後、30歳になる小川 #10

noteを更新し始めてから、ついに10日が経った。すごい!本当にすごい!大台に乗った感じ、ある。あと10倍頑張れば目標達成だ。


......10倍。


さて、今日は大丸の2階にいったら気持ちがあがった話を書こうと思う。


ひと月ほど前、京都に行った。
18歳から7年間過ごしてきた京都だ。
4年以上経って、京都もだいぶ様変わりした。

自転車を借りていろんなところに行った。昔はどの通りが縦で、どの通りが横で、この通りはこの辺りから一方通行。みたいなものは大体分かったはずなのに、もうほとんど何も覚えていなかった。


滞在2日目。
京都時代後半に一番よく遊んだ友人と会う。
久しぶりすぎて、普段どうやって遊んでいたか忘れる。結局やりたいことを出し合った結果、ずっと新調したかった僕の財布を探し歩くことになった。

僕の財布はもう12年くらい使っていて、だいぶ年季が入っていた。それは、大学への入学祝いに兄が買ってくれたもので、2度の修理を乗り越えていた。僕はその財布が大好きだったから、なかなか新しいものに変えるという気にはなれなかったのだ。

30歳にもなってもなお、18歳の時に買ってもらった財布を使い続けてるのも流石にな、そろそろ新しい財布を買うかと重い腰を上げようとしていた。意外と旅先での買い物って捗る部分があるし、そういう時に買ったものこそ気に入っていたり、長持ちしたりするしな。


ということで、新しい財布探しの旅が始まった。


とりあえず、なんだかんだそういうところに行けばあるよな。ってな感じでセレクトショップを行脚してみる。なんかそれとなく良いものもあるし、使いやすそうなものもある。これならいいかも?と思えるものもいくつかあった。だけどなんだかしっくりこない。なんというか結局、全部一緒に見えてくる。

とりあえずひと通りみて、一旦ひと休みしてみる。
うーん。悪くはないけど、別に今日じゃなくてもいいかな。

せっかくだし、大丸の2階に行ってみるのはどう?


ほう。
大丸の2階といえば、だいたい特選ブティックが並ぶゾーンだ。エスカレーターで通過はしたことはあるものの、降り立ったことなんてない。それに、僕は別にハイブランドの財布が欲しかったわけじゃない。

でも、まあみるのはタダだし。
行ってみるか。

ってくらいのノリで、初めて大丸の2階に潜入することになった。そして、まさか自分がそこで財布を買うことになろうとは、その時は全く想像をしていなかった。


大丸の2階についた。
なんか、明るい。
明るくない?
なんか白くない?
え?白くて明るくない?


多分知ってるし、そのアルファベットの並びは見たことがあるけど読み方がよくわからない店がいっぱいある。そしてやっぱり全体的に、明るい。

あとなんだろう、大体の店員さん。
すごい姿勢いい。
しゃんとしてる。

店に入ると、とりあえず人がすぐくる。
「しゃっせー⤴︎」って尻上がりに言ってくる店員さんはいない。「何をお探しですか?」ってすぐ聞いてくれる。財布と答えると、すぐ財布のコーナーに連れていかれる。どんな財布が良いかと尋ねられるので答えるとなんだか3つくらい出てくる。

値段の書いている札を見つける難易度が高い。絶対にすぐに見つからない。そこにあったの?と思いながらめくると何も書いてなかったりもする。値段にたどり着けない。あと、全ての店員さんが白い手袋してる。私も手袋しなきゃだめですか?って思う。

説明はしてくれるけど、すごく押してくるというわけでもなく、そっと寄り添ってくれる印象。なんだこれ。いつもの買い物と違うぞ

僕があんまり、何かを買うぞと決めてお店に行くことがないからかもしれないが、なんだかそれだけでもない気もする。すごくスムーズにことが進むし、脱線しない。本当に財布と向き合っている時間のような気がする。あとだいたい何の革でできているか説明してくれる。あと明るい。あとあれだ、ちゃんとそれぞれのブランドコンセプトにそった内装がちゃんと施されている。あと明るい。薄暗さで誤魔化している感じがない。あと店員さんが控えめ。あとなんだろう、床がふかふかしている。


店。いや、ここはショップと呼ばせていただこう。ショップとショップの間の通路が一番明るい。眩しい。


そう思いながら、メンズがありそうなだいたいのお店を周りきって最後にたどり着いたのが、GUCCIだった。グッチだ。これは読み方も、綴りも知ってる。

ここのグッチはなんだかすごく明るい、というわけではなかった。でもなんだかテーマパークみたいだった。そういう、なんだろう、そういうヴィンテージ感のある、キャラクターの家?みたいな?なんていうの。僕の語彙では完全に追いつかないけれど、まあそんな感じだ。

もうそろそろ慣れてきた頃だったから、財布を見たいですとお伝えして、ショーケースに連れて行ってもらう。最初はシンプルなものを探していたので、黒い革に、小さくゴールドのGGみたいなやつを手に取った。おー。これもシンプルだけど悪くない。このGGのサイズと場所が絶妙にいい。

と思いながら眺めていたら、もうひとつ横の財布に目が止まる。いわゆるモノグラムというやつらしい、なんだろうあの、昔ながらのグッチ!って感じのやつ。それにシンプルな焦茶の革にGGをぐいってして凹凸がついた楕円のなんかワッペンみたいなやつが縫い付けてある、縁取りも焦茶。これが、なんだかすごくかっこよく見えて、なんだろう、おじさんがセカンドバッグで持ってるみたいな柄のやつ。レトロな感じの。

いや。これかもしれない。
もしかしたら、僕、これかもしれない。
これがときめきというものなのか。
その時、僕は完全に旅行者の格好をしていた。テロテロのコートにバックパック。でもその右手にその財布を持っていても、なんだかしっくりきたのだ。
それがとても良かった。


財布の中を探す。
みつけた。値札だ。
値段を見る。
予算の2倍くらい...。

いや、でも買えなくはないな。
うん、買えなくはないな。

でも、冷静になった方がいい。
あとなんだろう、グッチを持っている自分。
想像がつかない。

生まれてこの方、このようなブランドものなんて持ったことがない。なんかいやらしくない?見せびらかしているみたいで。そう思っていた。


とりあえず、ちょっと考えさせてください。
そう言って一度お店をでる。

一旦上階のメンズコーナーに行ってみる。
いろんな財布を見てみたけど、なんだかどれも心がときめかないし、もうあのグッチの財布のことが頭を離れない。


友人と作戦会議をする。
今まで見た財布のことを思い出してみたが、やっぱりあの財布が忘れられなかった。


意を決して、もう一度お店に向かい先程の店員さんを探してついに購入をすることにした。そしたら先程の店員さんが見当たらず、名前も覚えていなかったから違う店員さんが対応してくれた。でもどうしても丁寧にゆっくりと説明してくれて、悩み続ける僕にずっと寄り添ってくれた先程の店員さんから買いたくて、探してもらった。

なんだかあまり座ったことのないタイプの椅子に座ってお会計をした。あと、なんだかあまりみたことのないサイズ感の小さい紙袋に入れてくれた。そして、そのあと友人と別れ、その小さな紙袋を持って新幹線に乗って東京に帰った。別になんてことのない、そんなに人生の一大事だというほどめちゃくちゃに大きな買い物でもない。でもその紙袋を持って移動しているとき、なんだかその右手が少しだけ暖かいというか、明るいというかそんな感じがした。


12年ぶりに財布を新調した。


それは今までとなんだか違う買い物体験をして手に入れた財布で、ブランドのやつだ。そして、それを手に取った時に確実に心が躍った。最初はコンパクトで、でもたくさん入って、小銭が取り出しやすいやつが欲しい。なんて思っていたけど、結果としては一番オーソドックスな、カードもあんまり入らない、小銭もそこそこにしか入らない、いわゆる折り財布を手にしていた。この財布を使うために持ち歩くカードも少なくした。小銭も必要最低限しか入れなくなった。変化だ。


その財布を持ち歩き初めてひと月くらいが経つ。
そして気づいた。
ブランドものって、その人がそれを持っている姿を周りに見せたいから持つものだと、なんだか思ってしまっていた。でも違った。それを持った時に、あのときめきを思い出して、心躍るからだ。そして、その心躍るもの身につけていることが嬉しい。それを自分が持ちたいから持つ。多分、それだけだ。


それに気づけたのはあの時、大丸の2階に連れて行ってくれた友人のおかげだ。そして、あの大丸の2階を闊歩できたのは、友人が一緒に闊歩してくれたからだ。とてつもなく感謝だ。



僕が30歳になるまで、あと91日。

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