堪えた涙の先で、

初めまして、鎖骨と申します。まずは、この記事を開いてくださった画面の前の貴方に感謝を申し上げます。

はじめに

またこのページを開くときが来た。今回で3回目となる曲語りnoteは、フォロワーだけでなく、フォロワー外の方からも「面白い!」といった好評のお声を頂き、私の鼻も少しずつ長くなって立派になり始めている。

そしてまた、調子に乗ってこのページを開いた所存だ。

さて、初回では私が愛してやまないPretty Uについて語り、2回目はSEVENTEEN(以下セブチ)の最高峰の甘さを誇るOST、SWEETEST THINGについてタラタラと語ってきた。

どちらの曲も好きな人に対する想いがたんと込められたラブレターのような曲だった。心がとろけそうな甘い歌詞に、私も書いていて何だか推し達から告白されている、そういった感覚に陥った。夢ならば覚めないで欲しいと思うほどだ。

だが今回、本記事で書こうと思っている曲はスウィーティーでもなく、キューティーでも、こっちを向いてよハニーでもない。

突然だが画面の前の貴方は、セブチを代表する失恋曲といったら何を思い浮かべるだろうか。私は今回、その曲についてガッツリ触れていこうと思う。

ちなみに、前回と同様これはただのヲタクがある一曲についてダラダラと語るだけの記事、気持ち悪くない訳がない。私はこの記事一つにありのままの姿を詰め込んでお届けする予定だから、戻るなら今だという注意喚起と読みにくい文章がこれからダラダラと綴られることを先に謝罪し、始めていきたいと思う。


僕は今でも君を探しているよ


前回に引き続き、このサブタイトルを見て察しがついた名探偵コナ〇がきっと今回もおられることだろう。

「今でも君を探しています」セブチの代表曲の一つ、Don't Wanna Cry である。

Don't Wanna Cry 、韓国タイトルでは 울고 싶지 않아 と表記される。日本語では ウルゴ シプチ アナ と読むことから日本ファンからは「ウルシパ」と略され呼ばれている。

このウルシパは、2017年5月22日に販売された4枚目のミニアルバム『Al1』のリード曲として収録、この世に舞い降りた。

作曲はメンバーであるウジ、そして事務所の先輩でありセブチのお兄さんでもある我らがボムジュさんも参加している。

作詞にも同じくウジ・ボムジュさんが参加しているが、この曲の作詞に関わっているのはこの2人だけではない。メンバー内ではラップチームのエスクプス、ダンスチームのホシ、ボーカルチームのジョンハンも関わっているのだ。

お分かり頂けるだろうか。もうこの作業メンバーから、この曲が最高な曲に仕上がることは決まっていたことなのである。あまりにも策士的で、ズルい。

ウルシパのMVはアメリカのロサンゼルスで撮影、YouTubeにて公開された。2018年10月23日には1億回再生を突破し、2021年9月現在でMVは約2億900万回以上の再生を記録している。そしてセブチのMVの中で億再生を記録しているのはこの曲のみだ。

セブチの曲の中でも歴史的瞬間を多く刻んできたこの曲は、セブチファンじゃない韓国のファンも一度は聴いたことがある曲じゃないかと思う。ファンだけでなく沢山の人から愛されているこの曲は、大のつく失恋ソングとして知られている。

セブチがデビューしてからウルシパが発売されるまでの約2年間、失恋曲を主として活動されたことはなかった。ということは、この曲はセブチ初の失恋曲と言っても過言ではないだろう。

今までは君が好きすぎて堪らない、君しか見えない。胸がデュクンデュクンしてブンブンする、そんな恋愛曲ばかりだった13人が初めての失恋をこの曲を通して肌で感じているのだ。すでに悲しい。むしろ13人のことを思って私が泣きそうなまである。人生、甘いだけじゃないよね......。

デビューからずっと甘酸っぱい学生の恋を代表してきた13人が、初めて人生の苦い部分に触れ、大人への階段をまた一歩登るそんなこの曲は、今までのイメージを全て覆す新しい13人を魅せた一曲でもある。

この曲は、どこか寂しく、悲しく、とても心細い、そういった感情が感じられる曲調から始まり、この導入部分で聴いている人をウルシパというストーリーへと誘い込む。

そしてウォヌ・ミンギュと低音組からこの曲はスタート、バーノン・ホシへとバトンタッチされていく。

사랑해서 사랑한다는 말이
부족해서 그 어떤 말을 꺼내봐도
愛してるから 愛してるという言葉では
足りなくて、どんな言葉を選んでみても
너 하나만 아끼던 날 두고서 어디 간 거니
내가 싫어 어어 져서 멀리 간 거니
君だけを大切に想ってきたこの僕を差し置いて どこへ行ったんだよ
僕の事が嫌いになって 離れていってしまったの?

ダメだ、あまりにも悲しすぎる。もうこの時点で凄まじいくらいの悲しみを感じてしまう。

愛しているという言葉では足りないくらい、きっと恋人であろうだけを愛していた主人公。それなのにも関わらず、恋人は忽然と姿を消してしまったんだな、という情景が伺える。

장난치지 마 거기 있는 거 알아
나타날 거 같아 마냥 기다리다
널 찾아가야 돼 찾아가야 돼
지금 울면 못 볼지 모르니까
冗談はやめて そこにいるのは分かってるんだ
君がまた現れそうで ただ待ってるよ
君を探さなきゃ 探しに行かなきゃ
今泣いてしまったら、もう会えないかもしれないから

嘘やろ、苦しすぎるやろ。まだサビ前だというのにも関わらず、切ないにも程がある。

まだ君に会えることを信じて、ただただ涙を堪え待ち続ける主人公。君を探しに行かなきゃとは分かっていても、また君が現れそうだから、僕の心は崩れてしまいそうだから、待つことしかできないのであろう。

あまりにも健気で心苦しい主人公の姿に、13人の声が重なって、私の心のダムは決壊してしまっているというのに。

울고 싶지 않아 울고 싶지 않아
눈물은 많지만 울고 싶지 않아
泣きたくない 泣きたくないよ
泣きたくなるけど 泣きたくないんだ

「心のレインボーブリッチ、封鎖できませんッ...!」

いや言うてる場合か。

ここのサビ、何がいいかってジュンのパートだというところだ。もう一度言う。ここはジュンから始まるのである。

ジュンの声は基盤が少し高めだ。チャイナラインが出しているMY Iという曲や、ジュンの中国語の曲なんかを聴いてもらえると分かるが、ジュンは基本的に低音を担当することは少なく、海外組、ダンスチームなのもあってか難しいパートを担当することもない。

最近では歌割りが増えてきたが、この当時ジュンのパートは少なかった。ぶっちゃけ、え、ここだけ?みたいなことが多かったのだが、そんな中この曲ではサビを担当しているのである。とても、切ない声で。

これもまたこの曲の魅力だなと思う。ジュンの何も着飾っていない凛とした歌声が、今泣いてしまったら君に会えない気がするから泣きたくないという、とってもストレートだが触れれば脆く崩れてしまいそうな歌詞と見事にマッチしている。

そしてその凛とした歌声から、また真っ直ぐで表現力が豊かなディノへと繋がれていくのだ。毎回曲を解説していて思うが、セブチは歌割りやメンバーの配置、自らのグループの魅せ方が上手すぎる。

낯설지 않은 길 이 길이 낯설다
아는 길 맞는지 내게 또 묻지요
혹시나 그 사람 날 찾고 있지 않을까
나는 지금 널 찾고 있어요
見慣れたこの道が いつもと違って見える
この道で合っているのか また僕に尋ねてくだろう
もしかして あの人も僕を探してるんじゃないかって
僕は今、君を探しています
장난치지 마 거기 있는 거 알아
나타날 거 같아 마냥 기다리다
널 찾아가야 돼 가야 하는데
눈물 고여 점점 흐려져
ふざけないでよ、そこに居るのは分かってるって
君がふと現れそうで ただ待ち続けてるよ
君を探さなきゃ 探しに行かなきゃ
溜まっていた涙が少しずつこぼれ落ちていく

天才なんですよね、本当に。

きっと何回も歩いて通った道、「君」が隣に居ないだけで知らない道のように感じる。たった一文なのに、全ての情景が浮かび上がってとても想像がしやすい。

そしてココ、『溜まっていた涙が少しずつこぼれ落ちていく』という部分。

1番の歌詞では、「今泣いてしまったら、会えなくなる気がするから」と、泣くことを我慢していた主人公。2番の歌詞では耐え切れずに涙しているのだ。

君はそこに隠れていると、またふと現れると信じたいけど、主人公も心のどこかではもう会えないのかもしれないという想いが伺える。1番と2番のここの部分だけでストーリー性と主人公の感情を汲み取ることができる。プロの表現力はスゴい。

울고 싶지 않아 울고 싶지 않아
눈물은 많지만 울고 싶지 않아
泣きたくない 泣きたくないんだ
泣きたくなるけど 泣きたくないよ
난 괜찮아 (안 괜찮아)
너 보고 싶지 않아 (너무 보고 싶어)
맘에 없는 말들로 거짓말이라도 해야 돼 해야 돼
僕は平気(平気じゃないよ)
君に会いたくなんてない(君に会いたいよ)
思ってもない言葉達を並べて嘘でも ついておかないと

ヲタク最大の古墳がやってきた。

誰が想像できただろう、2番サビ終わりの盛り上げポイントをミーニーで行うということを。

ウォヌから始まり、ミンギュが追いかけ、ウォヌが嘘を並べ、ミンギュが本音をこぼすこのパート。ヲタク、大大大万歳。ウルシパの雰囲気をぶっ壊してマンセを狂い踊り出すレベルには、シャブだ。

생각처럼 맘이 말을 듣지 않으니까
돌아와 돌아와 돌아와
절반이 없는데 어떻게 하나로 살아
울고 싶지 않아
心はどうしても 言うことを聞いてくれないから
戻ってきて、戻ってきてよ
半分なくして どうやって生きろって言うんだ
泣きたくない

奈良県の古墳、入居希望です。

もはや13人をここまで悩ませ苦しませるヤツはどこぞのどいつやねんと1周回って喚き散らかしたくなる。

平気なふりをしても心は素直なのだ。身体の奥底から「戻ってきて欲しい」という感情が、スングァンの圧倒的な歌唱力で表現されている。

段々と力強く切なく表現される「戻ってきて」の言葉から、ウォヌの「半分なくしてどうやって生きろって言うんだ」という感情的で、この曲の中で1番想いが感じられる言葉。

今まで「君」と表現されていたのにも関わらず、ここでは君が「半分」と表現されている。

関係性には沢山の種類がある。恋人だったり、友達だったり、親友、夫婦、親子など。仕事では相方だったり、漫画では相棒だったり。パートナーといった表現もある。

しかし、ここでは『半分』なのだ。まさに僕の、半分。

これは個人的見解だが、この半分という言葉は主人公なりの愛してる以上の言葉でもあったような気がする。

この言葉は「君を失うということは、僕を半分失うということだ。」という言葉に変換することができる。そしてまた、「君という半分を失ってしまっては僕は生きることができない。」それほど主人公は君を愛していて、君を必要としていた。

君という半分、僕という半分。主人公の中では君と僕で一つだった。そう、君が居なくなる前までは一つだったのだ。なんだ、これが激エモ感情ってやつか。

そしてこのフレーズを境に、曲はラストスパートへと足を進めていく。

울고 싶지 않아 울고 싶지 않아
눈물은 많지만 울고 싶지 않아
泣きたくないよ 泣きたくないんだ
泣きたくなるけど 泣きたくないよ
울고 싶지 않아 우리 다시 볼 때
울고 싶지 않아
泣きたくない 僕たちがまた出会えたとき
泣きたくない

最後の大サビでは今までのサビよりも盛り上がりを見せ、主人公の強い想いが感じられる曲調が続く。そして、エスクプスのパートが終われば、リズムは落ち着き、バーノンの独特な低音が耳を掠め、最後の「泣きたくない」を置いてこの曲は幕を下ろす。

なんというか、この曲は始まりからこの曲を聴き終わった余韻までずっと悲しいという言葉に尽きる。

初めての恋を経験した主人公は、好きな人を想うだけで胸が弾み、そして煌びやからな日常を過ごしていた。好きな人と想いが繋がり、そして初めての愛を知った主人公。

どこも穢れていない純粋無垢な主人公が、自分の半分同然だった「君」を失い、初めての失恋をした。

想像するだけで胸が苦しい。もし自分が主人公の立場だったら、落ち着いた状態では居られないだろう。

そんな主人公も、もちろん落ち着いた状態ではなかった。きっと恋人を失った主人公は、衝撃と悲愴に全身を支配されていた。そういった部分を、頭に残る機械的な音のシンセサイザーがうまく表現している。

そして泣きたくなるけど泣きたくないといった強い気持ち、しかし今すぐにでも零れ落ちてしまう涙に力を抜けば崩れ落ちてしまう心の部分を、激しいビートで刻むことで主人公の感情の波を感じる。

13人の切ない声・機械的なシンセサイザー・激しく打ち付けるビートが融合することにより、この曲はより一層主人公の不安や悲痛、絶望感・愛する人を初めて失う心境を創り上げ、聴いてる人を悲しい感性で溢れさせこの曲に感情移入をさせることができる。

私は作曲家でも作詞家でも音楽評論家でも何でもないが、この曲が人気な理由はよく分かる。歌詞の内容からもう緻密で、上手に作り込まれているからなのだ。


でも僕らがまた出会えた時


さて、ここまではウルシパの歌詞について詳しく解説してきた。これまでの私のnoteを読んだことがある方は、私が次に何を解説しようとしているかなんとなく検討がついていることだろう。

そう、今までの私ならここでMVについて解説を始める。しかし今回はMVには触れず、違う話題を提示していきたいと思う。

画面の前の貴方は、この曲のダンスを見たことがあるだろうか。

いやいやいやいや、舐めんなよって?分かる、私でもこの言い方は過去最大に腹立つ。ただそのグーの形にした右手だけは、今すぐ下ろして欲しい。

これはウルシパのダンス練習動画である。まだ見たことがない方は必ず一度見てから、この記事を読み進めることをオススメする。

ウルシパのダンスは全体的にダイナミックだが、どこか現代舞踊を彷彿とさせる繊細さも兼ね備えていると思う。

また、泣きたくないという題名にちなんで、涙を拭う仕草や、涙が流れ落ちるダンスなど歌詞にリンクしていて見ててとても面白い。

しかし、私が触れたいのはウルシパのダンスではない。曲終わり、13人が決める最後のポーズだ。

画像1

まさにこぼれ落ちる涙を誰かに見られたくない、そんなポーズ。

なんてことない、歌詞の内容に沿ったこの曲のキーポーズだろう。しかし、このポーズをするのは実はウルシパだけではない。ウルシパの他にもこのポーズを行う曲が存在するのである。

それは一体何か。



Without You である。


泣きたくないから


「Without You」 韓国語では 「모자를 눌러 쓰고」。日本語に訳すと『帽子を深く被って』だ。

この曲は2017年11月6日に発売されたセブチの2ndアルバム「TEEN,AGE」に収録されているカップリング曲である。

そして帽子を深く被ってはウルシパが発表された後に発売、この世に舞い降りた。

この曲のダンス動画を見たことがない人は、このダンスを必ず見てから進んでほしい。

先ほど話していたウルシパのダンスはこの曲の冒頭、スタートのポーズから始まる。

画像2

驚くことに一緒なのはポーズだけではない。メンバーの配置、形すらも全てが一緒なのだ。

ウルシパの後に公表された「帽子を深く被って」。その曲はウルシパの最後のポーズからダンスが始まる。これはもしかしてウルシパと深い関係があるのではないだろうか。私はその疑問と真相を探るべく、生い茂ったアマゾンの森奥へと歩みを進めた__________...


帽子を深く被って


突然だが、画面の前の貴方は「帽子を深く被って」というタイトルの意図が分かるだろうか。というか初見では、100%何の話なのか分からないだろう。

この曲の韓国タイトルを日本語に訳すと「帽子を深く被って」。では英語タイトルはどうだろう、「Without You」これを日本語に訳すと「君なしでは」という意味になる。

おっと?もう既にヤバい匂いがプンプンしている。なんだろう、タイトルから漂うこの沼感は。

ウルシパでは「半分」という恋人を失った主人公の悲しい心が描かれた曲に仕上がっていた。ではこの「帽子を深く被って」「君なしでは」という2つのタイトルを持つこの曲は一体どういうストーリーに仕上がっているのだろうか。詳しく歌詞を見ていこう。

この曲はウルシパとは違ってイントロが徐々に広がっていき、優しすぎるピアノの旋律から始まり、曲の盛り上がりを見せてからジョンハンの今にも消えそうな歌声でスタートする。

너 없이 힘들었어 두려웠어 혼자라는 생각에 무서워서
멍청이처럼 시간만 보내다 시간이 가는 줄도 몰랐어
君が居ないとツラくて、不安で ひとりだと思うと怖かった
バカみたいに時間だけが過ぎて 時間が経ったことすらも分からなかった

おいおいおいおい、ちょっと待てや。

めちゃくちゃ失恋しとるやんけ。

思わずマジかよ〜〜〜〜〜〜〜した。というか頭を抱えた。まさかこの曲も失恋曲。これはウルシパとの関係性がだいぶ怪しくなってきた。

しかしまだこのこのフレーズだけでこの曲がどういう曲なのか分からない。もしかしたらまだ君を待っているかもしれないし、もしかしたらウルシパシーズン2じゃないかもしれない。ひとまずここはジョンハンとホシの声に酔いしれながら、次に進もうと思う。

몰랐어 아무것도
힘들어도 You don’t have to be alone
돌아와줘 들을 준비 다 되었어
知らなかったよ 何ひとつ
ツラくても You don’t have to be alone
戻ってきてよ 聞く準備は出来たよ
어디서라도 내 말 들린다면
다시 내 눈에 널 비치게 해줘 제발
何処にいたとしても 僕の言葉が聞こえたなら
お願いだから、もう一度僕の前に現れてよ

めっっっっちゃ待ってた。

おいおいおいおい、そんなことあるか。ウルシパに引き続き、まだ僕は君を待ってるよって言いたいのか。ウルシパのアフターストーリーだなんてそんなヲタクが喜ぶことすんじゃないよ。

この曲の中の主人公はウルシパと同様、あの時から変わらずまだ愛する恋人を、待ち続けている。この曲の主人公がウルシパと同じ人物ならば健気にも程がある。そして相変わらず、主人公を想うと胸が痛い。

그 뻔한 돌아오겠다는
한마디 말도 남기지 않고서
당연하다는 듯 인사 한번도 없이
どうってことない 戻ってくるよっていう
その一言も残さずに
当たり前のごとく挨拶だってせずに

ウルシパとこの曲の世界線は繋がっていることを前提に話を進めていく。

ウルシパでは、恋人が去った詳しいシーンは描かれていなかった。しかしこの曲では、戻ってくるからという一言もなく、さよならという言葉すらなく恋人は姿を消したという情景が描かれている。

떠나간 널 따라 숨이 차게 달려봐도
너는 여기 없는데
去っていった君を息が冷たくなるまで追いかけてみても
君はもういないのに

そして次のパートではこう書かれている。

主人公は居なくなった恋人を探し続けたのだ、息が冷たくなるまで。

この息が冷たくなるまで、という表現がとても好きだ。息が冷たくなるまでという歌詞から2つのパターンを考える。1つはこのふたりは冬に別れた、ということ。そしてもう1つは、主人公は冬になるまで恋人を探し続けた、というパターンだ。私はこの歌詞を読んできて、なんとなく後者のような気がしている。

きっと君はどこかにいる、きっとまた僕の前に現れてくれる。そんな思いを胸にただひたすら主人公は恋人を求めた。恋人は居ないまま季節は過ぎていく、いつしか息が冷たくなる季節になるまで恋人を探し待ち続けたが、主人公は途中で気付いたのだ。もう君は、戻ってこないということを。

そしてまた、ここに君は居ないという事実に、主人公は胸を痛めるのだ。

모자를 눌러쓰고 이리저리 부딪혀 아파도
관심도 없는 넌 예쁘고 참 나쁘다 (그래)
쓰러져가는 망가져가는 난 이제 중요치 않아
帽子を深く被って あちこちぶつけて怪我をしても
関心すら示さない君は 綺麗で残酷だね(本当に)
転んで壊れた 僕はもう必要じゃない

サビはこの曲のタイトル名と同じ「帽子を深く被って」から始まる。

僕があちこちぶつけて怪我をしても、関心すら示さない君。ここもとっても良い表現の仕方だと思う。

突然だが画面の前の貴方に聞きたい。帽子を深く被るときは、果たしてどんなときだろうか。お洒落として被った帽子だとしても、深く被ることなんて少ないだろう。帽子は変装するときのマストアイテム。芸能人も顔を見られたくないばかりに、帽子を深く被ることがよくある。

ということは、ここに出てくる「帽子を深く被って」という表現は、誰かからの視線から隠れたい、隠したいという意味があるのではないだろうか。

この曲はウルシパの世界線と繋がっていることを前提に話を進めている。ということは現時点で主人公は涙を流している状況であり、その涙を誰かに見られたくないから、帽子を深く被っているのではないだろうか。

果たしてその相手は、君なのかもしくは違う第三者なのか。そういったところも想像ができて面白い。

主人公が痛い思いをして傷ついていたとしても、恋人は見向きもしないし関心すら示さない。そんな恋人のことを「綺麗で残酷だ。」と述べられている。綺麗で残酷、主人公の気持ちがよく表されている一節だ。

僕を置いて去った君は、酷いやつだ。こんなにも君だけを想っていたのに、君は僕の前から消え去った。そう思っていても、主人公は恋人のことがいまだに好きなのだ、それでも君は綺麗だねと。

네가 없이 난 지금부터 난
변해볼까 해
변해볼까 해
君なしで僕は これから僕は
変わろうと思う
変わってみようと思う

君をいまだに思い出にできない主人公が、ここで決意を決める。

たくさん転んで、怪我をした僕にはもうならない。これから僕は君なしで生きれるように、変わってみるよ。

涙ドバドバ案件。もうこの涙で大きな水溜りを作って泳いじゃう。

きっと心細くて、まだ不安だけど頑張って心に決めたんだろうな。


이러다 나 돌아 버릴지도 몰라
차라리 그게 더 맘 편할 것 같아
매번 다잡아도 고민의 끝은 똑같아
됐어 이거 나 안해 Yeah
このまま僕は狂ってしまうかもしれない
いっそのことその方が楽な気もするけど
いくら考えても悩みの結末は同じだから
いいよ、もうこれ以上は Yeah

我らがミンギュのパート。ここのパートはすごくミンギュに合っていると思う。ミンギュの声は低過ぎないのがミソ。しかし高くもない、心地よい音程をブレずに歌えるのがミンギュだ。

ここは音程の波の幅が少ない。一定の音程が心地よく続いていく。その波の少なさを、ミンギュのブレない歌がより曲の雰囲気を引き立て、この歌詞の味を出している。

このまま僕は狂ってしまうかもしれない、いっそのことその方が楽な気もするけど。という主人公の冷静さに少しの願望が込められているこの歌詞がとても良い。我慢して耐えるよりも、いっそのこと狂ってしまいたい。でもそんなことしたって何も変わりやしないから。

いくら悩んだって何も解決しないから、もうこれ以上悩むのはやめよう。そんな主人公の気持ちの変化がよく現れた部分だ。

거기 없다는 걸 이제 난 알아
그걸 안다는 게 너무나 아파
아무렇지 않다고 말하는 것 조차
そこに居ないことは分かってる
分かっているからとても苦しいんだ
平気なフリをすること自体
하기 싫어
네 생각 안하는 것만으로도
이렇게 아픈 내가
したくない
君のことを忘れることさえ
できないこの僕が

そしてここだ。「平気なフリをすること自体したくない」というフレーズ。画面の前の貴方は覚えているだろうか。ウルシパのミーニー掛け合いパートを。

ウルシパでは、平気なフリをして嘘の言葉でも並べておかないと心は言う事を聞いてくれないからとしていた。

またここの部分でストーリーが出来ていた。ウルシパからこの曲の間で、主人公は気持ちに変化が生じているのである。

どれだけ探し続けても、好きな人はもういないという事実。それを分かっていても、主人公は好きな人を忘れることは出来ない。その状態で「僕は大丈夫」なんて言えないし、言いたくないんだ。

なんて苦しい恋なんだろうか。歌詞を指でなぞればなぞるほど、切ない想いで胸がいっぱいになってしまう。

そして、「できないこの僕が」のパートを担当しているスングァンの掠れた高音がまた聴き手の感情を揺さぶり、この曲は終盤へと駆けていく。

모자를 눌러쓰고 이리저리 부딪혀 아파도
관심도 없는 넌 예쁘고 참 나쁘다 (그래)
쓰러져가는 망가져가는 난 이제 중요치 않아
帽子を深く被って あちこちぶつけて怪我をしても
関心すら示さない君は 綺麗で残酷だよ(本当に)
倒れて駄目になっていく 僕はもう必要じゃない
네가 오기 전 그날 까지만
변해볼까 해
변해볼까 해
君がまたやってくる その日までは
変わってみようと思う
変わってみるよ

終わってしまった.........。本当にずっと、この曲の主人公は悲しい波に溺れている。

この曲の歌詞は、主人公が全身全霊で好きな人を愛していたことが本当によく分かる。何故ならば、この曲はずっと好きな人を悪く言っていないからだ。

自分の前から居なくなっても、自分が苦しい思いをしても知らんぷりな相手のことをこの曲では「綺麗で残酷だ」としか書かれていない。

そしてもう二度と戻ってこないって思っていても、君がまたやってくる日までには「変わってみるよ」とされている。

また君がここにやってくることを心のどこかで微かに期待しつつ、君がいないとダメな自分を自ら変わろうとしている。本当に素直で、とても苦しい。

本記事では、サビの「変わってみようと思う」のパートを文字数の関係で2回で表したが、本当はこの部分が5回ずつ繰り返される。何回も繰り返されることで変わりたい、そんな強い気持ちがよく伝わってくる。

ラストの大サビはエスクプスが担当しているが、彼が担当することによりこの最後のパートに一層気持ちが込められている感じがして、個人的にはとても好きだ。

エスクプスはラップチームに所属しているが、彼は表現力がずば抜けていると思う。腹の底から這い上がってくるような唸り声やダミ声を出したと思えば、今にも消え去りそうな儚い高音、暖かく包み込んでくれる優しい低音に、沢山の人を引っ張っていく力強い迫力も出すことができる。彼はラップだけでなく、歌もモノとする努力型の実力者だ。

そんな彼がこのパートを担当し、「変わってみるよ」という想いでこの曲の幕を下ろすことにとても納得がいったし適任だとも思った。きっと彼以外が担当していても、エモ〜って言っていたことだろうがこの部分の雰囲気は彼にしか出せない。何度も繰り返すが、このグループは本当に歌詞の振り分けが上手すぎる。なんかもはやズルいぞ、お前ら。


僕は変わってみるよ


さて、もうすでに現時点で1万字を超えるほど長々と2つの曲の歌詞に着目して語ってきたが、画面の前の貴方は目がチカチカして痛いことだろう。私もめちゃくちゃ目が痛い。申し訳ないがあともう少しだけ付き合って欲しい。あと、休憩もきちんとして欲しい。


ウルシパでは、ずっと一途に想い続けてきた「君」という自分の半分を失ってしまい、暗闇のなかただただ悲壮感に打ちひしがれていた主人公。お願いだから戻ってきて欲しいという切実な想いに泣きたくないという我慢が、聴いているこちらにも痛いほど伝わってきた。

そして、そんなウルシパのダンスの代表的な振り付けである「泣きたくない」という感情を表した最後のポーズが、帽子を深く被ってという曲の始まりのポーズであり、またメンバーの配置も全く同じであることが分かった。

そこから帽子を深く被っての歌詞に触れてみると、君なしで僕は生きられないという気持ちの反面、君がいない世界で変わってみるよという、主人公のどこか孤独さを感じる大きな決意を、「君」または「自分自身」に言い聞かせているようなそんな歌詞であった。

2つの曲たちの中で生きている「僕」と「君」が果たして同一人物なのかは分からない。ただこの2つの曲がもし同じ世界線ならば、僕にとっても君にとってもこの恋が大きな一歩だっただろうな、と感じる。

今まで13人が出してきた曲は全て甘酸っぱく、どストレートでフレッシュな好きがたくさん詰まったものだった。だが今回の曲たちは、好きの気持ちだけじゃない。君を失った時の衝撃悲しみ痛み苦しみ初めてつたう涙。そして失った時に気付く、君という存在の大きさ君への愛

この2つの曲を通して、主人公は少なからず成長していた。心のどこかでまだ君を期待しているが、それでも僕は変わってみるよという気持ちは強くて決して簡単なことではない。そんな決心を主人公は決めたのだ。

この曲達はまるで中編小説のような読み応えのある歌詞だった。私自身、まさか13人の曲からこんな考察を綴るとは思ってもいなかったが、2つの曲からここまで語れるということは、やはり13人の力とプロデュース力がずば抜けているということだと強く感じた。

描かれてはいないが「君」目線のストーリーを想像すればまた面白みが増すことだろう。ぜひ時間があれば、楽しんでみてほしい。


そういえばこれは余談だが、帽子を深く被ってのダンスの始まりのポーズは顔や涙を隠すようなポーズだったことを覚えているだろうか。

あの始まりのダンスからずっと最後まで見進めると、この曲の終わりのポーズはこうなっている。後ろで腕を組み、足を開いて床を見つめているポーズだ。

画像3


ウルシパからの振り付けを考えてみれば、どこか決心をしたようにも見えるそんな振り付け。

13人のダンスは必ずどこかの歌詞とリンクしており、まるでミュージカルを見ているような振り付けが多いため、人気も高い。

だからこの曲も、変わってみるよという決心を最後に決めた主人公とどこかリンクしているようにも感じる。13人の曲には歌詞だけでなく、振り付けにも細かなカラクリが仕掛けられているから、見ていて飽きないしワクワクするのだ。本当に手が燃えそうになるまで拍手したいくらい、芸が細かいぜ。セブンティーン。


最後に


本当にチンタラとここまで書いてきた。自分でも驚きの文字数である。

1ヶ月前にTwitterの方で曲語りnoteリクエストを募集し、有難いことに思っている以上のリクエストを頂いた。

今回はその頂いたリクエストの中に「Without You」があり、それならばとウルシパも合わせてnoteを綴った所存なのだが、時間を見つけながらちょこちょこと書いていたら公開するのが遅くなってしまった。ムキムキのウォヌに免じて許して欲しい。

文字ばかりが続き、読みにくい文章ばかり並んで非常に読みずらかったと思う。ここに書かれていることは、あくまでも私の個人的見解である。こんな考え方をするやつもいるんだな、くらいで思って頂けるとありがたい。

今回もPCで作成したし、なんなら絶賛実習中だが思っているよりも楽しくかけたのでまた気が向いたらこのページを開くことにする。次は8000字程度を目指して。

ここまで読んでくださった画面の前の貴方に、再度感謝を申し上げます。



画像4


2021.09.14

鎖骨


⚠︎ 本文に出てくる歌詞の翻訳は、意訳を含みます。翻訳した文の再利用・再掲載等はお控えください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?