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環境省の暑さ指数の予測が33℃以上となる日数の評価

はじめに

2021年4月28日から、気象庁と環境省は、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される場合に、暑さへの「気づき」を呼びかけ国民の熱中症予防行動を効果的に促すため「熱中症警戒アラート」の運用を開始しました。熱中症警戒アラートは、全国を58に分けた府県予報区等を単位とし、発表対象地域内の暑さ指数(WBGT)算出地点のいずれかで日最高暑さ指数33℃以上と予測した場合に発表されます。

この暑さ指数の予測にバイアスが存在すると、熱中症警戒アラートが本来想定される基準よりも過多あるいは過少に発表される可能性があります。そこで、環境省が発表する暑さ指数が33℃以上となる日数について、予測と実況で比較を行いました。

手法

暑さ指数の実況値および予測値のデータは、環境省の熱中症予防情報サイトにある暑さ指数(WBGT)予測値等 電子情報提供サービスから取得しました。

対象とした期間は、暑さ指数が高い期間である2021年7月と8月の62日間としました。当日4時25分発表の15時対象の暑さ指数予測値を、実況値と比較しました。発表時刻は、熱中症警戒アラートが「前日の17 時及び当日の朝5時に最新の予測値を元に発表」されることを踏まえ、リードタイムが短いほうを選びました。評価対象時刻を15時としたのは、3時間毎の予測が存在し、かつ一日のうちで最も気温が高くなることが多いためです。

2021年7月と8月の62日間のうち、暑さ指数の予測値が33℃以上となる日数と、実況値が33℃以上となる日数について比較しました。

結果

暑さ指数の15時の実況値が33℃以上となる日数を地図上に示したのが次の図です。ここで日数が0日である地点については表示していません。

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同様にして、4時25分発表の暑さ指数の15時の予測値が33℃以上となる日数を地図上に示したのが次の図です。日数が多い地点数が、実況と比べて多い傾向にあります。

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違いを分かりやすくするために、予測の日数(2番目の図)から実況の日数(1番目の図)を引いたものが次の図になります。日数に差がない地点は表示されていません。沿岸部を中心に33℃以上の日数を多く予測する一方で、北海道日本海側北部の内陸や東北地方の内陸などを中心に、33℃以上の日数を少なく予測する傾向にあります。

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まとめ

環境省の暑さ指数は、沿岸部を中心に33℃以上になる日数を多く予測することが分かりました。熱中症警戒アラートは発表対象地域内の1地点でも予測が33℃以上を超えると発表されるため、本来33℃という基準から想定されるよりも多く熱中症警戒アラートが発表されている可能性があります。

ここでは15時の予測について地点毎に評価しているため、熱中症警戒アラートの発表回数と直接結びつくものではありません。より厳密な解析として、熱中症警戒アラートの発表条件に準じて、前日16時25分発表と当日4時25分発表の対象地域内の日最高暑さ指数が33℃を超えるかどうかについて評価することが考えられます。

より厳密な評価を環境省や気象庁が合同で行ない、技術文書として報告することが望ましいと思います。また予測のバイアス低減のため、気象庁が環境省に対して積極的に技術協力を行い、暑さ指数ガイダンスを開発することも検討すべきだと思います。

参考文献

環境省:暑さ指数(WBGT)予測値等 電子情報提供サービス https://www.wbgt.env.go.jp/data_service.php

気象庁:「熱中症警戒アラート」の全国での運用開始について https://www.jma.go.jp/jma/press/2104/23a/210423_keikai.html

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