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『本格ミステリーをつくろう!』(出没!大喜利の屋台2023/7/8より)

こんにちは。わからないです。

私は福岡で『出没!大喜利の屋台』という大喜利イベントを開催しておりまして、月1ペース、10名弱くらいの規模で、こじんまりとわいわいやっております。
 
その『出没!大喜利の屋台』ですが、ベーシックなローテーション大喜利とは別に、毎回色々な企画大喜利も行っております。
 
今回はつい先日開催した7月8月回より、企画大喜利コーナー『本格ミステリーをつくろう!』で生み出されたミステリー小説をご紹介致します。
 

企画の内容としては…
・7人の参加者が1人ずつ順番に1問1答制限時間1分でお題に答えていく

・お題の答えはすべてミステリー小説を構成する要素となる(例:「そんな主人公、人気が出るわけないだろ!」と思った探偵小説の主人公の特徴は?)

・お題の数は全部で70問。1人あたり10問をこなすことになる。

・制限時間1分なのでクオリティは問わないが、なるだけ面白くなるように、そして前後の脈絡等を考え、破綻しすぎないように頑張る。

という感じでした。


早速、成果物をご覧いただきます。
なお、内容につきましては、出揃った70個の回答をミステリーの構成要素として、私わからないが肉付け・成形したものでございます。かなりハチャメチャですが、お時間のある方はよろしければご覧ください。



☆☆☆☆☆



短編ミステリー小説

たらちねの『たぶん殺人事件』


【登場人物】

高橋 裸眼(たかはし らがん)
・・・探偵。メガネを3つかけている。

池田 美優(みちょぱ)
・・・裸眼の相棒。カラコン。5分に1回タバコ休憩。

オイ コイケ
・・・日系2世。缶チューハイを飲んでいる。

渡辺 明
・・・永世竜王。いつもエッチをしている。

蟹江 敬三
・・・俳優。お酒が弱い。

フラッシュ 斎藤 モブ
・・・恍惚とした表情を浮かべている。

アホ山くん
・・・ソフトクリームを逆さに持っている。

蝶番 幸雄
・・・警固公園に現れる意味深なじじい。




俺の名前は高橋 裸眼。
小さな個人探偵社を営んでいる、しがない探偵だ。しがないながらも、今まで数々の難事件を解決してきた、界隈ではちょっと名の知れた存在だ。今はおでんを食べている。

「熱っ!熱いって!もう少し冷ましてから食べさせてくれよ!メガネが3つとも曇っちゃったよ!」

「いいじゃん。おでんは熱いほうがおいしいに決まってるんだから。ほらほら、早く口あけて。」

俺の口にむりやり熱々のおでんを運んでいるのが、相棒の池田 美優、通称みちょぱだ。5分に1回はたばこ休憩を挟まなければいけないヘビースモーカーっぷりが玉にキズだが、なかなか気立ても良く、ここぞという時の勘も鋭い。実際、俺が関わってきた過去の事件の内、みちょぱの思わぬ気づきや助言によって解決されたものもいくつかある。俺にとってかけがえのないパートナーだ。

「てか早く支度しなよ。遅刻するよ。ヒカルのやつ行くんでしょ?」

「わかってるよ。早くそのがんもどきどけろ。」

みちょぱの言う「ヒカルのやつ」とは、福岡市は警固公園近くのファミリーレストラン・ジョイフルで開催される『ヒカルコラボ「冗談抜きで旨いおかんの唐揚げ」発表会』のことだ。ひょんなことから2名分の参加券が手に入り、ヒカルが見られるということもあり、ちょっくらピンピーンと行ってみようとしていたのだ。

今回の会場ジョイフルがある警固公園は、俺たちの事務所がある博多エリアから歩いて30~40分ほどの距離。地下鉄やバスもあるが、その日はやたらいい天気だったので、俺たちは散歩がてら歩いて向かうことにした。道中、ニセ警官による金塊強奪の現場を目撃し、それが後に雨上がり決死隊の解散劇へとつながることになるのだが、それはまた別の機会に語ることにしよう。

警固公園に到着すると、園内がなにやら騒がしい。騒ぎに近づいてみると、どうやらとっくみあいのケンカがおこなわれているようだった。片方は酔っ払い、片方はギターを抱えた2人組のストリートミュージシャンらしかった。俺はその2人に見覚えがあった。

「おい、お前ら唄人羽(うたいびとはね)だろ。」

俺が話しかけると、2人はバツが悪そうにそそくさと退散した。あれは本当に唄人羽(うたいびとはね)だったのだろうか。

そうしていると、ふと園内のとある場所に目が行った。なにやら3メートルほどの小さな山のようなものが園内にあるのだ。目を凝らしてみるとそれはうず高く積み上げられたクシャクシャになったビール缶の山だった。なんだこれはと呆気にとられていると、1人のじじいが俺たちに近づいてきてこう言った。

「これはのう、これはわしの家なんじゃ。」

「うるせえ。寄ってくるなじじい。」

俺が追い払うと、じじいは踵をかえしながら意味深な一言を呟いた。

「今日はおしっこが盛り上がりそうじゃ。」

「あ、トイレ反対方向ですよ!」

みちょぱの言葉を聞いてか聞かずか、じじいは雑踏の中に消えていった。

イベントの開催時刻になったので、俺たちはジョイフルに入った。すでに会場内では数名の参加者たちがイベントの開始を待っていた。

ある者は店内だというのに持ち込みの缶チューハイをあおり、ある者はこれからヒカルにあえる期待からか恍惚とした表情を浮かべ、またある者はドリンクバーのソフトクリームを逆さに持っていた。俳優の蟹江 敬三も来ていた。

「あー。エッチしてえー。」

声がした方を見ると、永世竜王の渡辺 明も来ていた。ほどなくして俺たち参加者一同は、ドリンクバーで思い思いのオリジナルドリンクを作って飲み比べる過程ですっかり意気投合した。イベントはつつがなく開催され、俺たちはヒカルが用意した警固公園内のテントにて宿泊することになった。

その夜、みちょぱとテントで過ごしていた俺は、ふいに尿意を催し、園内にあるトイレへ向かおうとテントを出た。ふっと何気なく辺りを見渡した俺は、あるものを発見した。その刹那、俺の背筋に冷たいものが走り抜けた。そこにはスーツ姿のヒカルがかしこまって立っていたのであった。イベント中でさえラフな格好をしていたヒカルが、スーツ姿でかしこまっている。これは何か良くないことの前兆に違いない。俺は尿意も忘れ、みちょぱを連れて全てのテントに声を掛けて回った。そして俺たちは参加者の安否を確認できた。そう、”ある1人”を除いて…。

「渡辺さんのテントだ!」

全員を連れて渡辺 明のテントを開けた俺たちは、眼前に広がった凄惨な光景に言葉を失った。その男性自身をさながら香車のように真っ直ぐ固まらせた永世竜王は、ベッキーの腹の上で物言わぬ屍と化していた。ベッキーのたらちねに半分埋められた顔から見て取れる表情は、悦びとも苦悶ともつかないものであり、その光景の異様さを一層際立たせていた。

「え、H死だ!H死してるぞ!」

「落ち着いてください!園内には交番があります!警官を呼んできてください!」

俺は騒然とする一同を制しながら、この惨状について考えを巡らせていた。そしてあることに気がついた。

「こ、これは不可能犯罪だ!」

「不可能犯罪?裸眼、一体それはどういうこと?」

「ああ、みちょぱ聞いてくれ。この事件が不可能な理由は、ベッキーだ。ベッキーは、たしか、川谷絵音と、結婚?したんだよね?」

「え、いや?してないと思うけど。」

「あれ?そうだっけ?いや、あ、そうだっけ?そうならいいや。忘れて。」

「なんだお前。」

そうこうしていると、いつの間にか俺たちの背後に昼のじじいが立っていてこう言った。

「呪いじゃ…。センテンススプリングの呪いじゃ!」

「うるせえ!あっち行けじじい!」

じじいを追い払った俺は再び現場に目を移し、推理を再開した。そして、数点の不可解なものを発見した。

まず俺が見つけたのはダイイング・メッセージだ。渡辺 明の指に、どこから出たかわからない血が付着しており、その血を使ってテント内の床に書かれていた「イタイ」という文字。死因がH死であることを鑑みると「イタイ」というのはいささか妙な気がする。いやしかし「イタイ=痛い」とも限らないし、ベッキーの締めつけ具合によっては痛くなかったとは決して断言できない。

「うーん、これは保留だな。」

次に気になったのは、床に散らばっていた3つの飛車の駒だ。なにせ被害者は渡辺 明その人なので何も不思議なことはないが、何かが引っ掛かる。何というか、こう、探偵特有のあれで、胸の奥がザワザワする。しかしダメだわからない。

「これも保留だ。うーん、難しいな。」

こういう時は角度を変えて考えてみるとうまくいったりするものだ。俺は容疑者である他の参加者のアリバイを聞いて回ることにした。まず訪れたのは、日系2世のオイ コイケだ。缶チューハイを片手にテントからフラリと出てきたその容貌はいかにも犯罪者のそれで、先入観を持つのは良くないと思いながらも、ついつい怪しんで見てしまう。

「なんだい。探偵のにいちゃん。なんか用かい。」

「あの、事件があった時間のことについてお尋ねしたいのですが…。」

「おいおい、にいちゃん。俺のことを疑ってるのかい。」

「お気を悪くされたのならすみません。形式的なものでして…。」

「その時間はな、俺は”やってる”最中だったよ。」

「や、殺ってる最中だった!?!?」

「ばか。何を勘違いしてるんだよ。ヤってたんだよ。Hだよ、H。」

なんだって!?渡辺 明と時を同じくして、オイ コイケもHに興じていたというのか!?

「貴重なお時間を、ありがとうございました。」

「おう。」

次に俺が向かったのは俳優・蟹江 敬三のテントだった。

「蟹江さん、単刀直入にうかがいます。事件の時間は何をされてましたか?」

「事件の時間かい?その時間はちょうど、オイ コイケとHしてたよ。」

これでこの2人のアリバイは成立した。犯人は他にいるということなのか、はたまたこの2人が共犯で口裏を合わせているだけなのか…。次に俺はフラッシュ斎藤モブのテントを訪れた。

「プロレスの試合に出てました。」

そんな、人がテントでHをやるような時間帯にプロレスの興行があるのだろうかと一瞬怪しい気もしたが、ニコ生のログで試合を確認し、アリバイ成立となった。次はアホ山くんだ。

「ヨネダ2000の漫才を見てたよ」

「それはテレビで?劇場で?FANYで?」

「ううん。ニコ生で。」

(ニコ生が流行っている…!)

最後に念のため、現地のじじいのアリバイも確認したが、中洲のサキュバスバーで飲んでいたらしく、聞くだけ無駄だった。

「うーん。どういうことだ?全員にアリバイがある。もしや犯人は他に?うーん。ダメだ混乱してきた。」

そんな俺を見かねてか、みちょぱが話しかけてきた。

「どうする?一旦メガネ拭く?それとももう1本買ってくる?」

「みちょぱ…。うーん。ちょっと行き詰まってるんだ。」

「あ、そういえばあの時…!」

「どうした?何か思い出したのか?」

「いや、あたしジョイフルのクーポン持ってたのに使うの忘れてたなって。」

「なんだお前。…でもありがとう。おかげで気がまぎれたよ。…!いや、待てよ。もしかして…。そうか。そういうことだったのか!」

「どうしたの裸眼?」

「わかったよ。全ては…全てはヒカルの手の中で踊らされていたんだ!」

「え、それってどういうこと?」

「まあ見ててくれ。すぐに俺がこの事件の謎を明らかにしてみせる。ういしょ!ちょっくらピンピーンだぜ!

お決まりのキメゼリフも飛び出し、真相に辿り着きかけた俺は、一旦みちょぱと離れ、最後の詰めに入っていた。と、その時。

「あの…。コンタクトとか考えてませんか?」

「え?なんですかあなたは…、今…、私は……推理……の…………」

おかしい。なんだか頭がボーっとしてうまく働かない。話しかけてきた相手の顔や声もぼんやりとして誰なのかよくわからない。でも、ダメだ。コンタクトにしてしまっては。このメガネは俺の推理力の源。それを奪われるわけには。しかし、なぜだか俺はその提案に従わなければいけないような気がしてしまっていた。

「は………はい………。コンタクトを………売ってください………。」

「いいでしょう。1セット100円です。」

「はい………。」

そうして俺はサイフを開けた。しかし、そこには2円しか入っていなかった。

「すみません………。2円しか…ありません………。」

「なんだと?そんなバカな…!」

「ちょっと!あんた何してるのよ!」

みちょぱの声で俺はハッと正気に戻った。その瞬間に、その怪しい人物はその場から走り去ってしまい、捕まえることは叶わなかった。しかし危ないところだった。昼間にヒカルコラボ「冗談抜きで旨いおかんの唐揚げ」を食べていたおかげでサイフの中に2円しか残っていなかったことに救われた。

「…ん?あいつ何か落としていったぞ?」

拾いあげて見てみると、何か固いものがゴム状の物質に包まれていた。

「こ、これは!そうか、あの時の3枚の飛車に感じた違和感はそういうことだったのか!」

「裸眼、それってどういうこと?」

「みちょぱ。1つクエスチョンだ。将棋に使う飛車の枚数って何枚だ?」

「え?それは…」

「それが答えだったんだ。みんなを集めてくれ。解決篇といこうじゃないか。」


(図1)

30分後。天神PARCOの踊り場にて。

「おい探偵!こんな時間に我々をPARCOの踊り場に集めて、一体どういうつもりだ!」

「急にお集まりいただきすみません。わかったんですよ!今回の事件の真相が、ね。でも…その前にパツイチやりて~!

「裸眼!がまんして!終わってからの方が絶対にいいから!」

「ああ、わかってるさみちょぱ。わかりきっているんだ。さて、早速ですがこちらをご覧ください。」

俺は懐からあるものを取り出した。

「これは先ほど、犯人が落としていったものです。真相に近づきかけた私を、犯人は”これ”を使って操り、真相から遠ざけようとした。」

「し、しかし、これは一体なんなんだ?見たところ、コンドームの中に将棋の飛車が入っているようだが…。」

「はい、これはまさしく、”飛車が入ったコンドーム”なんです!つまり犯人はこれを使って他人を操ることができるほど、将棋に長けた人物ということになる。そして渡辺さんが殺された時にも、犯人はこの飛車入りコンドームである人物を操ろうとした。そう、藤井聡太です!しかし犯人にとって予想外の出来事が起こりました。藤井聡太が操りに耐えたのです!」

「探偵さん。言っている意味がよくわからないが、単刀直入に教えてくれ。犯人は一体誰なんだ?」

「いいでしょう。さっきからこそこそと物陰からこっちの様子を見ていますが、そろそろ観念して出てきたらどうですか?犯人は………羽生 善治!あなただ!」

俺がPARCOの物陰を指さすと、その闇の中からユラリと着物姿の影が現れ出た。羽生 善治はいたって冷静な表情でしゃべり始めた。

「いや、私はたまたま近くを通りかかっただけですよ。そもそも何ですかこの騒ぎは?連盟会長であるこの私に、何の連絡も入ってきていないのですが?」

「しらばっくれることができるのもここまでです、羽生さん。あなたは将棋の暗黒面に堕ちている。その証拠に、あなたの背中には『ぬ(図1)』の刺青が入っているはずだ!」

「ハッハッハ!あなたには二歩でも勝てる。確かに私の背中には『ぬ(図1)』の刺青が入っている。しかしそんなもの、何の証拠にもならんよ。」

「じゃああんた、これを見てもまだ自分が犯人じゃないと言えるのか!」

俺はスマートフォンを取り出し、ある動画を再生した。

「そ、それは………!」

「ああそうさ。あんたはニコ生の将棋中継で、今回の事件の犯行予告をしていたんだ!これでもまだ言い逃れするつもりか羽生 善治!」

俺が怒鳴りつけると、羽生 善治は跪き、ポロポロと涙を流し始めた。

「でも………でも私は………将棋なんかしたことないんです………。本当です………。オセロしかしたことないんです………。」

「往生際が悪いぜ、羽生さん。でも、その諦めの悪さこそが、あんたをその高みまで導いたのかもしれないな。いいだろう、あんたが将棋をやったことがある証拠、いや、”将棋しかできない”証拠を見せてやるよ。」

そう言って俺は、俺と羽生 善治の間に将棋盤を置いた。途端に羽生 善治の目の色が変わり、気がついたら名勝負になっていた。羽生 善治が王手をかけ、俺が「ありません」と告げた瞬間、羽生 善治は我に返り、崩れ落ちるように倒れこんだ。俺はそんな羽生永世七冠に言った。

これでもう、永世叡王にはなれませんね。

「終わったの?裸眼。」

みちょぱが俺の背後から話しかける。いや、まだだ。この事件の一番肝心な部分が俺には気になっていた。

「羽生さん………どうしてこんなことを?」

「………だって、………だって、ベッキーかわいいじゃないか………。」

「羽生さん、あんたの嫁さんの方がかわいいじゃないか。」

俺が羽生 善治の肩にそっと手をやると、それを見ていた現地のじじいが誰に言うともなくつぶやいた。

「あの時と同じじゃ………FRIDAY増刊号の呪いじゃ………。」

すべては終わった。これで事件は解決だ…。そう思った時…。

「なんだあれは!?」

「空から何かが降りてくるぞ!?」

「あれは………あれはヒカルの実家だ!!」

なんてことだ。ヒカルがスーツ姿でかしこまっていたのはこれだったのか。ヒカルの実家はゴゴゴという音とともに降下を続けている。

高橋 裸眼「やれやれだぜ。」

みちょぱ「ここに住みたいなぁ。」

羽生 善治「そっちがそう来るなら、こっちは居飛車戦法だ!」

ヒカル「これ、なんの撮影?」

渡辺 明「うらめしや~」

羽生 善治「俺が殺したの、この人じゃないっす。」

フラッシュ 斎藤 モブ「え?この家、穴熊式住居?意味がわからない。」

掃除機「その隙間は無理です。」

ヒカル「一言いいですか?新ブランド立ち上げました。」


そして、

元巨人軍コーチで、

ベッキーの旦那である片岡が

独身になったのであった…。



【 筆者あとがき 】

この本、どのコーナーの棚から手に取りましたか?

色々ごめんね。

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