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R6.6.15(土/曇)【minorasu(ミノラス) - 農業経営の課題を解決するメディア🔴代掻き】


目次

水稲栽培において田植え前に行う代かきは、田植えの効率および苗の生育をよくするうえで重要な作業です。

本記事では、代かきの果たす役割や作業手順、無代かき栽培との違い、無人トラクターによる次世代の代かきについて解説します。

代かきは、田面を平らに整え、入水後の水を均等に行き渡らせるための作業です。

田起こしのあとで水を浅く入れ、土が泥状になるようにトラクターなどの機械を使って撹拌する方法が一般的です。


代かきの目的は土を均すことだけではありません。苗の活着を促し、水漏れや浮きわら、雑草の発生を抑えるなど、その後の生育を左右する要素が複数あります。

●大きな土の塊を砕き、土を泥状にすることで水漏れを抑える

●田面を均平にして、水や栄養が均等に行き渡り、生育が揃うようにする

●土を柔らかくすることで、移植しやすく、その後の活着を促す

●稲わらや雑草を土中に埋め込んで、田面に浮かんでこないようにする

●雑草の種子を土中に埋め込んで、雑草の発生を抑える

●メタンガスや硫化水素などのガスを抜いて、有機物の腐熟を促す

ロータリーは耕うん爪が装着された軸を回転させ、耕起、砕土、整地を同時に行う作業機です。

軸の前方には土の飛散を防止するロータリーカバーが備え付けられており、回転する耕うん爪によって砕かれた土がこのカバーに当たって跳ね返り、カバーの重さによって鎮圧され、平らに整地されるしくみです。

ロータリーによる耕起後は土の表面が平らになるため整地作業が必要なく、代かき作業をこれ一台で完結できるため効率的ですが、耕す深さは比較的浅めです。

ハローはほ場の耕起後に土を細かく砕き、整地する機能に特化した作業機です。

ハローの回転爪はロータリーの耕うん爪よりも短く、代かき専用に設計されているため、深く耕起することはできません。

しかし、地表面を細かく撹拌することで土が柔らかい泥状になり、田植えの際に苗が根を張りやすくなります。

ハローがない場合は、ロータリーで代かきを行っても問題ありませんが、ハローは耕幅が広いため作業回数が少なくて済み、より均等に土を耕すことができます。

1回目の代かきは「荒代(あらしろ)」といい、田植えの3〜7日前に行います。田起こしのあとも残っている大きな土塊を砕き、田面を凹凸を平らに整えます。

田植えの2〜3日前に行うのが「本代(ほんじろ)」(植代(うえしろ)ともいう)で、浅水で行います。土をさらに細かく砕き、雑草や稲わらを埋め込むのが目的です。

田面が柔らかめの羊羹程度の固さになるように、田面がより均平になるよう、丁寧にきれいに仕上げていきます。

ハローで代かきを行う場合は、ごく浅水での「1回代かき」を薦めている地域が多いようです。

代かきを1回ですませるためには、秋耕で均平を乱さないように気をつけて深耕し、春耕で土を十分に細かく砕いておきます。

実施時期は田植えの3日前、雑草を確実に地中に埋めるため、ごく浅水で代かきを行います。

代かきはタイミングが大切

代かきを行う時期が早すぎると、田植えをする頃には雑草が伸びてしまったり、ほ場の土が固くなって田植え後の苗の活着が悪くなったりする可能性があります。

また、代かきを田植えの直前に行うと土が落ち着いておらず、田植機の走行や、それに伴う水流の発生によって、苗が根付かずに流れてしまうので実施するタイミングに注意してください。

トラクターや作業機の大きさや、角を回る機能によって変わってきますが、枕地をなるべく作らないように、畦際を作業機の幅2行ほど残して内側を往復したあと、畦際の1行、最後に畦際から2行目を仕上げるというのが一般的です。

代かきの前に基肥をいれたあと、水を入れます。

水深は1cm程度のごく浅水にします。土が8割、水が2割に見える程度が目安です。

水を浅く張ることで代かき時に地表面が確認しやすくなり、均一に作業ができるほか、肥料、雑草、稲藁など水面に漂いやすいものを地中に鋤き込みやすいといった利点があります。

2. トラクターの設定をする

水を張ったほ場内を走行して代かき作業を行う際、トラクターは多くの燃料を必要とします。途中で燃料切れを起こさないよう、燃料は作業開始前に満タンにしておきましょう。

また、ロータリーの爪軸回転数の目安は200〜300rpm程度に設定しておきます。

走行速度と回転爪の回転数によって、土の細かさと柔らかさが変わるため、後述するトラクターの速度と併せて、適切な設定で代かきを行いましょう。

3. トラクターで田を掻く

ハローで代かきをする場合は、PTOの変速段数を低く設定しても十分に撹拌・整地効果が得られるため、原則として変速段数を3速、PTO変速段数を1速に設定して行います。

ロータリーで代かきを行う場合、トラクターの走行速度は時速2〜4km程度に設定します。スピードが速すぎると砕土が不十分となり、苗の植え込みが難しくなります。反対に遅すぎると土が細かく、柔らかくなりすぎるために移植した苗が安定しません。

4. 凹凸部分がなくなるまで掻く

代かきでは、田植え作業と違って同じ場所を何度も往復できるため、丁寧に地表面の凹凸を均していくことが重要です。


コース取りのところで説明しましたが、トラクターがほ場の端で旋回する場所では、土が耕されずに盛り上がった「枕地」ができます。

枕地はトラクターで作業をすると必ず生じる部分であるため、丁寧に潰してください。

ただし、何度も同じ場所を行き来したり繰り返し耕したりすると、トラクターの重さによる沈み込みや過度な深耕につながり、土の状態を悪くすることもあるため注意が必要です。

代かきには、代かき直後の濁水の流出が起き、それらが河川や湖などに流入することで環境負荷を高めるという懸念があります。

前項までで紹介した「浅水代かき」も、代かき時の水量を減らしてなるべく濁水を減らそうとする取組みの1つです。

濁水を抑える方法として、浅水代かきよりも、さらに効果的な方法として最近注目されているのが、代かきを行わない「無代かき栽培」です。

田植え前に入水自体をしないため、代かき後の落水、濁水流出の抑制のほか、春作業の作業負担を軽くできること、地盤が固くなりその後の機械作業がしやすくなること、また、排水性がよくなり田畑輪換がやりやすくなること、稲自体の活力が生育後半まで保たれること、などのメリットがあります。

ただし、無代かき栽培には、留意点やデメリットもあります。

まず、代かきありと比べると、漏水が増えることがあり、漏水が多い水田での適用は困難です。

次に、代かきを行わない分、排水対策と砕土をしっかり行う必要があります。耕起・砕土をする時期に雨が多く、作業が遅れると、田植え適期を逃すことがあるので、ゆとりある作業計画をたててください。

また、無代かき栽培では、地表の雑草を地中に埋め込むステップがないため、しっかり対策をしないと雑草の多発につながります。雑草の多い水田では、田植え前に非選択性の土壌処理型の除草剤を施用するようにします。

農業従事者の高齢化や担い手不足を解消するため、近年では新規就農者や女性の参入の後押しにもなりうる無人トラクターの開発および実用化が進められてきました。

代かき作業でも、水田の周囲を一度走ってGPSに記憶させ、トラクターの姿勢センサと連動するロボットトラクタ―を導入しようとする動きがあります。

農研機構では、有人機と無人機の協調作業による耕起・代かきを提案しており、福井県小浜市の実証コンソーシアムで実証試験が行われました。

無人走行といっても安全性確保のため有人監視が必要なため、無人機が先行して作業し、有人機がこれを監視し、追いかけながら無人機が耕しきれなかった箇所を作業するというものです。

福井県の資料によると、春起こし作業ではオペレーター1人当たりの作業時間を37%、荒代かき作業では21%削減削減できたと報告されています。

出典:
農林水産省 北陸農政局「スマート農業推進フォーラム2021 in 北陸」所収「「水田作におけるスマート農業実証プロジェクトの取組と今後の課題(農研機構中日本農業研究センター 研究推進部 大下 泰生)」(3ページ)
福井県 農業試験場のページ「研究成果・技術情報」の項所収「スマート農業技術資料(スマート農業マニュアル)|福井県スマート農業実証コンソーシアム・福井県農業試験場」

代かきは、水田の土壌を砕き、水持ちをよくし、その後の田植えを行いやすくする大切な準備工程です。

代かきを実施するタイミングや回数は、ほ場の広さや土質などに応じて調整します。作業を省力化したい場合は、無代かき栽培や無人トラクターの導入も検討してください。

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