DEVILMAN crybaby 感想

NETFLIXで一挙公開された新作アニメ「DEVILMAN crybaby」の感想です。
全10話見た今、とてもつらい。
本当にどうしようもないくらい辛い。この気持ちをどうにかしたいので書き殴ります。ネタバレに配慮しません。

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まず、私がアニメ化にあたって気になっていたのが、原作との相違点です。

大きな相違点は以下のようなものでした。
ここに書いたものは、ぜんぶ「後々演出として効いてくる」相違点でした。えげつないね。

•明と美樹が陸上部に所属している。また、主要キャラとして「幸田」と「ミーコ」という陸上部員が登場する。

•明と了の家族構成。明には「牧村夫妻と親睦のある両親」がいます。また、了は出生時から天涯孤独であり、デーモン発見のきっかけは僻地の民俗学者との接触です。
明の家族構成の変化は「ジンメン」回を1話で描き切るのにたいへん効果的でした。原作よりもストレートに殴ってくるぞ。

•不良。
「木刀マサ」「ドス六」「メリケン錠」など、序盤から終盤までを彩る不良たち。ストリートで鋭いライムを刻むラッパー少年になっています。

•牧村家の結末。
湯浅監督はね……よく分かってると思うんだ。
デビルマンの設定で、どういう悲劇が起こるかってのを。原作通りではない、別の悲劇を用意してきました。この外道め。つらい。素晴らしい。

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ここからは、つらかった描写を書きなぐります。
前述のとこまでで、すでにつらみが見え隠れしてますが、また語り直します。

•幸田とミーコ。
この2人はデビルマンになります。幸田は全体的には端役ですが、いい見せ場がありました。
ミーコはヤバイです。
彼女は「ミキ」という本名なのですが、チームメイトの牧村美樹が気立ての良い美少女トップランナーのため、ミーコはミキと呼ばれません。いつまでもミキになれない。このコンプレックスが、デビルマンとなって爆発します。
そしてミーコ、前述のラッパー少年どもと水面下で絡みます。ある少年との出会いが彼女の最期にちょっとだけ影響してるのですが、そこんとこ辛いです。人の業を感じます。

•ラッパー少年ども。
いつも3〜4人で群れてます。5人目がミーコと絡みます。
この5人目との絡みとか、あと水面下の心情変化とかが原因で、牧村邸襲撃の折に数人死んでしまいます。
数人死ぬ、ということは数人生き残るわけですが、ここが辛い。本編で特筆されなかったけど、これが分かると人間のどうしようもない辛さがわかると思います。わかれ。

•牧村家の結末。
ここ、詳細書きます。
「隣人が悪魔になる前に殺せ」的な風潮が蔓延した世の中で、牧村家の中にデビルマンが発生します。
ヒロインの弟、タロちゃんです。
原作のタレちゃんポジションです。
息子が悪魔であると知った牧村夫人は、タロちゃんを連れて家を去り放浪します。
放浪の中で、息子に「悪魔の衝動に負けてはダメ」と悟す牧村夫人ですが、タロちゃんは激しい欲望を……食欲に似た暴力衝動を抑えられません。

夫が牧村夫人の居場所を突き止めた時、
既にタロちゃんは、
夫人の上半身を丸々むさぼっていました。

そして夫は、悪魔と化した息子と、妻だったモノを前にして狂乱し苦悩するんですが、
彼もまた、もうクソみてえな結末を迎えます。あっけねえ。やめろ。これが人間のすることか。

そんなつらさです。

•第9話「地獄へ堕ちろ、人間ども」
この回のキツイところは、ほんの少しだけ救いが用意されてるところです。
この時点で、世界は既に、人が人を悪魔扱いし虐殺する地獄になってます。
そんな中で、誰より心優しい不動アキラの涙が、残虐な行為に走る民衆の心を変えたのです。
人々は振り上げた拳を降ろし、縛り上げた魔女たちを解放し、デビルマンである不動アキラに駆け寄って感謝を伝えます。

その直後。
デーモンが襲ってきて、束の間の平和は木っ端微塵になります。
そこからガッツリ地獄です。

魔女が引き裂かれ、槍玉に上げられ、狂った民衆は燃える牧村邸を囲んで踊り狂います。

これこそがデビルマンの守ろうとした「人間」だった、という、もう、つらさしか無い。
嗚咽が止まらないのに涙は出ない、わけの分からない絶望感。

•ラストの了。
いちばん最後の了のセリフがねーーーーーーーあまりにも「飛鳥了」なの!!わかる!?
「なんか言えよ?」みたいな、人の子みてえな言い方するわけ!!それはさーーーーー!卑怯!!!!
このアニメね!!
声優の演技がヤバイの!!!
叫ぶ明がヤバイ!
人間だか何だか分からん了がヤバイ!
美樹があらゆる意味で天使でヤバイ!
ミーコが翻弄されていく流れがヤバイ!

はーーーーーーー。
あかん。

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とりあえず、感想はこんな感じです。
原作通りでは無く、
しかし原作の描いた絶望的な世界、そこであったはずの悲劇、デビルマンとなった人間の懊悩、そこら辺をガリガリ描いてます。
ガリガリ心を削ってきます。

いや、とりあえず見て。
原作ファンは「ドス六がいない」以外に損する所ほとんどないから、見てください。
デビルマン知らない人は、ぜひ見て。
古典の名作だと思って。落語の「時そば」、クラシックの「運命」、映画の「サウンド•オブ•ミュージック」くらいのコンテンツだから。デビルマンは。


はーーーーーー。
つらい。
もっかいみる。


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追記。

牧村美樹について、つらい点がもうひとつ。

不動明がデビルマンであると発覚したあと、彼女はSNSを通じ「明は人間の心を失っていない」「人と人が傷つけあう地獄は、互いを思う心があればきっと無くなる」という呼びかけを行います。

この呼びかけに心を打たれ、隣人にカミングアウトするデビルマンなども現れ、最終的にアキラの協力者となったりするのですが……

美樹の発信に対する反応の大半は
「魔女がたわごと言ってるぜ」
「嘘乙」
「お前騙されてんだよ」
という感じです。

美樹やアキラの純粋さを知っている視聴者視点から見れば、憎しみしか湧かないリプライですが、
この反応、ネット上では「通常運転」なんですよね。

それが、どうしようもなくつらい。

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追記2。

•賛否多そうな「ラップ」について。
ぼくはミーコに影響を与える少年のライムがサイコーだったと思うので、とくに文句は無いです。
ミーコに対する会話のような切り出しから、韻とリズムが強調されていき、しかしBGMは鳴らない長尺の独白。
あの言葉に僕は引き込まれました。そして、あの歌が「美樹に勝てないミキ」であるミーコに響いたであろうと確信し、予想通りミーコは涙を流した。説明のつかない感動を与えたんです。
そこが起点になり、ミーコは変わっていきます。

原作をそのまま映像化するには無駄としか思えないラップですが、DEVILMAN crybabyを描くにあたっては良い効果を与えてると思います。

•幸田について。
あのアニオリのホモ、何でいたのか?
思うに彼は、デビルマンの世界観で発生したであろう悲劇のひとつをシミュレーションした結果だと思うんです。
つまり、
「愛した人が犠牲になったデビルマン」
「デーモン側に寝返ったデビルマン」
といった要素を体現した存在です。

この作品では「憑依デーモン」と「デビルマン」が明確に分けられていません。明の父がジンメンに破れたように、デーモンの意思と人間の意思がひとつの体の中で戦っている状態が多々見られます。
タロちゃんも、おそらくデビルマンであったにも関わらず、実の母を貪り喰らってデーモンに成り果てました。そのくらいのフワフワした境界しかありません。

幸田は、その境界にいた人間だったのでしょう。いい端役だったと思います。


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