タイトル作者【カジキ】タイトル【増える電話ボックス】

・タイトル作者【カジキ】
・タイトル【増える電話ボックス】


・番号【1】・文章作者【ワク】

ヤマは札幌から旭川に戻るところだった。明日は休みだし、いつもと違う道を試してみようと思ったのが間違いだった。いつのまにか民家も店も何もない全く知らない道を走っていた。ガソリンも余裕があったはずだが三分の一を切っている。スマホを横目で確認すると圏外になっていた。マズい。マズいぞ。
ヤマは、ハンドルを握る手がじわりと汗ばむのを感じた。


・番号【2】・文章作者【りにょり】

家に電話しておこうと考えた。
しかしスマホは圏外だ。ふと、窓の外を見ると電話ボックスがあった。電話ボックスなど何年ぶりだろう。財布を持って外へ出る。
中には黒いコートを着た男が居る。電話をしている様子は無いので、声を掛けてみた。「ちょっと、いいですか……?」


・番号【3】・文章作者【てちゅろん】

「助かった!」
ドアを開けると黒ずくめのコートの男が飛び出してきた。
「どういたしまして?」
お礼の意味が分からないながらも、入れ替わるように電話ボックスへ。
その男が親切に扉を閉めた途端、空気が詰まるような感覚と不安が湧き上がる。
予感を確かめるようにドアを開けようとするが、ビクともしない。
「ウソだろ……」
助けを呼ぼう。受話器を耳に当てがい肩で固定し、小銭を取り出そうとした手が受話器から音声に遮られる。
「この番組は、ボドゲにまつわるアレコレや、ボドゲにまつわらないアレコレを、GAYA系ボードゲーマー4人が皆さんのお便りを頼りに気ままにしゃべる番組です」
「今回は特別ゲストが電話ボックスで待機しています!」
「今どき電話ボックスって」どっと笑う3人。
これは自分のことだろうか?


・番号【4】・文章作者【カジキ】

受話器から声が聴こえてくる。
「まずは自己紹介お願いします!」
健康状態の悪そうな男性が質問してきた。とりあえず答えてみよう。
「私、電話ボックスで受話器を取ったらコチラに繋がっていまして。何が何やら」

女性の賑やかな声がきこえてきた。
「映画っぽい設定ですね! いいよいいよ!」
状況が伝わらないようだ。

「ドアも開かず、先に電話ボックスにいた黒ずくめのコートを着た男性とは面識もなくて」
さきほどの不健康そうな男性がこたえた。
「コートを着た男性ね! あいつだよ! あいつね!」
彼は何か知っているようだ!
その時、ふと気づいた。電話機に表示されたカウントが徐々に減っていることに。


・番号【5】・文章作者【ワク】

電話機の表示は09:30、09:29、09:28…と変わっていく。
10分間話せるということか?
カウントが終われば、このボックスから出られるんだろうか。
ヤマはひとまずこの場をしのごうと、電話の向こうにいる男と女に話しかける。

「いや~なんですかこれ!俺はどうしたらいいんですか?」
「お!じゃあこれから40の質問に答えてもらうよ~?」
よ、40も!?
「いや、どっかのラジオじゃないんだから!聞くのはあれでしょあれ!」
ふぅ・・・何なんだ。
「じゃあ、コートの服着た男、当ててみよっか~?」
分かるわけないだろ!
「無茶ぶりですよ!なんかヒントあげないと!」
「ヒント~~~?えっとね~、彼は有名人だよ!」
「そ、それだけですか?他には何かないんですか?」
「ん~、他にヒント有りますかねぇ。私それしか思いつかないです。」
「俺も思いつかねぇなぁ。あいつ作業ばっかしてるからなぁ。」
「そうなんですよ!この間なんか~・・・」

電話の向こうで二人で盛り上がっていて、話す隙はない。
表示は残り2分30秒。このまま終わってしまえ!

「あれぇ~?なんか静かだねぇ~?寝ちゃったのぉ~?じゃあ、もうちょっと増やしてあげよっか!」

05:00

くそっ!残り5分まで戻されてしまった!
一体どういうシステムなんだ…


・番号【6】・文章作者【りにょり】

「これは無限電話ボックスですよ」
女が出す高めの声は、先ほどよりも弾んで聞こえた。楽しそうな雰囲気を感じるし、電話の向こうで特徴的な爆笑が聞こえる。
「そうだ!話したいだけ話せるから時間は気にするな、3時間話してもいい」
男は豪快にハハハと笑った。男の大きな体格が想像出来るようだ。
きっとこの声からすると、体格はゆうに100kgを超えているだろう。健康のために水を飲んで欲しい。
「有名人といえば・・・」
先ほど聞かれた『コートの服着た男』についてヤマは思い当たる男が一人いた。それは


・番号【7】・文章作者【てちゅろん】

連勤術師ヤマ。つまり俺だ。なぜ気づかなかったのだ。だんだんと思い出してきた。
昨日GAYAラジを終えた後、オンエアで読めなかったレターにSteamのオススメが紹介されていたのだ。
それが気になって、寝る前に遊び始めたホラーゲーム。
主人公がコートの服着た男しか選べないことや、連勤日数の入力後に付与された称号に苦笑したのが「連勤術師ヤマ」。
そして暗転したモニターに映し出された実写系ホラーのような風景に、ポツンと浮かぶ電話ボックス。
その電話ボックスで試行錯誤を繰り返したが、まったく出られなくて「なんだこのクソゲー」と中断してベッドに潜ったのだ。
レターの差出人は誰だっけ。スマホはどこにも見当たらない。
「さっきからダンマリだけど大丈夫?」
受話器から高めの声の女が心配そう。
「そろそろ明け方ですし、始業時刻が近づいてきましたね」
でも3分間は待ってくれそうな男の声。
「ヤマさんの都合なんて聞いてないんだよ。俺たちとずっと喋ろうぜ!」
フハハハハ!と豪快に笑ってゲホゴホとむせる男。
「とりあえず水を飲みましょう」
心配したヤマが思わず声に出すと「ダマレ」と返された。
「このラジオを終わらせたいんですが、どうすればいいですか?」
「ウルサイ」
とりつくしまもない。体内時計では、恐らく出勤の朝が近い。
「ほら今から面白い話して。じゃないと出られないよ?」
高めの声の女がヤマに詰めてきた。


・番号【8】・文章作者【カジキ】

ラジオを終わらせ、現実への脱出を目指すヤマ。
軽快なトークや相槌、ヤマ落としを試みるも、彼らを満足させるには至らず。夜明けを迎えてしまう。

パチンッ!

「さっきからダンマリだけど大丈夫?」
受話器から高めの声の女がした。
気づけば再び受話器を持ち、ラジオに参加していた。
まだ夜は明けていない。
「一体何が……?」

「今日はTRPG回だよ! ヤマさんの都合なんて聞いてないんだよ」
謎のTRPGで迷宮に挑まされるヤマ。

      [START]
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        [HEAVEN]

サイドステップやバグ技、新車の購入…試行錯誤のすえに突破したが夜明けを迎える……。
どこかで声が響いた。
「ああ、やっぱり今回も駄目だったよ」

パチンッ!

ヤマがどこからともなく現れ、電話ボックスに向かう。
「ヤマト、そんな連勤で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」

ヤマは一心不乱に受話器をとった。

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Ending No.28 連勤術師ヤマ
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