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株式型クラウドファンディングで注意すべき点

ベンチャー起業への投資はベンチャー・キャピタル(VC)や一部のエンジェル投資家に限られていましたが、近年株式型クラウドファンディングサービスの広がりにより、規制により上限はあるものの(一回50万円まで)、一般の人々もベンチャー起業に投資できるようになりました。株式型クラウドファンディングはいくつかありますが、その中でも最も案件数が多いのが、FUNDINNOでしょう。

一方で、先日FUNDINNO案件で初の倒産が発生しました。

ここでは、倒産の経緯には詳しく触れませんが、一般的に未公開株への投資はリスクが高く、専門性が求められます。特にFUNDINNOのような普通株式によって投資する場合の問題点についてあまり触れられていないような気がするので、本稿ではそれらについて言及したいと思います。

(1)会社を清算したり、投資した金額を下回るバリュエーションでエグジットすると損失を被るリスクがある

会社が倒産したら基本的に出資額が返金される可能性は非常に低いと考えたほうが良いですが、倒産しなくても投資した金額以下でエグジットされる場合には、損失を被る可能性があります。もちろんベンチャーは将来のIPOやバイアウトを狙って成長を目指すわけですが、残念ながら全てのベンチャーが成長軌道を描けるわけでもなく、道半ばにして会社を清算したり、二束三文で会社を売却せざるを得なかったりする場合もあります。

FUNDINNOは基本的に普通株式を利用したスキームですが、VCが出資する場合は優先株式による場合が多く、バリュエーションは高くなるものの、たとえダウンラウンドでのバイアウトになったとしても、VCの出資額分は保全されるようになっています。優先株式など未上場企業のエクイティ・ファイナンスについては、もはやバイブルとも言える起業のエクイティ・ファイナンスがとてもわかり易くて詳しいです。

(2)株主総会のコストが高く、成長の阻害要因となる可能性がある

これは発行体側の視点ですが、一般的に未上場企業の場合、資本政策上株主数は少なければ少ないほど良いです。特にベンチャーの場合はエクイティ・ファイナンスやストックオプションの付与など定時以外にも臨時で株主総会を開くことが多く、こうした決定を迅速に行うためにも株主総会にかける事務的なコストはなるべく少なくするべきです。

株式型クラウドファンディングで資金調達すると、調達金額にもよりますが、多くの少数株主(数十人以上を想定しています)が発生するのは避けられません。株主総会の招集通知の送付だけでもかなりの労力とコストを割かざるを得なくなり、ベンチャーは赤字でキャッシュフローも満足に回っていない状態の会社が大半でしょうから、本来事業に優先的にかけるべき労力や資金がそちらにもっていかれます。また、本来株主として入れるべきではない人も株主として入ってしまうリスクがあり、無用なトラブルを引き起こす可能性もあります。こうしたことにより、余計なことに労力や時間を取られることで、成長が削がれてしまう恐れがあります。

(3)株主数が多いため、次の資金調達やM&Aによるエグジットに支障が出る。

上記に関連しますが、少数株主数が多いと次回のエクイティ・ファイナンスがしにくくなる恐れがあります。M&Aでエグジットする場合、株式の譲渡には株主の同意が必要です。買う側は買収後に少数株主が残っていると面倒なことが多いので、基本的には全株式を取得しようとしますが、株主の数が多ければ多いほど全ての株主から同意を得るのは難しくなります。特にエグジットの金額に納得できないとして、株の譲渡に反対する株主が一人でもいると、M&Aの交渉自体に影響があります。こうした少数株主の多さに起因するバイアウトによるエグジットが難航することを恐れて、VCも出資しにくくなったりします。

もちろんエクイティ・ファイナンスをする必要がなければそれはそれでいいのでしょうが、規制により株式型クラウドファンディングによる調達は1億円未満と制限されていることから、より一段の成長を目指すベンチャーとしてはまとまった金額の調達が必要でしょうし、デット・ファイナンスしか手が残されていないのは厳しいかと思います。株式型クラウドファンディングにより調達してしまうと、将来の成長可能性と資金調達の選択肢を狭めてしまう可能性があるといっても言い過ぎではないかと思います。

最後に、株式型クラウドファンディングでベンチャーに出資する投資家は、基本的にはIPOやM&Aによるエグジットでキャピタルゲインを得ることを期待しています。(もちろん純粋に会社を応援したいという気持ちを持っている方もいるとは思いますが、少なからず金銭的なインセンティブを持っていると思います)

一方で、未上場のベンチャーはお金はもちろんのこと、それ以外にも顧客とのパイプや人材など、上場企業と比べてもないものばかりです。上場企業の株主であればお金を出すだけでいいのかもしれませんが、株式型クラウドファンディングで株主になった投資家には、出資以外のサポートも期待されると考えています。経営に口を出すというより、例えば見込み顧客を紹介するなど実利のあるサポートがより望ましいと思います。実際、イケてるベンチャーほど、出資してもらう際にその人達を株主として向かい入れることでお金以外にどのようなメリットがあるのかを議論し、投資家を選別していると思われます。

上記の問題点から、私は普通株式型の株式型クラウドファンディングに大して基本的にネガティブなビューを持っています。一方で、普通株式ではなく新株予約権型のクラウドファンディングは上記の問題点をクリアしており、次のテーマとして取り上げたいと思います。


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