毎月短歌連作部門 斎藤君選③

どうもどうもこんにちは。「なんでいつも締切ギリギリにしか提出しないんですか?」と鳥たちが囀る春の黄昏、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は先日ようやく右手を毒手にすることができたので、近々師を殺した拳法家に復讐してこようかと企んでいるところでございます。

さて、今月も毎月短歌連作部門の選をさせていただきました。以下、選考結果です。よろしくお願いいたします。ででん。

一席 ホエイプロテイン賞

白痴 畳川鷺々

二物衝撃の取り合わせ、比喩、不可解な詩情が作品の端々まで行き渡っていて唸りました。確固たるストーリーまでは読みきれませんでしたが、私は失恋した主体の春の日常として読みました。喪失感と春愁と呼ぶにふさわしい柔らかい感傷がとても心地よいです。それでいて「糞して寝ろ」や「兵器」などの強めの語が連作の所々に絶妙に配置されており、それがアクセントとなり読者を飽きさせません。もっと読みたいと思わせてくれる作品でした。

二席 BCAA賞

ちっぽけ   白雨冬子

なんでもない春の一日から事物を切り取る観察眼の冴えが素晴らしいと思いました。さらにその切り取られた事物がとても巧みに詩的に調理されています。心地よい春の温度の中に見え隠れする小さな生と死の香りがとても好きです。少し体言止めの歌が多いかな、と思いましたが、連作全体に不思議な迫力があって、読者を黙らせる説得力を持っていると思います。

三席 クレアルカリン賞

脳髄リゾート 汐留ライス

三十秒くらいの悪夢のようなCMを観せられた気分になりました。まさにバッドトリップという言葉がぴったりな一編です。横尾忠則のようにカラフルで、ダリのようにどろどろ、そしてレトルト食品のようにチープ。とても素晴らしいです。きっちりと「流れ」がある作品なので、九首では少し短かったかもしれません。ぜひ三十首くらいの長さで読んでみたいです。

私が勝手にやってる一首部門

3×3×3賞
白雨冬子  しおり より

初期のゆらゆら帝国にいてやめたみたいな人がいたらぼくです

スラムダンクは鉄男が去るまでで賞
武井窓花  放してやろう より

あきらめる。私をじょうずにあきらめて風の通りに放してやろう

イカロスの末裔ヘビロテで賞
睡密堂  SHOCK HAPPY VACATION より

イカロスが墜ちそうなほど燃えている夕焼け空を飛行機は飛ぶ

割り箸が付いてねえ!賞
あづみのマルコ  痛み より

わずらうも流れのままに身をまかせ いつもの箸できちんと食べる

ヒーローは遅れてやってくるで賞
マノチハル  私の春はピンク色をしていない(けど) より

遅れてもちゃんと行くのがポリシーで駆けだしていく起き抜けの春

デニールと言う時デニーロが頭をよぎるで賞
まちのあき  チャイラテの味 より

ありふれた孤独もいいね傷ついたストッキングの続きを見せて

ソフトはないで賞
つきみ  家族計画 より

特別な日でもないのにゲーム機をありがとうです 人なのですか

牛丼が一杯とは限らないで賞
Tsugumi  女の性は彷徨えり より

イケメンに持ち帰られて食べられる 来世はすき家の牛丼になる

ゴー☆ジャスの肩の鳥は宇宙船になるで賞
叭居  ハメルンの笛 より

ドアノブを割ると生まれる鳥がいてキーキー秘密を囀るという

平和園で食べま賞
かがり  離任しました。 より

ラーメンとチャーハンセットで締め括る満ち満ちたりしわが初任校

以上です。今月も非常に沢山の投稿、ありがとうございました。私が無事復讐を終えて生き延びていたら来月もよろしくお願いいたします。

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