1998年6月1日(月)

【罠解除士鍛錬場:富田 剛・大塚 仁・森下 翼・田村 沙織・飯島 志保】
「あ、富田さん、どうしたんですか?」
 久しぶりにここにやってきた富田 剛を見つけて、大塚 仁が声をかけた。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。本日大塚は森下 翼と田村 沙織と一緒に鍛錬を行っていたが、急に富田がやって来たのに気づいて声をかけたのである。
「いやいや、たまには来とかないと、だんだん来にくくなるからね」
 周りを見渡しながら富田は質問にこう答えた。富田が冒険者を引退してもうかなりの年月がたつが、今でもたまにこの罠解除士鍛錬所を訪れる。引退したとはいえ、パワーナインの一人として名が挙がる富田は今でも現役の罠解除士たちが束になってもかなわないぐらいの実力を持っている。ちなみにパワーナインとはずばぬけた才能を持つ(持っていた)9人の冒険者を総称して呼んだもので、そのメンバーは戦士系が前田 法重、原田 公司、谷口 竜一、中尾 智史、罠解除士が富田 剛と大塚 仁、僧侶が佐々木 雅美で魔術師が本田 仁と藤原 静音の9名である。ちなみにこのメンバー選抜の際、9 期以前の冒険者という限定があったため、僧侶の中島 一州はこの中に含まれていない。そこで、この中島を含めた10 名をパワーテンと呼ぶこともある。
「富田さんだ~こんにちはー」
「お疲れさまっす~」
 富田の姿を見かけて、鍛錬中であった田村 沙織と森下 翼も近寄ってきた。
「うむ、ごくろう。ところで、どうよ?18 期は」
「なかなかいい感じです。結構みんなまじめで、しっかり鍛錬しているから、上達も早いのではないかと思います。で、富田さんの質問に答えると、女の子は3人で、特に飯島さんの妹はめっちゃかわいいですよ」
 森下が富田の質問の真意を汲み取り、的確な解答を述べる。富田は解答に満足したようすで、また周りを見渡した。
「そうそう、私今から飯島ちゃんと一緒に鍛錬しようと思ってたから、よかったら富田さん指導してもらえませんか?あ、飯島ちゃーん」
 田村がそう叫ぶと、窓際で鍛錬を行っていた飯島が駆け足でこちらにやってきた。
「紹介しますね。飯島さん。桜ちゃんの妹ですね。で、こちらが富田さん」
「あ、あなたがあの富田さんですか。噂はいろいろ伺ってます。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。じゃあ久しぶりに指導するとするかな」
 そういって富田は田村と飯島の鍛錬に付き合い、汗を流した。その間中大塚と森下がニヤニヤと眺めていたのは秘密である。ちなみに、おそらく皆んなが忘れていることであるが、富田は引退直前に忍者に転職しており、最終職業は罠解除士ではなく忍者だ。だがそんなことは、どうでも良いことなのである。

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