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カードローン地獄に陥る様(サラリーマン転期13)

コロナバブルというと株や仮想通貨投資をしていた人はピンとくる人も多いだろう。

2020年3月頃に起こったコロナショックを受け、政府は補助金をバラ撒き、アメリカは金利を大幅に下げたことによって、お金が、株や仮想通貨などのリスク資産に大量に流れた。

株は軒並み大きく上昇し、仮想通貨もビットコイン半減期もあいまって爆騰。

素人でも容易に儲けられる時期があった。

私はちょうどこのコロナバブルの時に投資を初め、大きく資産を増やした。

しかし、バブルはいつか弾けるもので、その弾けた時の下落スピードは上昇の比ではなかった。

それでも、バブルしか知らない私は、そのうち上がる思考が治らず、上がりそうな株や仮想通貨を探しては購入し、損失を抱える日々が続いた。

ショート(信用取引の売り)を覚えた頃には、バブルは崩壊し、回復時期に入り、今度はショートしたら上がり、損失を抱えるを繰り返した。

もう、なにをしても裏目に出る。

2分の1の確率のはずなのに、8割の確率で損失が出る。

訳がわからない。

ただでさえ、子供の養育費や家のローンで赤字続きなのに投資の損失でさらにマイナスに。

しかも、調子に乗って買ったBMWの維持費が日本車の比ではなく、愛犬と愛猫にもお金がかかり、貯金はあっというまになくなった。

とりあえず、銀行から50万円の借金をして、食い繋ぐ。

ボーナスなどを駆使して返済するも、支出は一向に減らないので、もちろん足りない。

私はふと、株のチャートを眺めて思った。

時折、人気の優良株が1、2ヶ月で倍の価格になっている時期があるのだ。

下がったところで大量に買えば、2倍まではいかないまでも、大きな利益を得ることができるはずだ。

翌日、住宅ローンを借りている銀行のネット口座を調べたところ利息の低いカードローンがあることに気がついた。
私は、すぐに審査を受け300万円を借用した。

一気に使わずに、借りたお金の一部を返済に当てながら、半分くらいを投資に回せば利益を利息分も含めて生活費に回せる。

楽勝だ!この手があった!

そう思ったのも束の間、その300万円は2、3ヶ月もしない間に底をつき、また、違うカードローンに手をつけた。

大丈夫、次は上手くいくはずだ。

株式詐欺

ある時、友達追加のLINEが来た。
どうやら投資のアドバイスをしてくれるLINEのようだった。
私は、軽い気持ちで友達追加をした。

笹木賢治と名乗るその投資アドバイザーは日々株式の情勢について情報を提供してくる。
株式投資のユーチューブを毎日見ている私には目新しい情報はなかったが、これも一つの優良な情報だと思い一応目を通すようにしていた。

時々、おすすめ株として個別の銘柄を進めてくるので少額を購入するも、タイミングがうまく合わず含み損を抱える始末。

まあ、こんなもんだ。と思っていたところに、アシスタントの星川という女性から友達LINEの申し込みが来た。

私は、友達に登録すると、個別にアドバイスをしてくれたり、購入株のタイミングを指示してくれるようになった。

アイコンは綺麗な20代の女性で、投資顧問の先生にはこんな綺麗な助手が付くんだなあと羨ましくも思った。

ある日、笹木先生から香港株の購入を勧められた。

どうやら、今後大きく上昇する可能性があるようだ。

笹木先生は、現地の企業説明会に招待され会社の今後の戦略について情報を得てきた、今後この香港企業が大きく業績を伸ばす可能性が高く、株価の大きな上昇が見込めるとのことだった。

なんだか、華やかな香港の現地らしき写真が送られてきた。

その香港株とは植華グループ(コード:01842)である。

もちろん国内株ではなが、ちょうど楽天証券の口座を持っていた私は、この香港株を楽天証券で取引することができた。

笹木先生は、神武景気3号なる株式購入計画を掲げ、植華グループの株の購入タイミングについて細かくアシスタントの星川さん経由で指示してきた。

実際にLINEで送られてきた画像

購入した履歴についてはスクショにより報告する方式だ。

私は、当初、30万円ほど購入し、スクショを星川さんへ送信した。

笹木先生のLINEには他の生徒さんも購入したというLINEをスクショが送られていた。

会社から2億円もの大金を借用してこの株を購入したという強者まで現れたのだ。

確かに、ここ数日すごい勢いで株価が高騰している。

私が当初、購入した金額から数日経たない間に倍3、4倍近くまで跳ね上がっていた。

笹木先生曰く、思ったより高騰の勢いが強く、当初の予定よりもさらなる高値が期待できるということだ。

日に日に株価の高騰スピードが増し、楽天証券からも注意喚起が流されるほどだった。

LINEグループの中の話では、植華グループは香港などの人口密集地を拠点にビジネスを展開し、年内には中国の10の主要都市に展開する予定であるとのことだ。

我々は、笹木先生の早めの調査のおかげで低価格でエントリーができ、大きな上昇に早い段階で乗れ、大きな含み益を得てた。

この上昇は、まだ2、3ヶ月は見込めるという。

笹木先生曰く、今は分散投資によるリスクヘッジが資金を過度に消耗している。今は、「分散投資より集中投資することをおすすめします。」とのことだ。

私も早速、置いていかれないように残りの50万円を追加購入した。

全額投資しようとも思ったが、やはりリスク管理は必要であると考え、全額はやめにした。

神武景気3号計画では、3段階に分けてポジションを形成していく戦略(ピラミッド手法)を採用しており、これにより、安全確実に利益を獲得する。

笹木先生:「今回は、大きな利益を得るチャンスがあり、かつその期間を短縮できるものです。赤字株は思い切って売却し、新たなチャンスを全力で掴むことが大切です。チャンスは、決断力のある人々にこそ訪れるのです。」

そうか、やはりこのチャンスに乗り遅れるわけにはいかない。
すでに、含み益が100万円近くに増えてきていて、この調子だと思ったより早く借金を返済できる。

私は、さらに50万円を投資し、香港株への投資資金は130万円に達した。

先生の計画だと、1、2ヶ月でさらに倍の利益が出る予定で、既に100万円の含み益があるので、プラス50万円から100万円、合計200万円ほどの利益がもう少しで手に入る!

植華グループの株価

安堵に浸った。


ある日、仕事中に携帯電話のバイブが何回も鳴った。

誰かな?

LINEのようだ。

アシスタントの星川さんからだ。

何が新たな情報が入ったのだろうか?

LINEを開くと長文が送られてきていた。

そこに書いてある内容を見て私は手が震えた。

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