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「リコとロイの旅立ち」―アニポケHZ序章所感―

〇はじめに

2023年4月14日より放送開始したアニポケ新シリーズ(海外タイトル"Pokemon Horizons"、以下"HZ"と呼称)の第一章「リコとロイの旅立ち」が25話を持って締めくくられました。26話からは「テラパゴスのかがやき」というサブタイトルに移り、OPなども一新されるようです。

HZは最初から章立てで構成されることが発表されており、ある程度のまとまりで区切られるのは承知してました(特番での発表が最初だったはず)。縦軸の連続性の高いドラマである為、章立てスタイルには納得感があります。

そこで、本記事では「リコとロイの旅立ち」についての所感を述べていこうと思います。シリーズ全体の評価をくだすには早すぎるけれども、章立ての意識を持っておくのはHZの見方としてアリだと判断しました。

ただし、これまでのSMやJNなどのレビューや総評と比較して判断材料が少ないためあくまでもざっくりした所感なのは悪しからずm(__)m


〇初回の印象

初回は4月14日に「はじまりのペンダント」が一時間SPで放送されました。細かい感想は記事にしているのでそちらを見てもらうとして、ざっくりした印象は「映画っぽいな」でした。

初回なので作画などに気合が入ってるのもそうですが、サトシ編のときのようなコミカルな描写は抑えられ写実的な演出をしている印象でした。いわゆる従来のアニポケらしさからは最初から距離を置いていた気がします。

ポケットモンスター(2023)「はじまりのペンダント 前編」

最も象徴的なのはリコの「私、物語のヒロインですか!?」の内心吐露で、ここで本シリーズの方向性をなんとなく汲み取ることになります。なるほど、ヒロイン巻き込まれ型でペンダントを巡るストーリー…世間では「ラピュタっぽい」のような評価がされていましたね。

ポケットモンスター(2023)「はじまりのペンダント 後編」

個人的には「キミにきめた!」を想起しました。無印第一話の「ポケモン! きみにきめた!」に「にじいろのはね」というアイテムを加えることで映画として成立させる…3年間ゆっくり展開するのではなく、2時間で完結するのを目指すストーリー。

劇場版ポケットモンスター キミにきめた!(2017)

他に思ったこととしては、「人多いな…」。初回でライジングボルテッカーズ(RV)とエクスプローラーズ(EXP)が一気に顔見せしたので、初見では顔と名前が一致しませんでした。ここは正直ネガティブなポイントかも。

ポケットモンスター(2023)「はじまりのペンダント 前編」

〇キャラ描写

主人公組/ライジングボルテッカーズ(RV)/エクスプローラーズ(EXP)/ゲストに分けてざっくりと。

<主人公組>

・リコ

本シリーズの主人公。自分の思ったことを表現するのが苦手で心の声がメイン…というのは精々5話くらいまでの話で実際はハイテンションオタクという印象。バトルメインではない主人公という位置づけで、ポケモンの気持ちが分かるトレーナーを目指すとのこと。

物語の構造として巻き込まれ型の主人公なので主体性を発揮するのが難しいのかなと思っていましたが、実際はいい意味でぶっ飛んだ主人公気質を持ち合わせていましたね。むしろ、前のめりで危なっかしいと思うことの方が多いかもw

相棒のニャオハとの関係性は今のところニャオハがリードしている感じですが、テラパゴス加入でパワーバランスが崩れたので進化含めてどう展開されるかに関心を持っています。

・ロイ

リコと対をなすもう一人の主人公…かと思いきや、実際のところ「レックウザに会う」⊂「ペンダントの謎を解く」なので、リコの役割の一部を受け持っているキャラという印象。

島っこで元気がよくポケモンとの距離が近いのでサトシと比較されることが多いですが、ロイは理詰めでものを考える(プログラミング的思考の)新世代の主人公だと思います。

相棒のホゲータとのコンビが予想以上に推されていて、なんならニャオハを超えている印象。歌が好きという性格上、進化後のラウドボーンまでのロードマップが見えるので進化ストーリーにも期待したいですね。

・ドット

ポケットモンスター(2023)「クワッスとなら、できるよ」(画像は予告)

隠された第三の主人公…主人公でいいんだよね?物語のキーアイテムであるペンダントといにしえのモンスターボールに絡まずにストーリーに絡むため、ある意味一番正統派なキャラ。

何らかの事情があって引きこもりながら「ぐるみん」という着ぐるみ系動画投稿者として活動しているという中々に濃い背景を背負っています。個人的にドットが本格参戦してからHZが面白くなってきたと思っています…が、ガラル編になって影が薄くなっているのが気になるところ。

<ライジングボルテッカーズ(RV)>

フリードとキャプテンピカチュウ率いる主人公陣営「ライジングボルテッカーズ(以下RV)」。目的は「ポケモンの謎、世界の謎を解き明かすこと」らしい…。

メンバーはリーダーのフリード、船長のキャプテンピカチュウ、機関工のオリオ、料理番のマードック、医療班のモリー、船の権利者であるランドウ…に加えてプログラマーのドット。戦闘は基本的にフリードに投げてる感じがしますが、戦闘力皆無というわけではなさそうです。

18話でRV結成秘話が語られますが、初期メンバーのフリード(&キャプテンピカチュウ)、オリオ、ランドウ以外がどうやってメンバーになったのかは明らかになっていません。全員が「ポケモンの謎、世界の謎を解き明かすこと」に同じように興味を持っているのかも不明瞭です。

基本的に全員気のいい大人たちでリコロイドットを温かく見守っているのは安心感がある…といいたいところですが、リーダーのフリードが報連相が苦手という悪癖を持っているのが玉に瑕。

ポケットモンスター(2023)「マホイップのホント」

<エクスプローラーズ(EXP)>

ポケットモンスター(2023)「いにしえのモンスターボール」

本作の敵陣営。リコが持つペンダントを追い求めている謎の組織。伝説の冒険者ルシアスと関係しているらしい。ボスはギベオンで側近にハンベル、幹部にアメジオ、スピネル、オニキス、サンゴ、アゲートで構成。

サトシ編のロケット団と比較するとスマートなビジュアルのメンバーが揃っています。序盤から襲ってくる敵にしては実力も高い為、フリードが用心棒になる動機付けになっています。リコロイも少しずつ実力をつけたため下っ端の相手は出来るようになってきました。

ポケットモンスター(2023)「闇夜の強敵」

基本的に本シリーズがシリアスな雰囲気になっているのはEXPによるものでしょう。アメジオの部下のジル・コニアは隙をみせていますが、今後EXP視点の日常回もあるでしょうか?単純な悪玉ではないと思うので人柄をみせてほしいですね。今のところ一番キャッチーなのはmsgkピカチュウことサンゴの顔芸?

ポケットモンスター(2023)「闇夜の強敵」

<ゲスト>

ポケットモンスター(2023)「カブさんのバトル修行」

基本的にオリジナルストーリーで展開されていくHZシリーズ。しかし、世界観は原作と連なっているのでジムリーダーなど原作のキャラも登場します。基本的に原作キャラはゲスト扱いになっていますが、今後本筋に絡んでくるのでしょうか?

特に印象的だったのは前作のJNシリーズで登場を果たせなかったエンジンジムリーダーのカブさん。リコにバトル以外のトレーナーの道を諭すという大役を果たします。サトシ編でいうところのカンナのポジションですね。

しかし、これから更にストーリーが進んでいくと原作キャラが入り込めなくなってしまうのではという懸念もあります。サトシ編で登場したネームドキャラは25話までには登場していませんが、アローラ編あたりではどうなるのか気になります。

〇ポケモン

ポケットモンスター(2023)「はじまりのペンダント 後編」

アニポケという括りである以上、ポケモンがどのように描かれるかには注目が集まるところ。現状最も存在感を放っているのはキャプテンピカチュウ、通称キャップです。

サトピカと同じくキャップのCVは大谷育江氏が務めていますが、ポケモンとしての性質は大きく異なります。キャップは文字通りRVの船長として集団をリードしていく存在です。

HZの特徴としては、トレーナーとポケモンの「相棒」感が強調されているのが挙げられます。一心同体というか…トレーナーの心のエネルギーをポケモンが射出している感じ。例えばリコがニャオハに技の指示を出すところなどは、「金色のガッシュ」を想起しますね。

サトシ編でも特にXY以降の強化システムが導入されて以降の作品はこのような「相棒」感が強調されてきたように思いますが、HZではそれを前提にした世界観が構築されている気がします。

批判的にみればポケモンがトレーナーに付随しているように見えるかもしれないですし、実際そう見えることを否定はしません。が、私はそれも歴史の積み重ねによるものと解釈しています。

また、登場ポケモンはJNで目立てなかったポケモンをメインに取り上げている印象です。ガラル編では特にその色が顕著でしたが、ここは素直に評価したいです。

ポケットモンスター(2023)「もえあがるガラルファイヤー」

総数が1000体を超えた現代ポケモンにおいても、一体一体に思い入れのあるファンがいますから、そこを掬うのもアニポケの役割だと思っています。

〇ストーリー展開

【公式】アニメ「ポケットモンスター リコとロイの旅立ち」ダイジェスト映像(ポケモン公式youtubeチャンネル)

「これはいにしえの冒険者ルシアスの伝説を追う少女と少年の物語」

…と当たり前のように出てきた文言ですが、これが視聴者に提示されたのは12話のこと。正直、リコと視聴者が振り回されてる時間長すぎでは?と思ったり思わなかったり…。

それを抜きにして考えると、アニポケで長編の縦軸ストーリーをやろうという試み自体は面白いです。一つのアイテムを巡ってのストーリーはリコが言う通り王道の物語ではありますが、それをアニポケでやることに新規性があります。

以前記事にもしましたが、これまでのアニポケもポケモンと共に生きるトレーナーの姿を描いてきた作品でした。

本質は共通しながらも、アイテムによって焦点を定めて、新しい主人公が一からゴールに向かっていく様はまさに「ドキメキ」の情動を掻き立てます。わからないことにヤキモキしながら、新鮮味を保って走り抜けてほしいですね。

ただ、少し気になる点もあります。特に「リコのトレーナーとしての目標」と「ルシアスの伝説を追うこと」がリンクしていないことについて。リコは本来セキエイ学園の学生であり、そこでもトレーナーとして成長することは出来たはずです(運命と言われたらそれまでですが…)。

この問題はSMのリーリエやJNのコハルも抱えていました。それは本来別々のイベントを一つにまとめることで軸がブレてしまうということ。

左:ポケットモンスター(2019)「コハルと不思議な不思議なイーブイ!」
右:ポケットモンスター(2019)「モーンとリーリエ、雪原の再会」

リーリエは家族の問題を解決すること(モーン捜索)と自分の夢を見つけることを重ね、コハルは自らの進路とイーブイの進化先を重ねました。両者ともに両輪のイベントをこなしていきましたが、最後までバラバラ感は拭えませんでした。両者(モーン、イーブイ)に共通しているのは後から差し込まれたイベントであるということ。

HZの場合、初回時点でペンダントによってストーリーが動いていくので問題ないかと思いきや、ルシアスの存在が後から差し込まれた印象がぬぐえません(実際は初回のナレーションから登場しているのに)。ここまででも何度か触れていますが、初回のスタートダッシュは色々惜しいと思ってしまいますね。

〇その他(BGM、演出、OP/ED、etc…)

その他の要素についてざっくり語っていくと、全体的に綺麗にまとまったデザインの演出になっていると思います。近年のアニポケはSM、JNとコミカルで崩した演出も多かったですが、HZでは大きな崩しは今のところ見られません。

要所では作画解放的なホンキ回も見られ、制作の意気込みを感じます。特に18話は本シリーズだからこそ観られるスケール感を表現していました。

ポケットモンスター(2023)「そらとぶピカチュウ、どこまでも高く!」

BGMもオーケストラ調で、やはりシネマティックな演出。シリーズとしてトーンが統一されているのは個人的には好みです。ギャグ回などでコミカルな演出を観たい気持ちもありますがw

OPの「ドキメキダイアリー」については、以前記事でも語ったように「新しいアニポケ」の楽曲としての完成度を高く評価しています。それだけに「リコとロイの旅立ち」で切り替わってしまうのは寂しくもあります。案外HZの全体像というよりは「リコとロイの旅立ち」に焦点化した曲なのかもしれません。

EDの「RVR」については、ポケモンの名前のラップという新鮮味もありつつ「ポケモンいえるかな」的な雰囲気もある感じ。ラップの良しあしは正直よくわからないのですが、RVのメンバー紹介的な意味でも機能していた印象です。JNから若干こういう歌遊び的な方向にシフトしているので、次シーズンでは雰囲気のある曲を期待したいのはここだけの話。


〇所感

さて、ざっくりとした所感の割に長くなってしまいました。完全新規のシリーズの序章というのはどうしても色々言いたくなるものですね。

こめこめくらぶの発信活動としても「リコとロイの旅立ち」から色々試行錯誤してきました。「リコとロイの旅立ち」の魅力を伝えて共有するためには従来の方法のままではしっくりこなかった…「分からない物語にビビらないで」という歌詞の意味を肌で実感することができました。

ドキメキダイアリー - asmi feat. Chinozo (Official Music Video)

さあ、「リコとロイの旅立ち」を経て「テラパゴスのかがやき」へ。

現状、誰も詳しく知らないテラパゴスに焦点があたるということで、非常に楽しみです。何よりも見知らぬポケモンに対して「ドキメキ」するのがポケモンファンってもんです!…To Be Continued

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