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【アニポケ雑談】「日常回」は遠くになりにけり

急に寒くなって体がついていかない秋の雑談🍂

アニポケにおける「日常回」と聞いて皆さんはどのような話を思い浮かべるだろうか。昔のシリーズに馴染み深ければロケット団が悪さをしてピカチュウが「10まんボルト」で吹っ飛ばすパターンの話をイメージする人が多いだろう。そして、最近のシリーズを観ていない人からするとアニポケってそういう話の連続でしょ?と思うかもしれない。

しかし、そのようなパターンの話は時代を経るに従って徐々に減っていった。特にターニングポイントになったのは「ベストウイッシュ」シリーズ(2010~2013)と「サン&ムーン」シリーズ(2016~2019)だ。

「ベストウイッシュ」シリーズにおいてはムサシ・コジロウ・ニャースがサカキ直々の命令を受けて作戦を実行するシリアスなキャラへと変貌を遂げ、「日常回」への出番を減らした(その後再度キャラ変して「日常回」にも登場する)。

ポケットモンスターベストウイッシュ EP2「アイリスとキバゴ!」

「サン&ムーン」シリーズでは特にシリアスなキャラ変はなかったが登場回数が激減した。SMは「日常」がメインのシリーズだが、ロケット団絡みのパターンから外れてきたのが特色だ。

ポケットモンスターサン&ムーン EP38「ミミッキュのばけのかわ!」

しかし、ロケット団が吹っ飛ばされるのが「日常回」の全てではない。改めて「日常回」とはなにかについて考えてみよう。


そもそも「日常回」というカテゴライズがどうやって生まれたのか…その詳しい成り立ちについては私もわからない。ただ、それの理解に役立ちそうな「Filler」という言葉がある。

「Filler」とは直訳すると「混ぜ物・詰め物」という意味で、海外のアニメオタク界隈の文脈的には「本筋に関係ない間に合わせの話」という意味を持つらしい。

特に原作があるアニメの場合、アニメの進行が原作の進行を追い抜いてしまうケースがある。それを避けるために原作にはないオリジナルエピソードを挟んで時間稼ぎをすることがあり、これを「Filler episode」と呼ぶとのこと。

「Filler episode」は多くの場合、本編のストーリーに関係せずキャラの成長要素などは含まれない。というか、むしろ本編に影響するような話は描けないというのが実際だろう。間を埋めるための話が「Filler」として扱われる。

ただ、アニポケの場合「スカーレット・バイオレット」などのゲームとアニメの関係は「原作」ではなく「原案」となる。ゲームのストーリーを忠実に再現することを目指しているわけではなく、同じ世界観を共有した別のストーリーが展開されている。これは昔も今も変わらない。

なので、アニポケ的に「Filler」を解釈すると「本筋に関係ない話」という部分がメインになるだろう。サトシ主人公の時代であればシリーズのゴールはリーグに置かれていることが多かった為、リーグに関係する話はメインとして扱われることが多い。具体的にはジム戦回やパーティとなるポケモンのゲット回/お別れ回など。ポケモンの技の新規習得回などは微妙なところでざっくりと「Filler/日常回」として扱う人もいるかもしれない。

ただ、この「本筋」という括りもあくまで視聴者側視点の流動的なものであることに留意しなければならない。サトシ編においても本当に本筋がリーグにあったかは議論が分かれる。サトシの目標は「ポケモンマスター」であり、「ポケモンリーグ優勝」ではない。ならばサトシがポケモンと交流を深めている回は全て本筋では?とディープなアニポケファンであれば思い至るだろう。

ポケットモンスター(2019) EP147「虹とポケモンマスター!」

このように内容的に「日常回」かそうでないかを考えるのは難しい。そのため、冒頭のロケット団による吹っ飛ばしなどの見た目で分かりやすいもので判別されがちだが、先述したように「サン&ムーン」あたりからそのパターンは崩されてきた。

これは制作側のマンネリを打破するための施策だと想像できる。長期シリーズであれば必ずマンネリ・パターン化と向き合う時期がやってくるが、一番メスを入れやすかったのがロケット団だったのだ。

この制作上の変化は視聴者のアニポケの見方にも影響を及ぼす。わかりやすい「日常回」の指標を失った結果、視聴者はこれまで以上にアニポケの一話一話のクオリティの高さを求めるようになる。

この傾向はSMからはじまり、JNでサトシ編が締めくくられた後のHZにおいてより強固になったと思う(きちんとしたデータがあるわけではないので個人的な考察・妄想となるのを許してほしい)。


現在放送されているHZシリーズは、これまでのアニポケと比較して縦軸が非常に強い物語が展開されている。サトシにとっての「ポケモンマスター」のような概念的な目標ではなく、冒険者ルシアスの足跡を追うという具体的な目標に向かって進んでいく。

横道にそれることもあるが基本的にはキャラの成長や深堀り描写があり、一見「Filler」な回は見当たらない。…のだが、先日の28話はまさに「Filler」な回として評価する人もいるようだ(XのTL調べ)。テペンというその場限りのゲストキャラとの追いかけっこに冗長さを感じたのだろうか。

ポケットモンスター(2023) EP28「ぬすまれた宝もの」

個人的にはそれまで完全に非戦闘要員だったミブリムの能力の片鱗が観られたという点で掘り下げ描写があると思ったけど、大筋の部分では確かになくてもいい話だったのかも。

アニポケという枠を外してみれば、確かに「Filler」な話は少ない方が見ごたえがある作品になる。一話一話に意味を持たせることで視聴者の興味を維持しつづけるのは商業作品として正しい在り方だ。

その意味でHZの競合は長期アニメではなく深夜帯のクール制アニメになるのかもしれない。「Dr.STONE」や「葬送のフリーレン」など話題になるアニメには「Filler」が少ない…少なくとも往年のアニポケよりは。

「葬送のフリーレン」(2023)

往年のアニポケは言ってみればベールに覆われている状態だった。「そういうもの」として扱われていた時はある種守られていたが、これからはもっと広いステージで戦っていくことになる。

一視聴者としては…寂しくもあり誇らしくもある。アニポケがここまできたかというのが率直な気持ちだ。「日常回」は遠くになりにけり…To Be Continued

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