「 Refining  → to the future(精製さを未来へ・・・) 」   ☆002

僕は、個人事業主で「清掃業」を営んでいる。
清掃業と言っても、主に週に4日。
軽自動車に掃除道具を積んで、委託された現場マンションをまわり、管理人さんが常駐していないマンションやハイツ、アパート 等の共用スペースを掃除する。巡回日常清掃。
 
― 散って飛んで来た、桜の葉の後始末 02 ―
 
廊下の端には溝があるので、モップを軽く絞らなくても良い。
モップ入りのバケツを置くと、勢いよく「バシャーン」とモップを床に着けた。
僕は、この時になぜだか、少しの快感を覚える。仕事とはいえエントランスホール内と違って少し無茶が出来るからだ。
それと、この「バシャーン」と音が良い。
床面には模様が入った「防滑性ビニル床シート剤」で仕上げてあるので、少しの抵抗がある。
強引に「グイッ。グイッ。グイッ。」と押した。
桜の葉が、磁石のN極とS極の様にモップに吸い付く。
(ふっふー。よしっと、取れた!)
そして、またジグザクに階段を昇り降りすると、次にサッカー教室で着いたと思われる1階まで来た。
(あれ? 何で?)
砂利と砂は、各号室の前から、やや2~3メートルから付いている。
(さっきは気が付かなかったけど、どうやってここまで帰って来たんだろう?・・・・)
(飛んで来た? 何で?)
(エントランスホールには付いていない。謎だ)
駐車場に出れる裏ドアはあるが、そこにも砂利と砂の跡はなかった。
おもむろに廊下の塀の外を覗いて見た。高さは約1・5メートル。駐車場に面した花壇がある。
(乗り越えて来るか? わざわざ? ん~・・・・まあ・・・・いいか。モップしよう)
「バシャーン」の音を快感しながらモップで拭いた。
エントランスホール内と違ってバケツの中の汚水は、砂利と砂、そして今に飛んで来たと思われる桜の葉でドロドロになった。
建物内が終わった。
(次は駐車場内と駐輪場、バイク置き場だ。)
 
 
先に、各一世帯に駐車場が1台。25台分のスペースの駐車場内をぐるりと回った。
これと言って目立つ落ち葉や桜の葉は無いが、側溝には、やっぱり桜の葉が溜まっていた。
(建物の向きのせいか? やっぱ、あるな、うん・・・・。ホースを繋いで、水で流せば良いか)
(ある意味、ホウキで取らなくても良いから、ラッキーだな)
排水会所のフタを開け、自作した無数の穴を空けたバケツを仕掛けた。
そして、側溝に水を流している間に、ゴミ置き場の方を見に行った。
ゴミ置き場内は、管理会社の方が、自ら来て作業してくれる契約だ。
がしかし、清掃業者として、あまり甘えてられないので、「チラッ」とだけは見て、荒ゴミを取る。
そして時には、散水もする。
隅の方に申し訳なさそうに「粗大ゴミ」がチョコンと無造作に置かれている時がある。
それは、冬から春に、そして夏から秋へと、寒暖の差を感じる時が多い。
僕は、そこで毎時期に季節感を感じる。
(また、あった・・・・電気ストーブだ・・・・)
この現場マンションがある〇〇市は、まず市役所に電話を掛け、物やその大きさを告げ「番号」を得る。そしてコンビニエンスストアで「シール」を買って番号を書いて貼る。こういうルールなのだ。
(番号は・・・・あ、ある。不法投棄じゃない。良かった)
不法投棄だと、管理会社に報告しないといけない。
駐車場の側溝に戻って見ると、桜の葉が排水会所の方へ流れていて、バケツに桜の葉が溜まっていっている。
僕は、あっけなさを感じた。
(共用廊下も、こう簡単にいかないかな・・・・)
今度は、駐輪場を見に行った。
とそこへ、幼稚園と保育園に子供を送迎する主婦が、自転車に乗って帰って来た。
遠慮がちに、互いに「どうも~」と言い、会釈した。
(ここの住人さんは、本当に、物静かだな・・・・)
これといって汚れた箇所は無いし、桜の葉も荒ゴミも無い。
屋根のある駐輪場は、硬質塩化ビニル製で、断面が波型の板で出来ている。
その屋根には、何も落ちていない。
(今日は、ラッキーだ)
強嵐の日がたまにあるが、そんな時は、「もっとも」と言っていい程、最悪である。
塩化ビニル製で波型の板で出来ている為、たまに落ち葉や荒ゴミが、止め杭に引っ掛かるのだ。
そういう時はホウキで「ツンツン」とつつかないと落ちてこない。
そして、長年に太陽光に照らされる塩化ビニルは、劣化が進んでおり、時には強く「ツンツン」すると割れるのだ。
割れた時は、「弁償」と言う文字が着いてくる。
管理会社の人は「無理しなくても、良いよ」と言ってくれているのだが、先ほども言った通り、僕は清掃業者だ。そんな訳にはいかない。その時は、何とかして取る。

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