「 Refining  → to the future(精製さを未来へ・・・) 」   ☆003

僕は、個人事業主で「清掃業」を営んでいる。
清掃業と言っても、主に週に4日。
軽自動車に掃除道具を積んで、委託された現場マンションをまわり、管理人さんが常駐していないマンションやハイツ、アパート 等の共用スペースを掃除する。巡回日常清掃。
 
― 駐車場内の珍事 ―
毎月曜日の2件目の現場マンションは、階段が3本あり、1本に各2世帯の号室からなる5階建てである。
僕は、マンションの駐車場に軽自動車を停めると、ホウキとチリトリを持った。
この現場マンションのオーナーさんは、隣の敷地に月極の駐車場を持っていて、管理会社さんとの契約で、その敷地内も「荒ゴミ」を拾う事になっている。
駐車台数は40台。その内の出入り口の手前側の10台をコインパーキングにしている。
(まずは、この駐車場内の荒ゴミ取りだ)
「簡易的に取り除けるゴミだけで良い。」との事だったので、先に済まそうと思った。
何でもそうだと思うが、
 
仕事は → 簡易的な作業を先に! が僕の頭の中にはある。
 
タバコの吸い殻、空き缶とペットボトル。コンビニエンスストアの袋。最近になって、あまり落ちているのを見なくなった使い古したマスク。等を拾って周った。
(さっきと違って、桜の木がないから、落ち葉はないな・・・・)
(コロナ禍の時は、よくマスクを拾ったけど・・・・そう言えば、見なくなったなあ)
(あの時は、嫌というほどよく見かけたなあ。見ないという事は、安心した世の中になった。という事か? 世界平和っと)
近くにコンビニエンスストアがあるせいか、カップ麺の残り汁にお箸を2セット。チューハイの空き缶を3缶。見つけた。
(コインパーキングに、停めた人かな・・・・)
近くに丸めてポイされたレシートも見つけた。
(あ、そこのコンビニか・・・・。いつだ? うん。昨日の夜か・・・・)
コロナ禍と違い、今では素手で触れる。
カップ麺の残り汁を側溝に流した。そして、ちょっとした探偵気分になった。
(ここの車止めに腰を下ろし、んで、互いに、2人で向かい合わせに、うん。食べた。っと)
(んで、レシートには、カップ麺とチューハイが2セットと・・・・。ん?)
(んじゃあ、3本目のチューハイは? いつから? この時じゃないのか?)
空き缶が風でコロコロと流れて、月極の駐車場の車に当たり、それが問題になった事がある。
僕はそれ以来、空き缶には慎重になった。
(・・・・先週には無かったような)
探偵気分を途中で止めて、先を進んだ。
月極の空いているスペースの車止めにバーベキュー用の網と「炭」と書いてある段ボールが置いてあった。そして、その横にビーチサンダル。
(ん? ここ(月極)は、とりあえず「満車」のはず・・・・置いて行ったのか?)
勝手に触ると、ややこしくなりそうだったので、そのままにしておいた。
そして、目立つような簡易的な荒ゴミを見つけては拾い、進んだ。
(ん? どうしたんだ?)
一番奥の駐車スペースで、前に進んでは、バックしている車を見た。
(入口は一カ所。出掛けるなら、こっちに向かって来るはずなのに・・・・)
その車は、また前に出て、今度は「ピッ」とクラクションを鳴らした。
ため息交じりに、僕は近づくと、
「どうしたんですか?」
声を掛けた。
運転手は、高齢者の女性だった。
「何か、車のトラブルですか?」
バックさせてハザードを点灯させた。
(ハザードは、いらないと思うけど)
助手席側の窓ガラスが開いた。
「あ、どうも。明日免許の更新で、練習を。ええ。はい」
それだけ言うと、窓を閉めてしまった。
(あ、ああ。そうなんだ・・・・でも・・・・練習って)
そして、ハザードを点灯させたまま入口の方へ車を進めると、そのままバックして来た。
(あっ! ああ危ない。ああ練習か・・・・)
僕は、あっけにとられた。
そして元の駐車スペースに入れる時に、また「ピッ」とクラクションを鳴らした。
(クラクションを鳴らす意味って、あるの?)
助手席側の窓ガラスが開いた。
「管理人さ~ん! ちょっと見ててくれる? 分からなくて、バックが」
(何が、分からないんだろう・・・・)
「え? あ、ああ。良いですよ。見てますよ」
(僕は管理人じゃないけど・・・・)
バックするのに邪魔にならない場所に立った。
その車の左側にはセダンタイプが駐車。そして右側は壁。
「ピッ」「チッカ、チッカ、チッカ」「ピッ」
連動するかのように、聞いて、見た。
「クラクションが、鳴ってますけど?」
「へ? ああこれ? 手が当たるの。バックする時とか」
(ああ、当たるんだ・・・・)
「でも買い物とか行って、駐車場内で鳴ったら回りは、びっくりするよ?」
「うん。よく言われる」
(あ、言われてるんだ・・・・)
「どうしたら、当たらないかな?」
僕は少し覗き込む格好で運転側を見た。
高齢女性は、「ハンドルをこのように動かしています」と見せた。

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