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ぼん

ピタリと1年前の記事の下書きが残っていた。
嫌な記憶の記事だ。この記事の下書き以降noteに触れずのまま更新を忘れていたのであろう。
姉からの連絡でこの存在を思い出した。1年前のこのタイミングで残した下書きがこの形で再び出てくるのは光栄だ。

↓↓↓以降1年前に記した記事

日本代表がW杯にて素晴らしい功績を残した。
ベスト8の壁はやはり高かった。今大会もベスト16止まり。
だが今までのベスト16とは明らかに違う“何か”を残した大会として国民に刻まれた大会となった。

感覚

数年前に愛犬を失う際に感じた感覚に近いものがある。
姉家族の家にやって来たわんこの名前は“ぼん”と言う。
とても可愛らしく、小さな小さなわんこだ。
種類はカニンヘンダックスフンドという犬種。カニンヘンとはドイツ語でウサギと言う意味があるそうだ。
犬なのに、ウサギ、、、ウサギイヌとでもいうのか…
そう言われると、ぼんの仕草はまさにウサギのようだ。どこもかしこもぴょんぴょん飛び跳ねるように動き回る。相手をしないようであれば悲しそうなつぶらな眼差しを送ってくる様子も伺える。

そんなぼんが闘っていたのだ。
かれこれずっと酸素室で生活している。
どういう流れかははっきり分からないが、母からの一報を受けた。
「ぼんがかなり危ない状態やねんて。」と。
前日に姉がぼんの異変を感じ、夜間病院へ連れて行っていたのをSNSで知っていた。
問題は無いと診断された翌日の出来事だ。

記憶

わんこはいかなる場合も急変する生き物なのか。
何よりも恐怖心があふれ出てくる。
大切な存在を失う恐怖だ。
しかしそんな事は感じる余裕も無く、輸血が必要な状況まで達していた。
姉家族に加え、母、自分もドナーを探す動きをした。

私が想像しているよりも早くドナーが見つかった。
元より、姉の知り合いのわんこだそうだ。
人の縁とはいつ繋がるか分からないものだ。

カニンヘン

“免疫介在性溶血性貧“という病気が疑わしい。との話だ。
早速輸血の為入院。
輸血開始後、直ぐに心停止したそうだ。
再び恐怖心が私を襲った。ゾッとしたものだ。
一瞬にして、感情が空になった。
しかし幸いにも、獣医の5分強に及ぶ心臓マッサージにて心臓が自活したのだ。
まだぼんが頑張ると自ら意思を表すかのような出来事に混乱した。
その報告を受け私はその先、軽快に回復に向かえるものだと思っていた。
恐らく携わっていた獣医以外は皆そのような安直な考えになってしまったに違いない。
その後は1週間にかけてぼんが“数値”を上げる為に闘っていた。
上がるようで上がらない数値。何度も繰り返すステロイド。
挙句の果てには痙攣を起こし、鎮静剤を投与。食事は点滴から。
毎朝、毎晩、病院からの報告を恐れる日々が続いた。
さぞ姉一家は地獄を感じていただろう。

限界かと思うと、数値が安定し。かと思えば痙攣を起こし、また諦めかけた際には獣医からまだ早い。と言われ。
最後までウサギ(カニンヘン)のようにぴょこぴょこと混乱に混乱を生じさせたぼんだった。

存在

朝は雨が降っていた。
嫌な朝だった。ぼんの訃報が入った。
よく頑張ったのだろう。正直なところ、私もパンクしていた。
腫れぼったい目にさらに涙が溢れる。雨の存在が疎ましくも清々しくも感じた。
受け入れるしか無い。やはりぼんが居ても居なくとも、今日も平然と時間は過ぎていった。

よく頑張った。と心からぼんに贈ろう。

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