羽生結弦選手単独ツアー「RE_PRAY」埼玉感想③【ホプレガ〜MEGALOVANIA】
トロッコ問題
リンクにドット絵のキャラクターが映し出されました。
羽生選手をモチーフにしたキャラなのか?
ゲームのキャラクターらしき人物が、剣を手に次々と現れる敵を倒していきます。
レトロゲーム調の音楽と荒いドット絵、敵を倒した時に流れる効果音。
初めて見る映像なのに、初めてじゃないような不思議な感覚。
全てが懐かしく思えました。
私が小さい頃よくやっていたゲームの雰囲気そのままだったからかもしれません。
羽生選手らしきキャラは、剣を使うだけでなくジャンプでも敵を倒していきます。
そのジャンプがまさにフィギュアスケートのジャンプの飛び方で。
くるくる回ってすごく可愛いんです。
羽生選手なら、剣を使うよりジャンプの方が攻撃力高そう。
先程までの緊迫感ある雰囲気から、ゲーム画像になったことで少しほっこり感が出ていたように思います。
鳥かごのような入れ物が2つ、スクリーンに映し出されました。
左のかごには5つ、
右のかごには1つの光の球のようなものが入っています。
スイッチを押せば5つ、そのままなら1つが救われると。
ここで、急に観客に向けて問われます。
「スイッチを押しますか?」
…え?
一瞬、会場全体に戸惑いが走ったと思います。
私達が聞かれてるの?
何しろ初見なので一体どうしたらよいか分からず、私は隣の友人と顔を見合わせました。
「YES!」「NO!」って声を上げればいいの?
いや、皆が口々に言っても訳が分からないか…。
「プロローグ」の時みたいに自分で色を変えて意思表示ができるバングルもないし…。
質問を投げかけられた時間はほんの数十秒のことだったと思いますが、変に焦ってしまいやけに時間が長く感じたことを覚えています。
この出来事も今までの既存のアイスショーにはなかった新感覚でした。
やがて「YES」が選ばれて、
鳥籠の中の5つの命が救われ、もう一つの命が奪われていきました。
私は現地では全く気が付かなかったのですが、これは「トロッコ問題」をモチーフにした問いかけだったそうですね。
調べてみるととても奥が深い話のようで、
また機会があればこの選択について語ってみたいですが、今はとりあえず感想を先に進めます。
Hope&Legacy
聞き覚えのあるピアノのメロディが流れ始め、すぐに「Hope&Legacy」だと分かりました。
いつもの青と緑の衣装に身を包んだ羽生選手が、優雅な舞いを披露してくれます。
プロジェクションマッピングはおおむね「GIFT」の時と同一のようでした。
「GIFT」の時も思いましたが、この「Hope&Legacy」はプロジェクションマッピングと合わせて観ると本当に最高です。
音楽が盛り上がって太陽が昇っていくところが特に好きです。
片手を挙げて羽生選手が演技しているところは本当に彼の身体から太陽が昇っているんじゃないかと思ってしまうほど。
競技時代の「Hope&Legacy」を私はリアルタイムで見ていなくて、ファンになってから「フィンランドの奇跡」と言われる2017年世界選手権の動画で見てすっかり感動して、ますます沼にハマっていったことを思い出します。
その奇跡のプログラムが、ここまで進化するとは…。
一体誰が予想できたでしょう。
先程、プロジェクションマッピングと合わせて観ると最高と書きましたが、
私が感じたあの深い感動は、プロジェクションマッピングや照明という新たな演出がついたことだけでは説明できません。
2017年の世界選手権において、当時の世界最高得点を出して大逆転優勝したというドラマティックな過去を持つ「Hope&Legacy」。
「Hope&Legacy」が持つ偉大な歴史という尊さがずっと保たれつつ新たな手が加えられて進化しているところに私は感動するのだと思います。
羽生選手のやる事には全て意味がある気がします。
過去の栄光も挫折も切り捨てずに受け入れながら未来に向かって歩んでいく羽生選手は、自分のプログラム1つ1つを大切にしてアイスショーの演目に組み込んでくれる。
大会が終わったらもう封印、もう滑りません、ということがないんですよね。
もしプログラムに命があり魂があるとしたら、絶対喜んでいるはず。
いつまでも忘れずに大事にされ、生かされている訳ですから。
しかも今回は「RE_PRAY」という物語を語るうえでのひとつのピースとなって存在している。
プログラムに何通りもの意味を持たせて滑るという発想がまず驚きだし、
そうやって長くプログラムを大事にする羽生選手の考え方が、私は大好きなんです。
MEGALOVANIA
前回書いた感想の中で、「鶏と蛇と豚」は私にとって
「一生心に残る演技」
と書いたんですが、
それは現地でプログラムを2回見て
CS放送で何度も何度も繰り返し見てジワジワと感じていったことです。
初見では解釈が難しかったというか、
ただ羽生選手のかっこよさに圧倒されていただけという感じでした。
でも、「MAGALOVANIA」は違いました。
たまアリの現地で見た時から、直感的に
「あ、これは私が好きなプログラムだ」
と思ったのです。
あれこれ考える必要も無く直ぐに答えが出た、という感じです。
この感覚は、
「プロローグ」で「いつか終わる夢」を一番最初に見た時に思ったことと全く同じでした。
そしてその気持ちは時間が経った今もずっと変わっていません。
もし「RE_PRAY」で一番大好きなプログラムは?と聞かれたら、
私は即答で「MEGALOVANIA」と答えます。
多分一番長くなりそうな感想なので、私が感じた好きポイントに番号をつけて語りたいと思います笑
①スケートの音
無音の状態で始まる演技が最高にかっこいいですよね。
(ジャッ、ジャッ)
(ゴォーッ)
(カツン!)
(シュルシュルシュル……)
羽生選手が生み出すスケートの音しか聴こえない、極上の時間。
滑る音、回る音、打ち付ける音、止まる音。
あらゆる音を駆使して演技していると理解した瞬間、
私は1つの音も聴き逃すまいと、全神経を耳に集中させ感覚を研ぎ澄ませました。
羽生選手の演技は見ているこちら側の能力までも上げてくれるのかもしれませんね。
視力を上げたり聴力を上げたりするために、全集中しろ!と私の脳が身体へ命令するのです。
まるで鬼滅の刃の世界笑
氷を削る音で表現するという着眼点が斬新で、流石です。
羽生選手は、音楽が鳴っていなくてもリンクの上で感動を生み出せるのですね。
②サウンドが好み
曲の始まり方も最高にかっこよくて。
手を後ろに組んで俯いている羽生選手のシルエットが浮かび上がり、
イントロを少し聴いただけで一気に私の心は引き込まれました。
この「MEGALOVANIA」という曲、私はUNDERTALEは未プレイですので現地で生まれて初めて聴いたんですが、
メロディーラインといいリズムといい本当にかっこよくて好きです。
よくあるバトルの曲っぽい感じではありますが、何と言うか曲の中に1音も無駄が無い、全てピタッとハマる完璧さがある曲だと思います。
私の心に何の躊躇いもなくストンと落ちてきてくれました。
ゲームの曲というのは、実際そのゲームをプレイして世界観の中に没入し、何十回も繰り返し聴くという体験が思い出として自分の中に残っていくものです。
私は再三このnoteで「いつか終わる夢」という曲が好きだと語っていますが、
その理由は実際にFF10をプレイしてキャラクター達の冒険物語を疑似体験し、「いつか終わる夢」がBGMで流れる中悲しく切ない戦いを繰り返したという経験をしたからこそ感じる想いがあるからです。
だけど、この「MEGALOVANIA」には事前に何の思い入れも無いのにも関わらず、イントロを聴いただけで「この曲、好きだ」と思いました。
後から調べたら、「MEGALOVANIA」のファンは本当にたくさんいるのだと知りました。世界中に。
…凄い曲です。
やっぱり、人気が出る曲というのは何か大きな力が宿っているものなんですね。
全く知識も情報もなく初めて聴いた私をいとも簡単に落としてしまうのですから。
③とにかくかっこいい(語彙力無し)
そんな最高にかっこいい曲をBGMに、
最高にかっこいいスケートを滑る人が演技したら、
そりゃあ最高のプログラムになるというものです。
(書き方がしつこい笑)
④衣装
羽生選手の衣装もまたゲームオタクの心に刺さるデザインだったと思います。
モニターの中のドット絵で剣を振りジャンプで敵を倒していた羽生選手のキャラと全く同じ衣装を着ている羽生選手は、3次元だけど2次元の人みたいでした。
肩当てがついている衣装を着てコスプレっぽくならないのは、羽生選手がもともと持っている2次元の雰囲気のお陰なのか?それとも私の目が盲目なだけなのか?
大袈裟になりすぎず羽生選手に似合う絶妙な衣装をデザインした方も大変素晴らしいですよね。
⑤プロジェクションマッピング
プロジェクションマッピングが圧巻でした。
迫力ある光彩、目が眩むようなぐるぐる回る光の中で羽生選手もぐるぐる回る…
様々な色や効果がとめどなく押し寄せてくるので頭の中が情報過多になり、見ている者をトランス状態にさせるようなそんなプロジェクションマッピングでした。
骨が降ってきたのを見た時は「え?なんで骨?」と目が点になりましたけど。
これも後に重要な意味があると分かりましたが。
⑥緩急のあるスケーティング
羽生選手はこのプログラムほぼ全般スピンしていましたね。
スピンは優雅に見えて実はとても体力を使うと聞いたことがあるので、羽生選手のスタミナは相当すり減っていたはずです。
体力を削りながらも美しいスピンをし、緩急の効いたスケーティングで魅せてくれる羽生選手。
そう、このプログラムの中で私が特別好きなところは何かというと、羽生選手の緩急のついたスケーティングです。
ぐるぐる激しく回るスピンの合間合間にゆっくりとただ滑っているその瞬間、
緩急の「緩」の部分に私は不思議と魅力を感じてしまって。
スピンの繋ぎでしかないのかもしれないけど、私の心が引き込まれる何かがありました。
上の席から俯瞰していたからこそその緩急を感じられていたのかもしれません。
絶妙に音楽に合った羽生選手のスケーティングを見ていると別世界に連れて行かれるような、そんな不思議な感覚になります。
⑦ノイズ
曲の途中で突然挟み込まれるノイズもとても良かったですね。
効果音とモニターにノイズが走り、スピンする羽生選手が一瞬黒いシルエットになるところです。
ここにも深い意味があることは後に知るのですが、
初めて見た時から「面白い!」と思ったところです。
緊張感が増して曲が良い感じに締まる、クールな場面でした。
⑧瞬間移動
また、とっても魅力的だったのが曲のブレイク部分。
伴奏が止んでメインテーマのみが流れる中、羽生選手がリンク上で手を後ろに組んで俯きます。
曲の始まりのポーズと一緒。
すると効果音とともに
会場のあちこちに設置してあったモニターに羽生選手が映し出されました。
後に分かったことですが、これは「UNDERTALE」のキャラクター「サンズ」の瞬間移動能力を表す演出だということでした。
暗闇の中、思いがけないところから突然現れる羽生選手。
開演前に会場内をオペラグラスでしっかり観察したはずなのに、実はたくさん設置されていたモニターに全く気づいてなかったので、新鮮な驚きがありました。
どこのモニターに映し出されるかはランダムだったと思うので、羽生選手が意外なところから現れる度にビックリしてあちこちキョロキョロしていました。
すごく面白い演出でした。
考えた人(MIKIKO先生ですかね?)すごいです。天才です。
⑨ラスト部分
そして最後の最後、大きく「MEGALOVANIA」と表示されたモニターをバックに決めポーズを取る羽生選手が、ものすごくかっこよくて。
まるで映画を見ているような感覚になりました。
映画でもよくありますよね?エンドロールにタイトルがバーンと出てきて終幕するパターンが。
あのかっこよさをアイスショーで味わうとは!
4曲目でありショーの前半途中ではありますが少しも緩むことなく、逆に興奮度が爆上げされたプログラムでした。
以上が私が感じた「MEGALOVANIA」の好きポイントです。
見ていて本当に楽しかった。
あまりに良すぎました。
だからこそ今思うのは、
まだツアーが終わってないのに気の早い話ですが、横浜公演のあと2回でこのプログラムが見れなくなってしまうのは悲しい。
また是非どこかで再演してほしいと思います。
「プロローグ」で「いつか終わる夢」、
「GIFT」で「あの夏へ」と「阿修羅ちゃん」など、
羽生選手がプロ転向していくつかの新プロが誕生しましたが、
すべて後に再演されているのですよね。
「いつか終わる夢」は単独公演でしか再演されていませんが、
「あの夏へ」と「阿修羅ちゃん」はSОIで演じられていました。
羽生選手は、これらのプログラムを初演の時とは違う新たな意味と生命を吹き込んで私達観客に届けてくれました。
今回の「RE_PRAY」でお披露目された新プロは
「鶏と蛇と豚」「MEGALOVANIA」「破滅への使者」の三つ。
(「いつか終わる夢RE」は元プログラムのアレンジなのでとりあえず省きます)
どのプログラムもずっと長く演じて欲しいけれど、私は中でもこの「MEGALOVANIA」の再演を推したいですね。
そのくらい大好きなプログラムになりました。
「Hope&Legacy」の項にも書きましたが、
羽生選手はプログラムを演じて終わりではなくて
「この子」と呼んで長く大事にされる方ですので。
「RE_PRAY」ツアーが終わった後も、きっとまたどこかで新しく生まれ変わった「この子」達を演じてくれると思っています。
続きます。
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