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【伝説】

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たまたま行った、大分県豊後大野市にある内山観音。 そこに伝わる伝説に魅了されました。 これからも色々な伝説を小説風に記録していたいと思います。
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#真名野長者

【伝説Re:02】「真名野長者伝説」③長者誕生

蓮城法師二人は毎日黄金を拾い集めた。あっという間に長者になった。 「真名野長者」と呼ばれ、その名は遠方にまで知れ渡った。 当然、沢山の人々が黄金を手に入れようと集まって来た。しかし、その人々が見つけるものはただの石ころばかりだった。 小五郎が行く場所には黄金があった。 小五郎は、真名野長者となってから、信仰を深め、唐の天台山に黄金三万両もの大金を贈った。 欽明天皇の世、天台山より返礼として、百済の僧の蓮城法師に薬師、観音の尊像を持たせて小五郎のもとに派遣した。 小五郎は蓮城法

【伝説Re:02】「真名野長者伝説」① 出会い

玉津姫 奈良の都の久我大臣に玉津姫という娘がいた。 姫は、顔形は整っていたが、顔一面にアザが出来ており、縁遠かった。 姫は、アザを治したいと、「三輪明神」のお告げがある事を信じて、「丑の刻参り」をはじめた。お告げ ある大雨が降る日の夜、社殿で雨宿りをしていると、「豊後の国に、炭焼き小五郎という者がいる。この者と夫婦になれば、末は長者になるであろう」とお告げを頂いた。 翌年2月、16歳になった姫は、密かに都を抜け出し、豊後の国へと下った。白髪の老人 玉津姫と侍女は、ようやく豊後

【伝説】「真名野長者伝説」⑥生と死

暫くして、般若姫が都へ旅立つ日となった。皇子の言う通り、幼い玉絵姫を長者夫婦に託し、大小の船百二十隻、千人余りが同行して豊後臼杵が浦より出航した。長者夫婦は般若姫との別れの際、一寸八分の黄金の観音像を手渡した。出航してから順調だった天気は、周防の国の平群島付近で大暴風雨にあい、多数の人が死んでしまった。嘆き、悲しんだ般若姫は、自ら荒れ狂う海の中に身を投げた。すると、海は穏やかになり、雲がスーッと消え去り太陽が輝いた。般若姫は、海から引き上げられた。しかし、間も無く息を引き取っ

【伝説】「真名野長者伝説」⑤山路の正体

山路は、立派に流鏑馬の古式を披露し放生会は滞りなく行われた。そして、般若姫の婿となり、しばらくの間般若姫と山路は幸せに暮らした。家族全員が参加している般若姫ご懐妊お祝い会の席で、突然「八幡神」が出現し「皇子よ早く都に戻るのだ天皇が危篤だ」と告げた。長者も般若姫もその場に居た全員が驚いた。山路の正体は、欽明天皇の皇子、橘豊日皇子(後の用明天皇)だった。山路は、いや皇子は、般若姫との別れが辛かったが、勇気を出して言った。「もし、生まれた子が男の子だったら連れて上京しなさい。女の子