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【伝説】

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たまたま行った、大分県豊後大野市にある内山観音。 そこに伝わる伝説に魅了されました。 これからも色々な伝説を小説風に記録していたいと思います。
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#大分県豊後大野市

【伝説Re:03】「真名野長者伝説」⑥生と死

暫くして、般若姫が都へ旅立つ日となった。 皇子の言う通り、幼い玉絵姫を長者夫婦に託し、大小の船百二十隻、千人余りが同行して豊後臼杵が浦より出航した。 長者夫婦は般若姫との別れの際、一寸八分の黄金の観音像を手渡した。 出航してから順調だった天気は、周防の国の平群島付近で大暴風雨にあい、多数の人が死んでしまった。 「天よ我の命と引き換えに静まれたもう」 嘆き、悲しんだ般若姫は、自ら荒れ狂う海の中に身を投げた。 すると、海は穏やかになり、雲がスーッと消え去り太陽が輝いた。

【伝説Re:03】「真名野長者伝説」③長者誕生

BGMを聴きながらお楽しみください 蓮城法師二人は毎日黄金を拾い集めた。 あっという間に長者になった。 「真名野長者」と呼ばれ、その名は遠方にまで知れ渡った。 当然、沢山の人々が黄金を手に入れようと集まって来た。しかし、その人々が見つけるものはただの石ころばかりだった。 小五郎が行く場所には黄金があった。 小五郎は、真名野長者となってから、信仰を深め、唐の天台山に黄金三万両もの大金を贈った。 欽明天皇の世、天台山より返礼として、百済の僧の蓮城法師に薬師、観音の尊像を持た

【伝説Re:03】「真名野長者伝説」②奇跡

BGMを聴きながらお楽しみください 炭焼き小五郎玉津姫が目覚め、身支度をして出かける。 老人に案内された場所は、みすぼらしい小屋だった。老人が「小五郎はすぐに帰って来るだろう、ここで待っていなさい」と言った途端、どこかに消えてしまった。 しばらくすると、手足が汚れ、ボロボロの着物を着た若者がやって来た。 姫は「小五郎さん?」と尋ねると、若者は「そうです」と応えた。 姫は、三輪明神のお告げによって会いに来たこと、ここまで案内してくれた老人のことを話した。 小五郎は、「

【伝説Re:03】「真名野長者伝説」① 出会い

BGMを聴きながらお楽しみください 玉津姫 奈良の都の久我大臣に玉津姫という娘がいた。 姫は、顔形は整っていたが、顔一面にアザが出来ており、縁遠かった。 姫は、アザを治したいと、「三輪明神」のお告げがある事を信じて、「丑の刻参り」をはじめた。 お告げ ある大雨が降る日の夜、社殿で雨宿りをしていると、「豊後の国に、炭焼き小五郎という者がいる。この者と夫婦になれば、末は長者になるであろう」とお告げを頂いた。 翌年2月、16歳になった姫は、密かに都を抜け出し、豊後の国へと下