妖怪がメンタルクリニックに行くお話
シュールな化物語は続く。
身も心も妖怪と化した俺は
相変わらずの大混乱。
理性の防波堤を余裕で飛び越えて来る
真っ黒い津波に飲み込まれていた。
歯が抜けるほど泣いて乱れたおっさん…
我ながらアウト、アウトです!
マジで人間に戻りたい。
このままじゃヤバい。
すがる気持ちで
彼女の通っていた精神科に電話する。
彼女が亡くなった分、
必ずその枠は空くはず。
俺は先生とも付き添いで何度も
お話してるので行けるはず。
すぐに見て欲しい。話を聞いて欲しい。
だが、答えはNo!!!
信じられない事に2ヶ月待ちだった。
馴染みの病院はおろか
10件以上電話して
どこも新規の受付は
最短予約で1ヶ月後。
「はい??」
心の中が大量の出血しているのに
話にならない…。
その1ヶ月を生き延びれる自信がない。
怪我とか体の病気ならどこでもすぐに
検査行けるのに…。
もうこれはやっぱ死ねってフラグなの?
いのちの電話にも初めて電話した。
3回電話して3回とも繋がらない。
110番、119番は繋がるのになぜ?
心と体を大切に、なんていう割に
心の救急車はない。
この国の自殺者数は世界でもトップクラス。
本気の人を止める事は難しいのわかる。
でも俺のような当時
「ふわっと一線を越えそうなやつ」は
違うと思う。
そういう意味の駆け込み寺、緊急避難所は
欲しいなーと振り返り思う。
あるにはあるのかもしれないが
少なからず一般的に浸透はしていない。
俺は自死の衝動だったけど
人によってはこれ無敵の人みたいに
なっちゃう可能性もありえるなーと思う。
人間何で狂うかわからない。
だから狂うんだね。
ほうぼうに電話をし、最終的に保健所に回され即日受け付けてくれる精神科を探してもらった。
これだけでもメンタルヤバいやつに
やらせるのハードル高い。
少なくとも俺はきつかった…。
紹介された町医者は
処方箋バンバン出す所だった。
失礼だけど、いわゆる患者さんに必要以上に薬出して、それで点数を稼ぐようなタイプなのかなーとか感じた。
でも仮にそうだとしても他に行く場所がない。
即日受け付けてくれない。
この病院に限らず
そもそも初対面で話を聞くにも
限界はあるだろう。
相手は俺みたいに
何かしらメンタルやってる人だから
余計にね。
必要処置として、応急処置として
念には念をもって、だからこそ薬を
多く処方するのかなとも思えた。
どちらにせよ、いのちの電話くらい、いつでもちゃんと繋がる世の中であって欲しいものですね。
そんなこんなで俺には適応障害の名がつけられ、無事に??安定剤と睡眠薬を処方してもらった。
後日、俺は即日対応で
薬を処方してくれた医者とは別に
彼女の通っていた近所のクリニックを
改めて新規のカウンセリング込みで受診した。
それは受診の為というより
彼女の最後の診察と様子を確かめたかったからだった。ゆっくり先生と話をしたかった。
部屋に入った時、先生も幾分か堅い表情だったのを覚えてる。
それもそっか。
俺達はすぐに話
その流れで
なぜ新規の受付が難しいかも聞いた。
先生曰く、やはり普通のお医者さんほど
余裕をもって患者さんに対応をするそう。
考えてみれば当たり前か。
しっかりと迎え入れる状況でなければ
そもそも治療ができない。
精神の病は人による症状差が著しい。
それを踏まえると新規の受付って
慎重にならざる得ないんだろうか。
彼女が通っていたクリニックの先生は
付き添い時代から見ても良い先生だった。
俺の悲しみ、質問にも真摯に向き合ってくれた。
「もしかして君は彼女の事を聞きに来たの?」
俺:「はい。少しでも彼女について知りたくて」
先生:「そういう話ならカウンセリングの料金いらないよ。普通受診扱いにしなくちゃ」
先生、良い人。
俺はもうなるべく来ません、とちゃんとお礼をしてクリニックを後にした。
こうして俺は妖怪から何とか人間にとどまる事が出来、無事に「適応障害の人」になりました。
徒然と心あるまま。
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