売りから入る株式投資

 2024年1月13日(土)

 石川県を始めとする北陸地方で激甚災害が有った事を尻目に、一昨日は日経平均が33年11ヶ月ぶりに前日比608円高の終値35049円と、遂に35000円台に登り詰めました。
 そして昨日も527円高の35577円と、更に高値を更新し続けています。
 そんな時に、「売りから入る」等と言うと、99.9%の人が、「お前馬鹿じゃねえの」、と、仰るでしょう。

 然し乍ら、やれ少額NISAだの、やれ新NISAだのと、個人投資家に支店窓口であれやこれや株高を理由に「現物買い」する事を奨める一方で、大手証券会社の別働隊や或いは機関投資家の連中が、こんな指数爆上げの時に、空売りする事に余念が無いのをご存知でしょうか。

 その上、それで稼いだ金を激甚災害を被った被災地に届けるのならまだしも、更にその資金で他の銘柄にも「空売り」を仕掛け、その裏では窓口で個人投資家に、それ等「空売り銘柄」の「現物買い」を奨める彼等。

 そうした事を述べると、それは少し歪んだ考えじゃないのか、と非難されるかも知れませんが、それはそれとして、前述したように機関投資家の立場から株式投資と言うものを考えてみれば、「売りから入る」と言う考え方も有ると言う事は理解出来た。
 と、そう読者の方々に思って戴くだけで、それだけで私のこの文章も報われます。

 また、証券会社の窓口や或いは投資セミナー等で奨められる銘柄を、言われるがままに買わないで戴きたいのです。 
 そしてたとえ「売り」から入らなくとも、買い方目線だけでなく、売り方目線で株式投資を見詰め直して戴ければ、それだけでも私に取って幸いです。

 ところが数多有る証券会社のうち、一社も初心者に「空売り」を奨めないのは何故か?

 こんな格言があります。

 「買いは家まで、売りは命迄」、と。

 つまり「空売り」は、「買い」のように家を取られるだけでは済まずに、命迄取られる程危険だと言うことです。

 と、言うのも、「空売り」に引き換え「現物買い」から入れば、どんな銘柄の株でも、例えば売らずに10年間持つと、倒産さえしなければ、通貨価値が上がるに連れ、必ずその銘柄の株価も上がるから、奨めるなら「現物買い」が無難なのです。
 
 そして株価が下がった際、窓口の証券マンは、必ずこう言うのです。
 「少し下がったかも知れませんが、売らなければ必ず上がります!」

 当たり前です。
 
 しかしだからこそ、窓口の証券マンは、絶対に「売りから入りましょう」等とは、口が避けても言わないのです。
 下手に信用取引をはじめさせて、初心者に入口で大損させてしまえば、それこそ社を揺るがす大問題になり兼ねません。
 だから窓口の証券マンから、「空売り」を奨められる事など、天地がひっくり返っても無いのです。

 ただ、私は初心者の頃、それが不思議で仕方ありませんでした。

 また、株にはこんな格言も有ります。

 人の行く裏に道あり花の山、何れを行くも散らぬ間に行け。

 と、その格言によれば、窓口の証券マンの言う事や、セミナーで言っている通りに投資をすれば、人の行く方向に自分も付いて行くことになり、それではせっかく桜の木を見付けても、既に花は散ってしまっていると言う事になります。

 つまりは「機会の喪失」です。

 窓口の証券マンや投資セミナーでは、絶対に、この「機会の喪失」には触れません。

 奨めた株が仮に「割高」で、値上がりするのに5年掛かろうが、10年掛かろうが、「いやぁ、あの時お奨めした銘柄、5年ほどかかりましたが、倍になりましたね。やはり手放さずに気長に持たれたのが良かったんですよ。配当も有った訳ですから、それを考えたら着実に資産は増えていますよ。良い投資をなさいましたね」、と。

 これを私流に言いますと、「えっ、5年かかって利益そんだけ?それって、5年の間にどれだけチャンス逃してんの?」、と、なります。

 無論、短期売買にリスクは付きものですから、ボーッとしていたら、仮に売りから入っていて株価が下落しても、数時間、否、数分間で利益を失い、再び株価が上昇してしまいますので、危険この上ありません。

 とは言え、本当に売りから入れば、総てのトレードが危険なのでしょうか。

 もし仮に前述したように、その銘柄が一時的にしか下落しないのであれば、その銘柄が大して割高では無かったと言うことです。
 このことは逆もまた真なりで、その銘柄が一時的にしか上昇しないのであれば、その銘柄が大して割安では無かったのです。

 つまり単純な話です。
 売るなら割高銘柄を、買うなら割安銘柄を、と、言うことになります。

 では、どれが割安銘柄で、どれが割高銘柄なのか、判断基準は何なのか、と、言う事になりますが、私の場合、それは、1・逆日歩状況、2・RSI、3・PER、4・ローソク足、によって弾き出します。
 そして最後に、5・その銘柄が決算前の場合は決算が何時発表されるのか、または決算直後の銘柄であれば、決算の結果がどうたったかを確かめます。

 それでは今度は1から順に、それがどういう事なのかを簡単にご説明致しましょう。

 先ずは1・逆日歩ですが、品貸料(しながしりょう)のことで、株式の制度の一つになります。

 これは信用取引で売り建てた借株に対し、貸株料とは別に必要な手数料の事です。
 信用取引の売りは「貸株」により得た株を売り渡して売買代金を預けるため、投資家は貸株料を支払い売方金利を受け取ります。
 ただし、低金利下では売方金利は0%に設定されます。
 ところが売方が受け取る金利(日歩)に対して、制度信用取引では売り長で株不足になった場合に金利を支払わなくてはならない場合があり、これを品貸料と呼びます。
 また証券会社が貸株を調達する一般信用取引での売りには品貸料は発生しません。

 まぁ、簡単に言うと、その銘柄を買いたい人より売りたい人の方が多いので、貸株が品不足となり、通常は発生しない品貸料が発生してしまうと言うことです。
 つまりは売り方に人気の銘柄の事です。

 また、逆日歩にはこんな格言が有ります。

 逆日歩に買いなし。

 これは逆日歩がついた銘柄は買ってはいけないという意味で、信用取引で、売り方の建て玉が買い方の建て玉を大きく上回り株不足となると、逆に買い方が売り方から逆日歩と呼ばれる品貸料を受け取る事ができるため、買い方がいっそう増加する事になります。
 また、売り方は逆日歩の費用がかさむのを嫌い、損失覚悟で売り建てた価格より高値で買い戻すため踏み上げ相場となり価格が高騰します。
 ただし、株不足がいったん解消されると、本来の売り圧力が強まり株価は反転して急落することから、下手に手を出さないほうがよいという意味です。

 ですので逆日歩の付いた銘柄が、逆日歩の解消される日(満額になる日)を狙います。

 次に2・RSIとは、「Relative Strength Index」の略で、テクニカルチャートのひとつです。
 日本語に訳すと「相対力指数」。
 要するに、買われすぎか、売られすぎかを判断する為の指標として利用されています。
 30以下なら売られ過ぎ、70以上なら買われ過ぎと判断します。

 次に3・PERですが、「Price Earnings Ratio」の略で、日本語に訳すと「株価収益率」と表されます。
 株価がEPS(1株当たり純利益)の何倍の価値になっているかを示すものです。 
 現在の株価がその企業の利益と比べ、割高か割安かを判断するのに使われる指標です。

  PERは株価÷EPSの計算式で求められます。
 また一般的に上場企業の場合、PERの値は「15倍」がひとつの水準とされています。 
 日本の企業におけるPERの全業種平均がおよそ15倍であることから、この数字が目安としてあげられているようです。
  PERが小さいほうが、株価は割安ということになりますので、まずはPERが15倍以下であるかどうかに着目します。

 ですので、売りから入る場合は、PERが30倍以上の銘柄を狙います。
 
 次いでローソク足ですが、基本的なチャートも見ますが、私の場合ローソク足を最も参考にします。 
 これは、ある期間の始値、終値、安値、高値の四つの価格をひとつの線で表したもので、 日本で最もよく使われるチャートで、株や為替など様々なな投資商品で用いられています。 
 ひとつのローソク足の期間は1日、1週間、1ヵ月をそれぞれ、日足(ひあし)、週足(しゅうあし)、月足(つきあし)と呼びます。

 特に売りから入る場合、日足で上髭陽線(うわひげようせん)を形成した翌営業日、もしくは翌々営業日が狙い目になります。

 この上髭陽線とは上影陽線とも呼ばれ、大きな上髭の有る陽線のことを言います。  
 つまり、上髭陽線は高値が始値よりも非常に高くなっている陽線です。 
 始値から大きく上昇したものの下落し、最終的に始値を少し上回ると形成されます。

 これが高値圏で形成されると、下落への転換の示唆になります。 
 その日は買い方の勝利であるが、売り方の抵抗が強かった、という解釈です。  
 逆に安値圏では、上昇への転換の示唆になります。

 そして最後に、その銘柄の決算が何時になるのかです。
 決算前なのか、決算直後なのか、或いは決算期と決算期に挟まれた間の期間なのか。

 これはご存知の通り株価は、決算発表の内容だけでなくアナリストの予想も反映するので、アナリストの良い予想を見た投資家が好い決算を期待して投資家が買いに入ると、決算前に株価は上昇しますし、逆また然りで、
アナリストの悪い予想を見た投資家が悪い決算を期待して投資家が売りに入ると、決算前に株価は下落します。 
  加えて、予想を超える良い結果が発表されれば、決算後にも株価は上がりますし、予想を超える良い結果が発表されれば、決算後にも株価は上がりますし、を超える悪い結果が発表されれば、決算後にも株価は下がることになります。
 そのように決算発表は、良きにつれ悪きにつれ、株価に多大なる影響を及ぼすのです。

 但し、私の場合、決算跨ぎ(買いにしろ売りにしろ、決算発表の前日以前から決算発表の翌日迄ポジションを取ること)は絶対にしません。
 何故なら、良い決算にしろ悪い決算にしろ、好材料出尽くしや悪材料出尽くしなどと言っては、実際の決算とは逆の結果が出ることがしばしば起こるからです。

 つまり決算跨ぎはギャンブルなのです。

 なので、例えば決算発表が1月15日の15時であれば、遅くとも1月15日の大引けに一旦ポジションを解消し、早くとも1月16日の前場以後に新たなポジションを取ります。

 さて、ではどう言った銘柄で私が勝負するのか、週明け月曜日・明後日の狙い目銘柄を、明日またこのコラムで御紹介しますので、皆様方、今後共宜しくお願い致します。

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