知らない話の相談にのる話

家族との仲が悪く、学校でも理解しようとしてくれる人がいない。「自分はどこにも居場所がない」。街には同じ想いを抱えた人がたくさんいました。私や友人は居場所をなくした“難民”だったのです。

少女は大人になり、必要なのは特別な支援ではなく「当たり前の日常」だと思うようになりました。それはつまり、向き合うことと信じることです。伴走者として共に考え、泣き、笑い、怒り、すべての少女が「衣食住」と「関係性」をもつことができる社会、暴力や搾取に行きつかなくてよい社会を目指し活動を続けています――。


 さて、そんな活動が県外にあると知って、「自分もそういうことをしたいんだ!」という人が相談に来たのが、今日の出来事です。具体的には、望まぬ妊娠をした女性への支援で、たとえばシェルター活動。DV被害者などを緊急一時的に保護する施設とされていて、調べると「いのちの駆け込み寺」とか出てきたりします(その表現が分かりやすいかな?)。
 補足すると、現在その単語が対象にしているのは女性だけに限りません。福祉の文脈に紐づいて広くなっています。私は専門家じゃないので、簡単に理解してしまうのは避けてくださいね、といっておいたほうがよさそうです。

 相談者はメンバーと共に居住支援のための場所を探しているといいました。2年後には「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されるので、その時を意識して今から団体の形を作っておきたいし、目下活動する上の資金として助成金申請も考えていて、それにはやはり団体としての形が必要だから、まずは定款(団体のルールのこと)を作りたい。でもどうしたらいいかわからない。それで相談に来た。というわけです。話がむずかしかったらごめんなさい。

 団体設立はよくある相談です。こういうのを参考にして作れば良いというのは簡単ですが、正解の対応があるわけではありません。団体によっても、人によっても、その時大事なものは違いますし、相談員の知識・経験・スキルで対応の仕方は変わるのでびっくりです。
 うとく、見識に乏しい私の唯一の足場は、「憑依型の相談員」と評されたことで、とにかくじっくりと話を聞いて、相手と重なり、景色を共有するばかりができることです。

 そんななか、居場所を無くした女性の受け皿が風俗になっている、みたいな話が出てきました。法律上、未成年は親の同意が無いと一人暮らしができないので、家出した女性は住むところが無くなります。そんな女性に対して、風俗の世界には住むところを提供するといったしくみがあるのに、福祉にはそのしくみがない。以前、福祉系の方が「福祉は風俗に負けている」と言っていたことを思い出しました。当人が必要としているものについては、風俗のほうが物知りで、よっぽどニーズを満たしているのです。

 こういう話をすると「世の真実を知っているのだ自分は」みたいになっちゃう人がなぜか一定数出てしまいます。なので、ここでは落ち着いて距離をとってくださいと一応お願いしておきたいです。というのも、結局、相談員の私は話を聞くばかりでなにひとつ現場のことを経験的に知らないのですから。切り取られた事実ばかりが大きくなって想像力が働かなくなるのもこわいですし、これを読んでくれているあなたが思い込んでしまうのは、もっとこわいと思っています。あくまで、現実のかけらが少しだけあるかもしれない文章と考えてください。そのほうが、きっと、想像力が働きます。

長くなりましたが、「知らない話の相談にのる話」はこれで終わりです。団体の形作りに向けた相談はまだまだこれから。よくある日常です。


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