みそっかす

 疲れている。けれどいつもより上手にできた味噌汁はうれしい。遅い帰宅で布団に飛び込むつもりだった。それが野菜たっぷりの味噌汁を飲んでいる。というのも、ふわふわのパーカーに着替えてファスナーを首元まで上げた時、気付いてしまったからだ。指先が冷えきっていることに。
 ぎこちない身体を台所へもっていき冷蔵庫をあさった。大根やら人参やら、野菜のはしくれやらを切って小鍋へ放り込んだ。そして煮えるのを待ちながら、湯気に満たされていく台所のことを思った。昔からの不思議で、火の入った台所はどこか幸せそうに見える。厚切りの野菜たちが小鍋の中で転がっていた。味噌はこさなかった。
 加減を覚えておきたいと思う。深夜、あたたまった身体は雪の早さを余計に感じた。急にタイヤの替え時が心配になり、それからやることの多さにため息が出た。けれどいつもより美味しくできた味噌汁がある。おかげで明日の朝もたのしい。

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