見出し画像

お盆休暇ver.2023①

1週間のお盆休みが終了した。
そしてなんとまあ、ダサいタイトルである。
実にいい休みかと言われると、そうは感じていない。
もっとがんばれたよなあという後悔である。
おそらくこの後悔を今日の徹夜計画で帳尻合わせにするのであろうが、すでに遅し。
私は、いつも少しだけ甘い環境にいて、自分の好きなようにしか努力しないので、この程度の人間なんだろうなといつも思う。

このお盆は富士山登山に挑戦した。
20代になってから死ぬまでに一度は、登っておこうと思っていたけれど、計画もせず、妄想だけ沸かせていた。しかし、きっと来年から仕事がより忙しくなって、富士山に登る余裕も体力も無くなるだろうと踏んで、決行した。
実に良かった。
富士山は、私にとっての憧れで、新幹線を通過するたびに、心が躍る美しさ。太宰治の小説を読んでから、私の大好きな太宰の富士山への愛情に簡単に影響されて、今にいたる。
しかし、7月末に浮かれた気持ちで申し込んだ当時のやる気から、仕事の量が増え、納期が厳しくなってくるにつれて、私は富士山に登っていいのだろうか、とどんどん下がる覇気。
前日には、準備もせず、心配の言葉をXというよくわからない媒体に垂れ流ししていた。
しかし、4万円を無駄にするわけにいかない。もう、富士山への敬意よりも4万円を無駄にしたくないというケチくさい私の性が、唯一の原動力だった。
近くのホームセンターで驚くほど重い充電バッテリーを4000円で購入し、これは、モバイルという言葉で騙されたという気持ちを持ちながら帰宅し、荷物を急いで詰め、難波の夜行バスに飛び乗った。仕事が終了しておらず、夜行バスの中で仕事を行い、完了したのち仮眠をとっていると、静岡に到着していた。

朝7時には、5合目へ向かうバスが出発するとのこと。
仮眠をとり、支度をしに、部屋へ向かう。今回は、必要な服や装備を準備してもらえるツアーにしていたので、到着後大きなリュックを1つもらった。
開けてみると、服が3セット入っている。どれを着ていいのかわからない。質感から雨を防ぎそうだなとか、スパッツだから一番最初だよなとか思いながら着ていくが、最後一点厚めのフリースが残り、これは今着るべきなのか、否か悩み、気の良さそうな婦人に質問し、防寒服だから今じゃないと大体わかっていただろう答えを教えてもらい、リュックにしまい込んだ。
バスに向かうと私が最後で、すでに乗車する人数の少なさと、着慣れた服装に私はこれから死にに向かっているのかと思うほどだった。
周りは、富士山について朗らかに話しており、服の着方もどのコースを上るかも名前の言えない私は、不安が募るばかり。でも、日経新聞を読む習慣は今でないと守れないと感じ、むしろ明日につながる何かを今しておかないと、このまま死んでしまいそうで、頭に入らないまま、新聞画面をスクロールしていた。
気が付くと5合目、何かバスの案内役から激励の言葉や注意事項などもらえると思っていたが、何もなく、雨なので、危険を感じたらすぐやめてください。という一言だけだった、不安すぎる。

バスを降りると、雨がしっとり降っていて、涼しく、湿度だけが夏という感じのムワッとした空気が残る印象。
一度服装を整えて、登山を開始しようと休憩小屋に入ると、登山を完了させた人で溢れていた。みんな疲れていて、濡れている。やり切ったという感情より、疲労による重たい空気で溢れていた。こんな空気になるところへ私は今から歩いていくのである。一人で。知識もなく。バカなのか。

しかし、長年の夢であった富士山に立っていることは、思った以上に気持ちが高揚するものである。知らない植物、知らない土、あの遠くから見るしかなかった富士山にいる現状、全てが新鮮で自然と足取りも軽い。
5合目から7合目はあっという間だった。8時半から登り始めて、11時で7合目。今回は、1日目に、7合目の宿で仮眠をし、深夜1時ごろに出発してご来光を見て、翌日の14時ごろに5合目に帰るというスケジュールだった。11時で1日目の予定をクリアしてしまった。富士山案外簡単か?と思っていたけれど、私が泊まるはずの宿が、7合目にはない。とりあえず、目の前にある宿に入ってみた。
富士山の休憩小屋は、各麓に作られていて、ただ休憩するだけでは入れない。何か食事や飲み物を購入しないと入れない上に、接客態度もあまり親切でなかった。こちらの疲労によるバイアスがかかっているのかもしれないが、雨でずぶ濡れで、2時間かけて登ってきた私は、何か一言言われたかった。しかしそれは物々交換でしか果たせないのである。甘酒を頼み、濡れた体を濡れた持参したタオルでふき、甘酒を待つ。
甘酒なんて久々に飲んだ。甘酒なんて久々に言葉に発した。おそらく、4年前に、ジャズバーのピアニストの知り合いに美味しい甘酒だからともらい、沸かして飲むわけもなく冷蔵庫に放置していたが、泊まりに来た大学の友達が美容にも健康にもいいからと私のために作ってくれたものを飲んだ以来である。
私よりも、私の自宅のキッチンを使用するのが上手で、翌朝には、冷蔵庫に何も食材がない中で、すいとんのお味噌汁を作ってくれて、あれから、1ヶ月は私の中ですいとんブームが続いた。甘酒ブームは購入していないので、その日限りである。
4年ぶりの甘酒は、7合目バイアスもかかりびっくりするほど美味しかった。
少しでも長く座っていたいのに、美味しすぎて、すぐ口へ運んでしまう。

もうなくなってしまった。
それはつまり、小屋から出ていくことを意味する。その前に、店員に砂走館に泊まる予定なのだが、この7合目のどこにあるのか?と尋ねた。
すると、このルートではないという一言。
なんとバカなのか。
富士山でルートを間違ったようなのである。
その宿へ行くには、登頂して7合目まで下山するか、6合目まで降りて、7合目に行くかと言われた。
富士山でもやらかすのである。バカなのか。

降りるか上るか、悩みに悩んだ私は、降りる方が安全であるのに、後退は敗北を意味すると安易に考え、登頂することに決めた。2回登頂したって言ったらネタになるだろうし。
バカである。
この判断がのちに死ぬ思いを体験することに繋がるとは、この時は思ってもいない。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?