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異世界の軍師で究極の古代竜を獲った件について


1  はじめに

 みなさんはじめまして、そうじゃない人はご無沙汰しています。ハンドルネームを決めかねている遥希こと低血圧こと七紫(ななし)と申します。
 今回は8/19に行われた、アルティメットカップ姫路の振り返りとして、初めてのnoteを書いてみようと思います。
 なお、本note(本なのなnoteなのかややこしいな)   は、レシピの掲載や採用カードの解説、各デッキ対面の立ち回りなどへの言及はほぼないため、要望をいただいた方々の意向に沿う内容となっているものではなく、極端に言うと僕の日記を公開しているようなものなので、全文無料設定としています。
 よって、この記事のクオリティは保証できません。その点をご了承の上、お付き合いいただければ嬉しいです。

2 自己紹介

 東北地方、主に仙台でデジカを楽しんでいる古参デジモンファンです。
 昔からデジモンが好きで、それが高じてデジカに足を踏み入れた形になります。
 カードゲーム歴は約3年、デジカ2弾環境(収集はスターター)からです。かわいさも究極体級でお馴染みのミレニアモンの登場をきっかけに始めました。

\\\\ジョグレス進化で、かわいいは作れる////

 デッキの使用傾向としては、ピエベルゼの時代からずっと、紫を基本に遊んでいます。

 主な戦績は
・チャレンジカップ  優勝1回、Best8 1回
・エボリューションカップ 優勝2回(1オメガ、1ブラウォ)、Best8 10回以上
・魔弾杯 優勝3回
・アルティメットカップ名古屋 4-2予選敗退
・アルティメットカップ姫路  Best4
となります。

 長々と端書きを書いてしまいましたので、そろそろ本題に入っていこうかと思います。



3 調整

 2023年8月10日夜、冷風の循環する部屋の中で僕は「明日から夏休みだしそろそろ来週の調整するか...」と思いながら呑気に愛猫と遊んでいた。
 いかんせん先月の名古屋から対面練習をしていない。さすがにこのまま姫路に乗り込むのは無謀だし、何より一緒に戦うデジモンたちがかわいそうだ。
 パートナーデジモンは7月のエボカ、名古屋を通して調整を進めたマスティで迷いはない。その上で特に注意すべき相手はシャイン、ミラガオ、ルガモンの3デッキだろう。
 まずシャインは明確な弱点があるのでそこを突く。次にルガモンだが、このデッキは僕も作っているので大体の動きは想像できる。その他多くのデッキにはマスティ持ち前の展開、除去、リカバリーの三本柱で押し切りにいくので想定と練習を省く。
 そうなると問題はミラガオだ。エボカと名古屋で数回対戦したが、最新タイプともう少し対面練習をしておきたい。じゃあ青デッキに一家言あるたいらさんに頼むか。そうと決まれば善は急げ。という具合に早速練習依頼のラインを送る。

さすが勢いとレスポンスの良さに定評のあるたいらもん 速攻OKの返事をくれた

 ちなみに彼は高身長で礼儀正しく人当たり抜群、さらによく通る大声を合わせもつという甲子園球児をそのまま大人にしたような好青年だが、どんな人格者にも欠点はある。
 彼の場合それは、折に触れてティラノモンについて熱弁を振るうきらいがある点だ。

好きあらばティラノ語りとはこのこと

 こんな時は下手に刺激すると癇癪を起こして大変危険なので、既読スルーが推奨される。

 翌日の夜、仕事終わりのたいらさんと落ち合い、前日の既読スルーなんてまるで忘れたかのように(実際僕は忘れていた)穏やかな雰囲気で練習が始まった。
 だがそこで衝撃的な事実を突きつけられた。
 勝てないのだ。いや、正確に言うと勝てなくなっていた。13弾環境では間違いなく勝ち越していたはずだ。少なく見積もっても7割5分は勝っていたと言っていいだろう。それが今は4〜5割付近を漂っている。
 その原因はやはり、14弾で追加されたゴマモンラインだった。プカモンにより盾とのDP勝負は拒否され、ゴマモンには進化元を抜かれた上に鼻で笑われながらブロック無視の通行を許し、挙句の果てにはズドモンにより盤面を空っぽにされるという惨劇である。盤面コントロールがお家芸のマスティにとってこれ以上の屈辱はないだろう。
 特にゴマモン。お前は何なんだ。僕は君のことをアイコンにするほど、無印の頃からずっと愛しているのに、、、なんだその消滅時に進化元から出てくる効果は...まるで紫じゃないか!なんで僕に牙を剥くんだ!
 と、一通り喚いてみたが世に出てしまったカードたちに文句を言っても仕方がない。割り切って対策して対処して勝ちに行くしかない。

 こうして僕とマスティモンの、とても長くて、とても短い夏休みが始まった。


4 予選
 それからあっという間に時間は過ぎ、ついに大会当日となった。結局対面練習ができたのはたいらさんとの2〜3時間しかなかったが、この日の僕に不思議と不安はなく、なぜか清々しさすら感じていた。
 まあたぶん、普段は食べない朝ごはんを食べたからだろう。


1戦目:アルファモン◯
 予選1戦目はアルファモンである。上記で3トップ(僕の認識だとシャイン、ミラガオ、ルガモン)以外のデッキはノリとフィーリングで押し切る旨のことを述べたが、この対面ははっきり言って超不利。13弾アルファの離れない効果はもちろん、金剛なんていう非人道的オプションまで採用されている可能性がある。大事な大会の初戦にこの対面を引く自分の運の悪さたるや...だがどれだけ嘆いても不利対面は変わらない。構築上不利ならそれを覆せるだけの立ち回りをするしかない。
 先行はお相手、育成スナリザ進化からクールボーイでデクスドルガ回収「ドルガも見えてるのにそっちを回収するってことはもう持ってるもんなあ」と内心で呟くと、僕の眼鏡は早くも敗けの色をじんわりと映し始めた。
 しかしこちらの初手も悪くない。育成パタモン進化で4タケル登場で盾確認を行う。盾も強い、が、回収したくない札しかない。しょうがなくディグレイドを「13弾アルファに効かんしな」という雑な理由で手札に加えたが、王竜剣まで乗られたことを考えればプレミと言わざるを得ない。
 案の定早期に王竜剣に進化されるもなんとか除去、その後なんなく2体目も立てられるが、DP マイナスが入った状態だったので盾のマスティで消滅。しかしこちらの盾は0となり相手は横並びにシフト。それを咎めるためにすぐさまリカバリーと盤面展開&除去を行なってギリギリで勝利。
 1回戦負けはオポ的にトーナメント上がりはキツいだろうなあ。と、どことなく申し訳なく思っていたら、お相手から「ありがとうございました!メッチャ楽しかったです!」の一言。コントロール系を使っていると、無意識にヘイトを集めてしまっていないか気にしちゃうくらいにはノミの心臓なので、この一言でだいぶ心が軽くなった。
 こちらこそ、ありがとうございました。


2戦目:ルガモン
 一応メタカードも入れてるけど、それを待ってたら速度負けすることは明白なのでこちらが先に展開して圧をかける。早期にフェンリルガまで進化されるがリーサルまでは届かなかったので、返しにもう1マスティ制圧で勝ち。


3戦目:シャイン 
 環境トップの中だと1番勝ちパターンがハッキリしている対面。と思いながら悠長に構えていたら盤面にバーストモードに加えてライズまで並べられ、6〜7枚あったセキュリティは一気に1枚まで削られる。
 想定内とはいえ大事な大会で実際にその動きを受けるとさすがに冷や汗ものだった。しかし、セオリー通り相手が無防備な盤面を数ターンほど作り出し、その間に万が一に備えてリカバリーしながら攻め切って勝利。


4戦目:シャイン
 シャイン2連続である。有利対面とはいえ、ここまで3連勝している実力者のためもちろん油断禁物である。
 対戦開始直後、相手の顔色を伺うとどうやら芳しくない様子だ。そして見えた初手が4マサル。その後はジオグレ素出しなどを経て育成が育つが、その頃にはこちらは展開を終えていたため、ありがたく事故を拾わせてもらって勝ち。
 対戦後、どこか吹っ切れた様子で雑談に応じてくれたのが印象的だった。その後、お互いの健闘を祈り「2人でトーナメントにあがりましょうね!」と激励し合うことができた。
 このとき、僕は胸にあたたかな充足感が満ちるのを感じていた。そう、僕は見落としていたのだ。結果だけを目指してその過程にある大事なものを。それは拳(カード)を通して交わす友情。互いの想いと情熱が拳(カードです)に乗って伝わり、互いに触発し合い称え合うことのできる美しさを。これが、これが漢の喧嘩なのだ(フラグ)。


5戦目:赤ハイ
 去年の2次予選を最後に1回も戦っていないデッキである。よって1年近く対戦していないため立ち回りも怪しい。
 先行は相手で育成からアグニモンまで進化されターンをもらう。知見の浅いデッキに対してプランを組み立て始めようとしたその時、仙台のデジカ仲間であるオーマチさんと先月交わした会話が想起された。
僕「今って赤ハイ強そうなのになんで少ないんだろうね?」
オーマチ「それはルインがキツイからッすよ!」
 そう、確かにそんな話をした覚えがある。赤ハイはルインに進化されると、サーチ要因の成長期を咎められ、スピリットエボリューションしようがDPは貧弱、例えカイゼルになろうとも下がったDPでは相手を討ち取れない。
 ならば僕のすることはただ一つ、このデッキに1枚だけ入っているルインを引きに行くこと。その一点に、全てを懸ける!
 そう思ったのとほぼ同時、僕の1枚目のセキュリティが割られる。そのカードが

ドヤ顔で盾からこんちには

死んだ。率直にそう思った。一度落ちたルインを回収する術はこのデッキにはない。いや、正確に言えばマスティでトラッシュから盾にルインを運んでタケルで回収するプランがある。しかしそんな大振りな動きを許してくれるほど赤ハイが遅くないことくらい僕だって知っている。 ここまで、なのか
 その後はがむしゃらだった。育成テイル出しからエンウー経由でオファニFDへ進化し、フレイモン除去兼リカバリー兼12000ブロッカー兼消滅時テイルモン登場だモンとして鎮座させ、そこを起点に消滅後はマスティにスムーズに繋げられるよう下準備をした...ように思う。
 「ように思う」という曖昧な記述なのは、追い込まれ過ぎてその時のことをうろ覚えだからだ。ただ、結果としては勝てたので良しとしよう。

6戦目:ルガモン✖️
 5連勝することができ、上機嫌で予選最終卓に着く。どうやら機嫌がいいのは僕だけではないようで、隣のテーブルからは和気あいあいとした話し声が聞こえてくる。それも当然と言えば当然の話である。これから始まるのは予選上がりをかけた試合ではなく、いい意味での実質消化試合なのだから。そんな今日1和やかな雰囲気をありがたく享受し、対戦者に話の水を向けてみた。そうするとお相手から

「あ、僕1敗してます。」

 そう、階段卓だった。5戦終了時に全勝者が7名だったので全勝卓は3卓で階段が1卓発生したのだ。その1つの枠に僕が当選!おめでとう!普段からくじ運はないが、こんなところで階段を引かなくても...
 まあうだうだ言ってもしかたがない。全勝前提で話しかけてしまったことを対戦者に詫び、雑談を続けながらメンタルを立て直し、対戦に向けて意識を研ぎ澄ます。「戦う」その準備を静かに整える。
 そうだ。人間は置かれた立場で戦うしかない。運や才能や環境に恵まれなくても、与えられたカードを切って戦っていくしかない。その点、カードゲームは平等だ。なぜなら人生と違いカードは自分の意思で手に入れられる物だから。もちろんパラレルにしようと思えば金銭的負担は大きくなるが、レアリティを気にしなければ誰もが同じ土俵で戦える。
 まっさらな舞台で、自分が信じ抜いた50枚の仲間とともに、自分しか持ちえない、他の誰とも違う唯一の色を描くことが許されている。

 そんな誰もが平等な世界への扉が、今日もまた開く。
  本日予選最終戦、デジタルゲートオープン!



結果、負け
 まあ察してはいた。2月のバンフェスチャレカも名古屋も6戦目はプレミが目だったが、今回も同じ轍を踏んでしまった。
 置かれた場所で〜とか、カードゲームは人生と違って〜とか抽象的で実のない空想が始まったあたりから気づき始めたが、やはり僕には6戦を戦い抜く集中力が明らかに欠如しているらしい。
 とはいえ後悔先に立たずで予選終了。あとは予選順位の発表を待つのみとなった。



5 予選後、トーナメント前
(1) 予選通過者発表
 大変情けないことに6戦目のお相手に慰められてもらっていたところ、ついに神の声にも等しいアナウンスが場内に響く。
「只今、予選の順位を発表TCG+に送信いたしました」
 瞬間の話で言えば、ここが今日1日の緊張のピークだったと言っていいだろう。低血圧な僕の血圧は限界を超えて跳ね上がった。周囲の音は不鮮明なノイズに成り下がり、反対に自身の心音は爆音として体内から響いてくる感覚。僕の細胞の何%かは、本来の役目であるはずの生命活動の維持を明らかに放棄してしまっている。
 そんな中僕は、自身の身体の変化に驚きつつも、不思議と心地よさも覚えていた。極度の緊張の中、メンタルの異常が引き起こした一時的な反応を貴重な体験だと思えてきたのだ。
 例えば、過去や現在そして未来、起こった事象や起こるかもしれない現象。そんなものに干渉する力など、人間にはない。しかし、その捉え方を変えることはできる。客観的に何かが変わらなくても、自分の中で捉え方が変わったのであれば、それは世界が変わったのと同義だろう。なぜなら、人は自身の主観を通してしか世界を認識できないのだから。
 とするとこの極度の緊張は最大の興奮、歓喜の骨頂と形容しても差し支えない状態だろう。だから今僕は、望んでもなかなか得られない貴重な体験をしている。ありがとうBANDAI。ありがとうデジモンカードゲーム。ありがとうみんな。
 そんな哲学擬の思考に意識を傾倒させ、一時的に頭を麻痺させることによって、アナウンスから約15秒後、ようやく僕も皆に倣い自身が持つスマホの画面に目を落とすことができた。

「9位 予選通過」

(2)デッキチェック
 心身ともにボロボロになりながらも、予選通過者用のエリアに移動し、あらかじめ用意されていた椅子に腰を下ろした。どうやらブロック毎に1〜20位くらいまでの4人ずつが5列になって座っているようだ。1位が最前列の右端に座っており、その左隣に2位が続くという具合で並んでいる関係上、僕は3列目の右端に座っていた。
 ふと前方を見ると4〜6回戦目の対戦者たちが目に入った。その3人には「残りの試合を勝ってくれてありがとう。あなたたちのオポが高かったおかげで、僕もトーナメントに上がれました。」という感謝の気持ちしかなかった。
 懸念していたデッキチェックも無事通過。しかし非公式のスリーブを使っていたため公式スリーブへの入れ替え指示を受ける。その点は事前に聞いていたから想定内である。そのために今日は愛猫ちゃんたちからの激励を受けたスリーブを持ってきているんだから。

 自分の用意のよさと愛猫の噛み跡の愛おしさに惚れ惚れしながら、僕にしては珍しく軽い足取りでスリーブ入れ替え席へと向かう。誘導のスタッフさんに「自分で公式スリーブを持ってきているのでこっちに入れ替えますね!」と軽やかに伝えるも「予選で非公式のスリーブを使った方はこちらのスリーブに入れ替えてください。例え公式スリーブであってもご自身でお持ちになった物への入れ替えは認められません。」という言葉と共に無地スリーブを渡され、有無を言わさぬ口調で無念の一刀両断
...負けでいいです。

(3) スリーブ入れ替え
 そんな事情により、配布された無地スリーブへの入れ替え作業を始めることとなった。
 50枚全てのオーバースリーブを外し、非公式スリーブからカードを取り出して無地スリーブに移す。そんな単純な作業を行う中、僕の心境は大会の真っ最中とは思えないほど穏やかだった。いや、幸福を感じていたと言ってもいいもしれない。
 スリーブを入れ替える動作を50回繰り返す。それは単調極まる作業である。左手でスリーブを持ち右手でカードを入れるだけなのだから何も特別なことはない。しかし、これは人間が古来より行なってきた人が人であるために切っても切り離せないある営みを彷彿とさせる。左手と右手、自身の両の手を、合わせる姿。そう、それは祈りの姿に似ていた。
 今回共に戦っている1枚1枚にそれぞれの出会いの場があった。それぞれに採用理由があり、それぞれに活躍の場があった。
 それは、デジカ公式Twitterで初めて目にした瞬間。パックから出た、もしくはシングル買い、または友人から譲ってもらったパラレルたち。自分の手で引くとこができた金マスティ。エボカや名古屋いや、もっとずっとずっと前のチャレカで光輝いた、デッキに入れていなければ確実に負けていたであろうカードたち。今はストレージで応援してくれているディフィート、マーシフルモード、オルディネモン...
 思い返せば切りがないが、たくさんの思い出が全てのカードに宿っている。この子たちが、今日僕を、ここまで連れてきてくれた。ほんとうに、ほんとうにありがとう。そしてあと4戦、最後まで僕と一緒に戦ってくれ。
 そんな思いを抱きながら、50枚のスリーブの入れ替え作業を、いや、50回の祈りを捧げ終えた
 非公式スリから無地スリへとカードを移し終え、後はオーバースリーブに入れるのみとなったことで、そんな多幸感に満ちた時間も半分が過ぎ去った。ずっとこうしていたいと思えるような時間もいつの間にか折り返しに差し掛かったことを悟り、オーバースリーブへの入れ替えを、折り返しの祈りを捧げ始める。
 しかしここで疑問が生じた。無地スリに対してオーバースリーブのサイズがかなり大きいのだ。それでも問題ないかとスタッフさんに確認したところ「入れ替え後の二重スリーブは禁止です。無地スリーブ1枚のみでお願いいたします。」との無慈悲な宣告を受ける。
 「え、この廃課金デッキをスリーブ1枚で使うの!?」
 いや、有り得ない。有り得ていいはずがない。この子たちは1枚1枚が大事な大事な愛するデジモンだ。その子たちにたった1枚のスリーブしか使えないなんて、それはもうスリーブを使っていないも同然、いわばノースリーブ状態である。そんな状態のカードを使って対戦でもしようものなら、焦りと悲しみと申し訳なさでプレミは必然。どうにかしてそれだけは避けたい。しかし運営の言うことは絶対。こればかりは回避のしようがない。僕のプレミが招いた絶対的な敗北である。
 そんな途方もない無力感で胸を満たしていたところ、ふとあることに気がついた。これから僕はノースリーブ状態のデジモンたちと戦うことになるが、このデッキの中核を担う2対のデジモン、エンジェウーモンとレディーデビモン。天使が纏う羽衣には肩から先の衣がなく、悪魔が着為す召し物には左肩から先の布がない......そう、元から2人はノースリーブだったのだ。

NNG(ナチュラルノースリーブガールズ)

 今日まで僕は、ノースリーブデッキを二重のスリーブに入れて使用するという大きな矛盾を抱えたまま戦っていた。
 そう考えると、このデッキはノースリーブ状態で使うことこそが本来の姿に合致していると言えよう。
 その原点に気づかせてくれて、ありがとうBANDAI。ありがとう公式。

 さて、上述したとおり、人は世界の法則や規則を変える力はもち得ない。だからこそ人間は、複数の視点をもち、さまざまな角度から世界を認識することのできる視野を養うことが求められる。なぜなら、人間はそうすることによってのみ世界を理解し、納得し、自分の人生を先に進めていくことができるのだから。
 そう、この日の僕のように。
 こうして僕は、本日最大の難局を乗り切ったのだった。
 スリーブ入れ替え戦、勝ちでいいです。 


6 トーナメント
1戦目:シャイン◯
 スリーブ入替後、元の席で待っていると場内アナウンスによりトーナメントが始まることを告げられ、同時に組み合わせが発表となった。  
 早速自身のスマホで確認すると、そこには見覚えのある名前があった。
 恐る恐る顔を上げ、前方に座っているであろう相手の姿を捉える。その背はゆっくりとこちらに振り向き、僕と視線が重なった。その瞬間、僕はそんなはずはないのに鏡を見ていると思った。そう錯覚するくらい、相手の表情にもはっきりと苦笑いが浮かんでいた。予選4戦目のシャインと再び、トーナメントで巡り合ったのだ。
「一緒にトーナメント上ろうって言ったけど、まさか初戦で当たるなんて聞いてないよ...」と内心で嘆きながら対選卓に着き、互いに準備を進める。
 聞けば相手は予選でシャインミラーを3度も制したらしい。そう言えば昔、デジカ始めたての頃に誰かが「環境ミラー取れる奴が1番強い」と言っていた記憶が蘇りかけたが、ここでそれを思い出すと完全に相手に呑まれるので、記憶の水面に浮かんできたその顔を再度沈めにかかる。
 1度戦った者同士と言うこともあり、決勝トーナメントとは思えないほど和やかに対戦準備が進んでいく。お互いに無地スリに入れ替えたので「このスリーブめっちゃ滑りますよね!?」という雑談中の雑談や「今日ミラガオ当たりましたか?1番警戒してきたのに1回も当たらなかったんですよね〜」(特大フラグ)などと言う話をしていた。ちなみに彼もミラガオとは当たらなかったらしい。
 そんな穏やかな時間ももいよいよ大詰め。相互シャッフル時に「さっき事故ってもらったので、今回も念入りに切っておきますねぇ」と冗談を交えつつ準備を整える。
 そして始まった1戦目、相手先行で一手目が(たしか)トレーニング使用で成長期見えず。予選同様育成が育たないスタートとなった。
 デジカあるある「初手、成長期ないない」である。
 大型大会で1日に2度も事故らせてしまうと、さすがにポジティブな感情はほぼなく、シャッフル時の軽口に罪悪感を覚えた上に「相手は事故っているんだから絶対勝たないと...」という思いが芽生え、なぜか僕の方が焦ると言う事態に発展する。それに加えて予選の疲れも影響し、注意力や集中力は散漫。相手ライズの登場を咎めず、次ターンにルインまで乗られて育成を封じられる状態に陥ってしまう。
 しかし、崩れかけたメンタルでもシャイン対面の基本だけはどうにか遵守するよう意識して試合運びを行なった。その結果、運も味方をしてくれ、直前のリカバリーで入っていたディグレイドがマサルのアタックで捲れたので、育成から出てきたデジモンを盾に送ってそのままゲームエンド。


2戦目:赤ハイ◯
 事故を拾わせてもらった負い目を感じながらも次の試合へ。ここまでくれば対面デッキを把握していそうなものだが、当然僕はその時の対戦者以外を気にする精神的ゆとりなどもち合わせていないため、相手のデッキを知らない。
 滞りなく準備を進めて相手先行でスタート。3コス拓也登場で赤ハイと認識し、予選での一戦を経て培った勝負感を頼りに試合を進めていくことを確認。育成進化ドローでテイルモンが2枚になったことから、1枚はヴリトラモンで除去されてもダメージは軽いと判断して登場させる。返しのターンで拓也からアグニ、グラビティプレス使用でアルダまで進化され2チェックを受けるも1枚目ディグでその後パスでターンが返る。
 グラビティプレスの効果で5スタートとなったので、再びテイル登場でルイン回収、エンウー進化で盾からマスティ持ってきて1返し。
11コストMAXでカイゼルを出されターンが返る。
 コストを多くもらったこともありマスティまでは繋がるも、ルーチェFDもディグも引けずカイゼルが残る。次ターンに進撃オメガに乗られると(事故ってる相手には特に与えたくない)ドローが進むし耐性もたれるしでデメリットが多いと判断してルイン進化のアタック終了時効果でカイゼルを取る。この点はルインを使ったのではなく、見えていたルインを使わされた感が強かったので反省点とした残った。
 その後は展開していたデジモンで押し切って勝ち。
 ところで対戦後にセキュリティ確認したところ、ディグがあと2枚入ってたんだけど、この対戦に限らず優勢の試合は捲られない盾が強く、劣勢の試合になると急にセキュリティ強度が下がるのはなんなんだろうか。

3戦目:ミラガオ✖️
 果てしなく続くように見えたパラディンへの坂道もついに終わりが見えてきた。準決勝ともなると、普段の僕なら痙攣していると誤解されるほど極度の緊張で震えていただろうが、生憎今日の僕は一味違う。なぜなら疲れ果てて緊張することなどもうできないからだ。
 そんな状態なので倒れるように椅子に腰を下ろして対戦の準備を進める。お相手の方はこれまた人当たりがいい方で、朗らかに話しかけてくれた。しかし疲労困憊の僕の耳は非常に遠くなっており(トーナメント用のテーブルが異様に大きいこともあり)、的外れな相槌を打つに終始してしまった。この点は自身のデッキ回しともそっくりである。 
 さて、お相手のデッキもここまでくればさすがに分かっていそうなものだが、もちろん僕は分かっていない(本日2度目)。いや、どこかで目にしていたとしても覚えていられるほどの余裕などあるはずがない。
 相互シャッフルを終え、手札を確認する。迷ったがマリガンで引き直す。さっきよりはいいがパワー不足感は否めない手札で対戦スタート。


     先行相手孵化   「プカモン」


 ついにやってきた最大の宿敵、瞬速の幻影ことミラージュガオガモン。あわよくばミラガオ対面0のまま頂点まで駆け上がりたかったが、勝利の栄光を我が手に入れるには試練は付きもの。正直苦手意識しかないがこの対面を想定していないはずがない。そう、ミラガオだけはきちんと対面練習を行なった。青のスペシャリストにみっちりと相手をしてもらったのだ。


 思い出せ、たいらさんから受けた教えを、、、
      その魂の言葉を...!


・・・


       ・   ・   ・




 こんな大舞台の真っ只中に容赦なく僕の残り少ないリソースをいたずらに食い潰すたいらもんを意識の外に叩き出し、目の前の対戦に注意を戻す。
 初ターンは育成進化でミレイ設置し、次ターン育成テイル進化で返しのターンでバトルエリアにマッハガオガモンを構えられた。このまま順当にいけばミラージュで盾を安全に削られてしまう。
 手札にはエンウー&レディデビとオファニFDがおり、ドローorサーチでマスティを引ければ勝ちに大きく近づくこと。引けなくてもミレイ効果でレディデビを盾バウンスのデコイとして出し、エンウーはそのままオファニFDに進化してブロッカーにするという択が取れることを確認。
 以上の理由からテイルモン前進からのエンウー進化で盾サーチを行う。マスティはなかったが、思わぬカードを発見してしまう。それがエンウーXだ。今の盤面でこのカードはかなり強い。「これは運が回ってきた」そう思い、舞い上がってしまった。
 僕は高らかにエンウーX回収を宣言して減った分の盾をリカバリーする。そのまま流れるようにエンウーXに進化してマッハガオガにセキュ−1をつけてリカバリーを行う。

 同時に自身の犯した致命的なミスに気がつく。
「ミレイ効果を発動し忘れている」

 これで全てが終わった、訳ではないがこのミスが後々大きく響いてくる。レディデビという避雷針を置けなかった僕はエンウーXをオファニFDに進化させて泣く泣くターンを渡す。
 返しのターンでお相手はメモブ。どうやら上を持っていなかったらしい。4枚捲るが、そもそも採用枚数の少ない究極体以上がそう簡単に来るわけが......来た。見えたミラガオ回収でそのまま進化、進化時効果により先ほどリカバリーした盾「タケル」が戻される。よりによって今1番セキュリティから出てきてほしいカードが無効化されてしまった。もちろん防げる裏目を潰さなかった僕が200%悪いわけだが、これはさすがに堪えた。
 さらにバースト進化でオファニFDも手札におかえりなさい。エンウーXのセキュマイのおかげで無限連パン百裂拳はどうにか防ぐも劣勢には変わりない。

 しかしこの状況を1発で返せるカードがこのデッキには入っている。それこそ、このデッキの名を冠するデジモンマスティモンだ。

 あれは忘れもしない2021年10月29日、僕は異世界の彼女と運命とも思える出会いを果たした。
 当時の僕は紫一辺倒だった。今でこそルガモンやベルゼなど「速くて強い紫」が存在しているが、当時の紫は後半の出力は随一なものの、その反面前半が脆すぎてとてもじゃないが長期戦に持ち込めるデッキではなかった。
 その弱点を補う、文字通りリカバリーしたのがマスティモンだった。紫の凶悪さと黄色の鉄壁さを合わせもつ彼女は、驚くほど僕と相性がよかった。

 そんな彼女が、僕を見捨てるはずがない。
 だから必ず、僕がこの手に引き込んでみせる。

 そう意気込み、息を吹き返した僕はプランを練り直す。盤面にはミレイ2とリィンフォース、育成にはパタモン、手札にパーツはほぼ揃っている。さらに相手は1度バーストモードを使った上、こちらのセキュリティにはエリスモンが2枚埋まっている。
 マスティさえ引ければ、限りなく勝ちに近い状態にもっていける。いや、引けなくともディクレイドが1枚手札に来るだけで十分巻き返せる盤面である。ピン採用のカードでさえすでに引き切ったのに、ディグもマスティも来ないわけがない。

 が、来ないのだ。いや、正確に言えばディクレイドは2枚も見えた。しかしテイルモンのサーチで捲れただけなので回収はできずそのまま山下へ。ここでも盾バウンスされたミスが響いてくる。あのままセキュリティからタケルが出ていれば回収後リカバリーが入り、ドローがずれてディグが手札に来ていたはずだった。



 そう、デッキは僕を見捨てなかった。
 僕がデッキを裏切ったのだ。



 その後も、デッキの半分以上が手札になるまで相手にドローを手伝ってもらったがディグもマスティも引けず、盾からのこんにちはエリスモンでミラガオが止まるが効果誘発でメモリー+6されるという展開などを経て緩やかに敗北。
Best4が、確定してしまった。


7 決勝戦
 準決勝が終わり、帰りの新幹線の時間が近づいていたが「走れば間に合う」を信条にもち、今日はたまたまランニングシューズを履いてきていたこともあり、僕は決勝を見届けさせてもらうことにした。
 決勝ともなると、かなりのギャラリーがいたが、運よく最前列を確保できた。姫路は2ブロックあったため決勝は2卓で行われ、そのテーブル同士は少し離れていた。僕が見るのはもちろん、自分が数分前まで戦っていたAブロックの決勝である。
 ところが、逸る気持ちを抑えつける僕の前を通って遠い卓の方に向かう準決のミラガオの人......
 ここでやっと気づいた。僕はABブロックの卓を間違えて陣取ってしまっていたのだ。これから目の前で行われるのはBブロックの決勝だ。これが本日最後のプレミである。
 とはいえさすがアルティメットカップの決勝ともなるとその熱気は尋常ではなく、気づくと僕もその煽りを受けて前のめりで観戦していた。
 どうやらAブロックはミラガオミラーのようだ。仮に準決で勝てていたとしても決勝でもう1ミラージュだったのかと思うと、どこかで誰かが僕を嘲笑っているようで可笑しく思えてきた。
 そんな物思いにふけっている間にも試合はどんどん進み、先にBブロックの決勝が終わる。そちらのブロックの優勝はエグザモンだったようだ。
 「ほぇ〜、エグザ優勝すごいなぁ」という思いと「僕も優勝して姫路を『デカすぎ!ジョグレス環境!!』にしたかったな」というほろ苦い思いを抱きながら、Aブロックの決勝も最後まで見届けることができた。




8 その先へ
 以上がアルティメットカップ姫路の日記である。
 準決のプレミの後悔は未だ払拭できていないが、それを差し引いてもすごく楽しい1日だった。
 しかし、こんなに楽しいイベントもあとは東北会場を残すのみである。尻上がりに調子を上げてきた僕としては、今度こそはパラディンチャレンジをしたかったが、いかんせん参加資格自体がないので友の健闘を祈ることしかできない。


 ...だからこそ参加するみんなには、僕の分もがんばってきてほしい...楽しんできてほしい...

 そして、そして何より...



このインテリピノッキモンの鼻を誰か明かしてくれ。



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