NTTのデータ通信秘密計算技術とその実証実験

1. 秘密計算技術の背景

秘密計算技術は、データを暗号化したままで計算処理を行い、結果だけを出力する技術です。この技術は、1980年代から研究されていましたが、計算速度の遅さが課題でした。近年、この課題が解決され、特に「秘密分散方式」を用いることで実用的な速度が達成されました。

2. 秘密分散方式の仕組み

秘密分散方式は、以下のように機能します:

  • データを暗号化し、複数のサーバーに分散保管します。

  • 計算時には、各サーバーが持つ小さなデータ片を頻繁にやり取りし、協力して計算を行います。

  • 最終的に、暗号化されたまま計算された結果が出力されます。

この方式の利点は、データの機密性を保ちながら計算を行える点です。

3. IOWN APNとは

「オールフォトニクスネットワーク(IOWN APN)」は、光技術を用いた低遅延/大容量のネットワークです。これにより、離れたデータセンター間でも高速なデータ通信が可能になります。NTTはこのネットワークを活用して、分散したデータセンター間での秘密計算の実用化を目指しています。

4. 実証実験の内容と成果

NTTの実証実験では、大阪と兵庫にある3つのデータセンター(京橋、堂島、神戸)をIOWN APNで接続し、以下のことを行いました:

  • 10万件のダミーデータセットを使用して、AIモデルのトレーニングを実施しました。

  • インターネット接続では157分かかる処理を、IOWN APN接続では22分で完了しました。

  • 50万件のデータセットでは、インターネット接続で13時間かかる処理を、IOWN APN接続で110分で完了しました。

この実験結果から、IOWN APNが大幅な時間短縮を実現することが確認されました。

5. 技術の利点と今後の展望

NTTの秘密計算技術とIOWN APNには、以下の利点があります:

  • データの機密性を保ちながら高速な計算が可能。

  • 企業間のデータ連携を促進し、より多くのデータを活用することができる。

  • 地域分散データセンターの活用が可能になり、災害対策やエネルギー効率の向上に寄与。

今後、NTTは東京と大阪間のようなさらに長距離のデータセンター間での実験を計画しており、具体的なユースケースの実用化を目指しています。医療機関など、機密性の高いデータを取り扱うニーズにも対応していく予定です。

まとめ

NTTの新しい秘密計算技術とIOWN APNは、データの安全な活用と高速処理を両立させ、さまざまな分野での応用が期待されます。企業や医療機関など、多くの分野でのデータ活用が進むことで、社会全体のデジタル化と効率化が促進されるでしょう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/acdd7b2c41fe0faa1213f20a145514e9816af2c2

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