大人になった私と、もっと大人になった友達

らしくないねと言われるが、わたしは喫煙者である。

思えば『らしくないね』と言われることが多い。

小学生のときダンスを習っていたのも、
中学3年間合唱コンクールでピアノ伴奏をしたのも、
高校が進学校だったのも、
塾講師やパン屋のアルバイトも、
女のアイドルが好きなのも。

必ず誰かしらには『らしくないね』と言われてきた。

結構嫌だった。
頑張ってきたことや積み上げたものが、全然他人からはわからないのかな、と、言われるたび思った。

そんな私でも、らしくない、と認めることが1つある。
ある友達とめちゃくちゃ仲が良いということだ。

その子とは同い年。
昔から学校でいろいろあったせいか、同い年の友達が少ない私だけど、その子とは何故か、会ってすぐ仲良くなった。

4年前の12月。地下アイドルのライブでその子とは出会った。

その子はわたしの友達・・・正確に言えば友達の友達に連れてこられていた。

私たちは初めから仲がよかった。どのくらい仲が良いかというと、初めて会った次の日にまた会って、いっしょに出かけたほどだった。

わたしが自分でも『この子と仲良くするのはらしくない』と思うのは、割と何一つとして似ていないからである。

見た目に気を遣わない私と対象的に、その子は毎日ちゃんとお洒落をしたり、研究してメイクしたりする。
人に意見を言えなかった私と対照的に、その子はズバズバとものを言う。

かわいい見た目と対照的に口調は尖っていて、声は低い。
わたしに無いものを持ってるのがすごく羨ましかった。

タバコを吸ったのも、その子に誘われてだった。
最初はむせて、以来自分で買って吸うようになった。
タバコが吸えたら大人になれると思っていた。

どうしてわたしと仲良くしてくれるんだろうと、考えたことがある。
彼女は、自分と違う他者(わたし)を、当たり前に別物だと、捉えてくれているんだと思う。
別物だから見下すとか、別物だから羨ましいとかじゃなくて、別物。それだけ。多分そう思われている。知らんけど

そんな友達が、結婚して、お腹に赤ちゃんができた。

久しぶりに会った友達は相変わらず可愛くて、相変わらず口が悪くて、お腹がすごく大きかった。

たわいのない会話のなかでときどき、出産への不安と、子育てへの不安を吐露していた。

あんなに尖っていた姿を知っていた自分は、らしくないな、と思った。

そのとき、人にむけられて嫌だった『らしくない』を、無意識に違う人に向けていたことに気づいた。

同学年の友達が、少しは大人になったと思った私より、さらに大人になっている。

わたしが心配してもしなくても、赤ちゃんは無事生まれ、すくすくと育つのだろう。


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