「なんでSF小説とかアンソロの表紙って漫画・アニメ絵の女の子ばっかなの?」とツイートした者です

【お願い】
起きたことをできるだけその通りに伝えるために、自分の当初のツイートを画像付きで再現しています。主張に誤りがあり且つ辛辣、言葉足らずのため、多くの方を傷付け得るものであることにご留意ください。

【変更履歴】
7/2+7/4:
・女性をターゲットにした表紙例を追加
7/5:
・本記事に言及いただいた方々のnoteやブログ記事へのリンクを追加
・竹書房の編集の方からコメントを頂戴したので追加
※取り下げた方が宜しければ、申し訳ございませんがご連絡いただけますと幸いです

【本文】
こちらのRTツイートをしたものです(元ツイートは削除したので画像になります)。

画像1

元々こちらのツイートをRTし発言したものでした。

自分のRTが予想以上に拡散したのと、元々のツイートをされた編集の方が丁寧に諸々の疑問に回答してくださっているのに、元凶となった自分が再度反応しないのは不誠実だと思い、稚拙ながら下記に記しました。予想以上に長くなってしまい記述に時間がかかり申し訳ないです。

Twitterで展開していないのは、編集の方の意見と同様、Twitterはそういった場に適したプラットフォームではないという認識だからです。fusetterは使い方がよく分からなかったので昔使ったことがあるnoteにしました。

【前提条件】→面倒なら飛ばしてもいいと思います
・30歳です
・24年米国に住んでいて、以降は日本に住んでいます
 (上記2点が何かしらの自分のツイートした内容に影響を与えているかもしれないので明記します)
・SFファン・SFオタクではないです。ただ、読書自体は好きでその一環としてSFも一部読みます。『一九八四』『火星年代記』『人間がいっぱい』『天のろくろ』『紙の動物園』などが好きです。日本のSFはあまり読んだことないです、最近だと『ユートロニカのこちら側』『ゲームの王国』『横浜駅SF』『マルドゥック』シリーズ辺りを読みました。夢枕獏・伊藤計劃・円城塔が好きです。今は『三体』を読んでます。
・いわゆる「オタク絵」は嫌いではなく、むしろ中学時代から趣味として描く方です。Twitterでも別アカウントを運用し主にイラストレーターの方をフォローしています。
 
【経緯】
・夜中にこちらのツイートを見て、勢いに任せ下記のRTツイートをしました

画像1


・内容としては削除してしまったので現在は見れないのですが、ツリーの内容を思い出せる限りで記載すると
 1つ目のツイート:
 上記画像
 2つ目のツイート:
 「これとかこれとかこれとか」「馬鹿の一つ覚えみたいに」女の子の表紙ばかり。「女性主人公や百合SFだったら分かるが」「編集者も好きでやっているのか、売れるからしぶしぶやっているのか気になる。」

  ここで下記4種の画像を引用:

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 一拍置いて、3つ目以降のツイート(ここからかなりうろ覚え):
 常識を問い型を破り続けるのが求められるジャンルなのに女の子の表紙を多用するのは皮肉「売れるからというのは大体分かってたけど」それで留めるのは怠慢じゃないか。「最適解としては『ハーモニー』の新旧表紙みたいに2パターン用意してもらうこと。ただ、そんな体力を求めるのも酷ではある」

※「」内は→恐らく原文ママ、忘れてしまったので確証無し。
 
 みたいな事を言いました。
・RT大体350RT、700いいね位になったタイミングでRTへの返信が2chのスレ・まとめサイトのコメント欄のような様相を呈し、見るに堪えなくなったのでツイートのツリーを削除しました。

ここからは、この方が巧く解説してくださっているので、同じ流れで自分の意図や補足などを記載します。
https://anond.hatelabo.jp/20200701175011

【1:SF小説・アンソロの表紙はキャラ絵の女の子ばかりなのか】
これは色々な方にご指摘いただきましたが、間違いで、SF小説・アンソロの表紙はキャラ絵の女の子ばかりでは「ないです」。訂正します。例えばハヤカワのジャンル:SFに絞った場合の出版順の表紙はこんな感じです。https://www.hayakawa-online.co.jp/shopbrand/genre_001002/ これを多いか少ないかと取るかは、主観によると思います。

(7/5追記:さらに詳しい分析を行なってくださった方がいらっしゃいました)

では自分がなぜ「ばかり」だと思うようになったのか考えた所、複数要因があるように思いました。

A. 新刊の主な情報源がTwitterやインスタであったこと
→Twitterやインスタで他の方々が話題にされている本を購入時の参考にしていました。たまにAmazonの売上ランキング。書店ではSF棚(そもそもそのような棚があるのかも知らない)に行く事はまずなく、主に新刊棚・売上ランキング棚・特集棚、あとは海外文学・国内文学の棚を見ていました。なので、SFに関しては売上が高かったもの、話題になったものしか見る機会がない状態だったと思います。

B. 元々のツイートをされた編集の方のツイートが、その方をフォローしてはいないものの、よく自分のTLに流れてきていたこと
→Twitterでは550人程度しかフォローしておらず、SF好きというよりは読書好きを主にフォローしていました。そのため、SFジャンルの作品に関してはその方々がよく挙げられていた『三体』『天冥の標』『零號琴』『息吹』などの作品以外の情報はその方の担当作品に偏っていた可能性があります。

C.そもそも元ツイートの写真が4枚とも少女(と造形が似ている)被写体が表紙にあったこと

上記ABCが要因として重なり、結果的に自分の中の認識が「最近のSF小説・アンソロの表紙はキャラ絵の女の子ばかり」となったのだと思います。実際は「目についた最近のSF小説・アンソロの表紙~」なのだと思います。

ただ、この実感が正しくなかったとしても、「確かに気になっていた」「増えたと思う」という意見が今回あったのは事実なので、この「ばかりという認識」が1人だけのものではないという点は留意していただきたいです。

【2:恥ずかしい】
この「恥ずかしい」の感覚が非常に言語化しにくく苦慮したのですが、一点ここで明記したいのは、いわゆる「オタク絵」と呼ばれるもの自体に嫌悪感は抱いていないということです。好きなイラストレーターは米山舞さんとLM7さんです(こんな所で例示として掲出してしまいすみません)。

じゃぁ何で恥ずかしいと思うのだろう、と考えた所、ある方のツイートが非常に自分の感情に近しかったので引用します。受験時代に参考書の表紙が下記のようなもので、恥ずかしい思いをした、という趣旨のツイートです。

別に表紙自体の女の子のイラスト自体に嫌悪感を抱いている訳ではないです(純粋に嫌悪感を抱くものもありますが)。むしろ頭身と手のバランスが絶妙でかわいらしいと思います。ただ、自分が高校生だったら他人、もしくは例え親友や家族であっても、これを勉強をしている時に使っている所を見られるのは恥ずかしいです(また、なぜこれも女の子が被写体なのかという疑問も大事だと思うので後で述べます)。

画像7

「政治経済の勉強をしているのに少女のイラスト付きの参考書を使っているのを見られたくない」「「中島らも」の作品が編まれてることに興味を抱き『日本SFの臨界点』を読みたいと思ったけれど、少女のイラスト付きの本を購入し家に置いているのを見られたくない」は似たような感情で、世代や性別を超えて持ち得るものだと思いました。

「カバーをかけろ・外せ」という意見も理解はできますが(本当に欲しい作品は電子書籍で購入してますし)、「そもそも興味が少なからずあったのに、自分に合わない表紙だったので購入を躊躇する・詳細を知ろうとためらう層」も一定数いることは理解いただきたいです。その層をどう捉えるかは出版社いかんだと思います。

また、個人的にはこの2に関しては無視されても構わず、次の3の方が大事だと思いました。

【3:マーケティングとして読者層を狭めていないか】
3に関しては、1に記載したように「SF小説・アンソロの表紙はキャラ絵の女の子ばかりである」という認識の上で書いたことになる点は了承ください。

そして、二次元の絵に親近感を抱く、もしくは抵抗感を抱いていない若い方々や、ラノベを元々読んでいた方々へのアプローチ方法として、イラストの表紙を採用する事は間違っていないと思います。例えば上記の1で記載したように、そもそも自分のようなSF好き・SFファンではない人間は、書店のSF棚に行くことも、積極的にSF作品を摂取しようとも思わないので、まずは新刊棚や話題書の棚に面陳してもらえるよう、従来のSFファンだけでなく、最近話題のゲームやそのイラストを描かれている方のファンを取り込もうという手法は充分理解できます。

上記にリンクを張ったまとめの方が仰っているように、「SFというものはキャラクター文化と親和的なのだから、そっち方面から未開拓の読者を拾った方がよいと判断するのは筋が通っている。「キャラ絵で買わない新規消費者」より「キャラ絵がついてることで買ってくれる新規消費者」ほうを多く見積もっているのだ」ということもよく理解できます。

ただ、そこで「そういうことなんで」と放置して欲しくなくこの記事を書きました。

・「キャラ絵がついてくることで買ってくれる新規消費者」の想定ターゲットが、その中のさらに特定の層に偏っていないか。そのことによって、短期的には市場規模が大きくなったとしても、それが長期的に維持できるものなのか。

・また、それらの想定ターゲットへのアプローチ手法がそもそも本当に必要なものなのか、かつ、その手段が画一的になっていないか。

を今一度各出版社の方々に確認して欲しいです。現状を総合的に判断した上で、「大丈夫」という結論になったのであれば自分は安心します。

例えば、表紙にキャラクターのイラストを起用するにしても、その被写体が少女であることに対して無感覚になっていないか。想定ターゲットが、「キャラ絵がついてくることで買ってくれる新規消費者」なのであれば、被写体は少女だけである必要性はないはず(勿論、主要登場人物が少女のみなのであればその限りではないですが)。

恐らく現在は「キャラ絵がついてくることで買ってくれる、男性の新規消費者」が主なターゲットだとは思うのですが、今後の市場拡大という意味でも女性、特に十代~二十代の若い女性読者の存在も決して忘れないでいただきたいです。極端な例かもしれませんが女性からの評判も良い『ケーキ王子の名推理』『宝石商リチャード氏の謎鑑定』のような表紙の作品をもっと目にしてもいいのではないかと思いました(それこそ自分は手に取れなくなりますが)。(7/2追記:改めてこの2つだけでは極端だと思い、補足です。そもそもキャラ絵である必要もないと思います→例としてTwitterで教えて頂いた『となりのヨンヒさん』を追加しました。7/4追記:また、少女二人の描き方の例として『本屋さんのダイアナ』も追加。別にこれらのような絵にしろ、という訳ではなく、様々なバリエーションがあり得る点を明示したいだけです)表紙だけでは充分でなく、内容も女性のエンパワメントに主眼に置いたものがもっと増えるといいと思います。ただ、出版社によってはその余力がない可能性もあり得ることは理解しています。

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また、作品の内容によってはそもそも少女を被写体とすることがふさわしくない場合があると思っています。例えば今回の『日本SFの臨界点』と銘打ったSFアンソロジーで、キャラ絵を起用するのであれば、せめて男女もしくは中立性の描写をした方が良かったのではないかと思いました(実際被写体は無性別とのことですがちょっと無理がある気がしました。あと関係ないかもしれませんが「日本SFの臨界点」なのに男性作家に偏っている気がし、表紙と同様の狭小さを感じました。ただ、これは個人の感覚なので他の方がどう思うかは分かりません→7/4追記:こちらは編集の方より「収録作家の男女比率の問題は自覚的で、[怪奇篇]の編集後記で日本SF史初期における女性作家の活躍について、今後への足がかりとなる解説」がなされている旨コメントいただきました。自分でも難しい問題だと思うので、こちらの解説もしっかり読んでみようと思います。)

以上です。

多分、自分のRTツイートに反対した方も賛同した方にも、上記意図が背景にあったことが分かりにくかったと思うので、今回こういった形で文にしました。多分追記する事はないと思います。

また最後に、「結局素人の発言か」という意見を何個かTwitter上で貰ったのですが、自分がSF玄人と自称したことは一度もないですし、逆にSFを楽しく読んではいるものの、ジャンル自体にそこまで思い入れがある訳ではない(逆に過度な先入観と期待があったかもしれません)立場の人間として今回意見しました。その意見が重要か重要じゃないかは各自のご判断にお任せします。

個人的には、どんなジャンルも玄人じゃないと「素人が」とバカにされ、玄人と呼ばれる頃には爺さん婆さんになり、今度は「老害が」と罵られることに理不尽を感じました…。

【巻き込んでしまった編集の方への謝罪とお礼】
どういう判断プロセスで今回の表紙を採用するに至ったのか、とても丁寧にご説明くださりありがとうございました。また、特定のユーザーに誹謗中傷が偏りがちなTwitterというプラットフォームを敢えて避けていただいたお心遣いも非常にありがたかったです。

感情に任せて書いた点が多く、RTツイートの内容に関しては全面撤回致しましす。ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。(恐らくそう明言するとさらに炎上してしまうことを見越した上で、何も言われていないのだと思い謝罪させていただきます)。もし可能でしたら上記感想を抱いた一ユーザーがいたことだけでもお留めおきいただけますと幸いです。

→こちらお忙しい中、再度ご返答いただきありがとうございました。下記にも記した通り、良著を世に出してくださっていること自体非常にありがたく思っています。引き続き新作楽しみにしています。

【7/5追加:竹書房の編集の方からいただいたコメント】

ありがたいことに、別の出版社の方からも実際の内情に関しての詳しいお話を頂戴することができました。非常に興味深く読ませていただきました。想定ターゲットの実際の数が「5駅ごとに2人」という数字は、自分の想像よりも遥かに低く、非常に生々しく感じました。であれば、仰る通りニッチな層を狙うのが戦略的に正しいのだと思います。

色々とゆっくり考える時間ができ、以前よりもう少し考えがまとまったのですが、自分はこの特定の「ニッチ層」へアピールする時に表紙にキャラ絵が用いられること自体はそこまで気にしておらず、逆に、このアプローチしようとしているニッチな層が業界全体を俯瞰した時に、特定の層に偏り過ぎていないかを懸念していました。普遍的な作品がもっと増えて欲しい訳ではないです。仰る通り、「誰にとっても普遍」を一つの作品で表現するのは物理的に不可能だと思います。

例えば、今某出版社が力を入れている「百合SF」は今まで光が当たることが少なかった題材を扱い、多様性の一角を担い得る良い方向性だと思います(なので尚更当初行なったツイートに、百合SF作品の表紙をピックアップするべきではなかったと後悔し、申し訳なく思っております。正直な所、パパパと検索してぺぺぺと貼ったぐらいの軽い気持ちで行なっておりました。非常に軽率な行いでした)。であれば、極論BLSFももっと取り上げられたら良い。また、そもそも恋愛・性・性的指向に関する表現は嫌だ、自分の性がそもそも性の対象として捉えられた作品は嫌だ、という層にアピールする作品があっても良いと思います。

まあまだギリギリ自分がこの出版業界を眺めている上ではまだまだ多様性は保たれているようにみえます(当社比)のでその視点からは大丈夫だと言えると思います。もちろん両手をあげて…というほどではないですが。これからもその多様性が保たれる業界であって欲しいものです。自分も読みたい本が出なくなるの嫌だし(ソニマガさんの恐竜探偵の続き出ないかなあ、とか)自分の好む装丁で出て欲しい気持ちはありますし。

自分はSFというジャンルに詳しい訳ではなく(だからこそこのように話が大きくなっていまい恐縮です)、業界全体が俯瞰できる立場の人間ではないので、実際に出版社で働かれている方からこのようなお言葉をいただき本当にありがたく思います。様々な制約の中でできるだけ沢山の良書を必要としている方々に届けようと日々ご尽力されている中、自分の拙考に目を通していただき、さらには回答までいただき感動しています。ありがとうございました。これからも多様な作品が出版され続けるよう、一読者として応援(買い支え)させてください。

【本記事に言及いただいた方々】
ありがたいことに様々なご意見を頂戴しました。確かに仰る通りで、自分が間違っているな、と思うご指摘も多いので、是非ご覧ください。

「百合SF」の表紙を例としてピックアップしてしまったのは完全に自分の落ち度です。今回混乱を産んだ一つの原因だと思っており、様々な方を傷付ける行為にもなってしまい、非常に申し訳なく思います。

また、女性を含む「オタク層」に訴求しようとすると、「少女」の成分が多くなるその原理についても確かに、と頷くものがありました。そして最後に挙げられていた「ネオテニー」という言葉が自分の抱いていた違和感を紐解く鍵になりそうです。初めて耳にした単語でした。自分が恥ずかしながら気付かなかった偏見にも光を当ててくださり、色々と学びになりました。ありがとうございました。

こちらの記事では、本来であれば自分が行うべきであった「実際にSF小説の表紙に女の子のキャラ絵は多いのか」という定量的な調査を、とても丁寧に行なっていてくださっています。しかも、記事内容も何度も修正・補足などしてくださり、誤っていた(且つ辛辣・言葉足らずだった)自分のツイートや記事の内容を汲んでくださり、頭が上がりません…。この記事のようにファクトで裏打ちされた意見を表明するべきであること、また、発表を一度きりにはせず、様々な他者の意見を汲み、より建設的な「対話」へと昇華すること…「批判」の理想形を見せてくださったように思います。改めてこちらをお手本にしながら猛省します。

(というか、画像付きツイートだったんで、その画像を拾うさい反例となるSFの表紙も見えてたと考えるのが自然に思えますが)、予防線も張らずに強い言葉をつかえるのは、対象に対して「いくらでも馬鹿にしていい」と思ってるんじゃないか? といういらだちを止められません。

ご指摘の通りです、本当に申し訳なく思います…。また、パンチラ表紙を選択した理由も仰る通り、少女を客体化していると思ったからでした。

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