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②電動車いすを利用してなりたい自分へ

できるだけ人には頼らず自分で頑張らないといけない、昔からそう教わってきたので。」と気持ちを奮い立たせるようにTさんはいつも話してくれます。

 Tさんは生まれた時から両下肢に麻痺があり、立位も歩行もできません。子供の頃は訓練施設に入所し、その時に「あなたはどこも悪い所はない。他の人と違うのは歩けない事だけだから。」

と自立する生き方を教え込まれてきたとおっしゃいます。

 60歳の頃に胸椎後縦靭帯骨化症を発症、手術するも両下肢の痺れや脱力の改善はなく、コルセットを装着しなければ座位姿勢も安定しなくなりました。室内は両腕の力で臀部を滑らして移動、屋外は以前給付で出してもらった自走用車いすを利用されていました。

 通院はヘルパーサービスを利用し、それ以外は殆どご自身で頑張っておられましたが、年齢を重ねる内に筋力や体力も低下し、腰や腕に痛みが出現、一人での外出ができなくなってきました。

元々、好奇心旺盛でアクテイブなTさんなので、だんだんと表情も暗くなってこられたのが、少し気がかりとなりました。

 そこで、Tさんの「これからも自分の力で色々な所へ出かけ、気分転換して楽しみたい!」という思いを実現させたい、さらに両腕の力を維持したいと考え、電動車いすの利用を試してみる

事になりました。福祉用具担当者が写真での手順説明や、自宅である市営住宅の階段から車いすへの乗り移り、近くのスーパーの中まで練習に付き添いました。頑張り屋のTさんは毎日のように練習し、一人でも出かけられるようになりました。少しずつ距離を延ばし、人が多い商店街や近隣区、ずっと行きたかった百貨店の喫茶店にもとうとう行けるように。その話をしてくれたTさんの笑顔がとても素敵で、生き生きとされていたのが印象に残っています。人それぞれ病気や身体の動き、住環境、家族状況が違い、必要な物や求めている事も違います。皆それぞれが違うからこそ、その人の思いや望むくらしを聞きながらサポートをするのが私達の仕事だと思います。

 電動車いすとの出会いがTさんの暮らしを生き生きと、楽しいものに変える事ができたのだと、改めてTさんから学ばせて頂きました。

(掲載を快諾して下さいましたTさんに感謝致します。)

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