都市と都市 チャイナ・ミエヴィル ハヤカワSF文庫

 読み終わって、主人公は「都市」かもしれないと思ったくらい、架空の都市「ベジェル」と「ウル・コーマ」の雑踏が、路地が、行き交う人々が見える様な気がした。

 欧州において、特殊な都市国家である「ベジェル」と「ウル・コーマ」。同一の場所にあり、お互いの領土がモザイク状に絡み合う2つの都市国家では、お互いを「見えて」いながら「見てはいけない」という文化が面々と継承されてきた不思議な場所だった。そんな「ベジェル」で一人の若い女子大生の遺体が発見される。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、二つの国の謎に迫っていく。

 たぶん、この設定が無ければ、ただの警察小説である。警察小説としては、やや上くらいのレベルだが、その情景描写は摩訶不思議な世界が展開される。2010年代と思われる状況の中、ある事柄に対しては第二次世界大戦前後の暗い雰囲気が漂う。

 秘密警察的な組織も見え隠れしたり、背後でうごめくモノがありそうだったり、最後まで物語は結末が見えない。まあ、エンディングは賛否両論あるだろうけど、私は気に入っている。

 ストーリーだけではなく、この「世界観」を堪能する小説だろう。くしくも同時にヒューゴー賞を受賞したのが「ねじまき少女」という事が、読後に判明した時は運命を感じた。こういう事もあるんだよねぇ。

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SFは、"‎Sense of wonder"につきる。この小説をSFと呼ぶかどうか、意見は分かれるだろうが、


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