プリンセス・トヨトミ 文春文庫

 ちょっと掟破りだが、まずは「プリンセス・トヨトミ」の映画の感想から。

== 以下・映画版感想  ==

 ごぞんじ万城目学の「関西にはけったいな人がいます」シリーズ大阪編が原作。天然大爆発の綾瀬はるかを見に行ったというのは公然の秘密である。やっぱり映画は原作と同一ではなく、身長180cmの超美形ハーフの旭ゲーンズグールを岡田将生が熱演。中年の変なおっさんの鳥居を綾瀬はるかが怪演?していた。原作を読んでいる人は、ここで気がつくだろうが、主人公三人のうち2人の性別を変えたことで、原作の設定が大きく変わる。非常に面白くて、茶目っ気たっぷりに映画化してもらったのはありがたいと思ったが、これでは森永くん扮する真田君の抱える悩みが最後に結実しない。ちょっと残念。

 まあ、「しゃべれども・しゃべれども」に登場した森永くんにこういう形で再会できたり、茶子役の沢木ルカは「おお、男前!!」て言いそうなほどはまり役だったし、「鹿男」の関係からか玉木宏がちょい役で出ていたり楽しめる役者さんたちでした。

 それにしても、堤真一ははまり役。中井貴一もはまり役だけど、お好み焼き屋の親父ではないかもね。

== 以上、映画版感想 ==

 私から言わせると、似て非なる従妹くらいの関係の本作と映画だろう。某大手通販の感想に「バタバタ登場する中学生がウザイ」という意味の書き込みがあった。この中学生のドタバタ騒動と、赤く染まる大阪城、千成瓢箪、一斉に停止する大阪の交通機関や携帯電話、大阪城付近に集結する中年以降の男たちが見事に結実したのが「プリンセス・トヨトミ」だと思う。映画感想にも書いたが、「旭ゲーンズグール」が女性であるという事が、非常に重要であり、このことが物語最後の旭と真田少年との会話に収束するのだ。

 互いの秘密(まあ、一方は全く知らないというのがオマヌケだけど)を、400年間維持・守り・伝えることが美しく、けなげで、それによる利益も、もはや無い。とっ始めの「可哀そうやんか」という思いから面々と繋がる話が、なんとも言えず好きなのである。だからこそ、その結果の「旭と真田少年」の会話が愛おしく素晴らしい。

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たぶん、わからないひとには、わからない。つまらないと思う人もいるだろうが、私は大好き。ちなみに原作に沿ったラジオドラマがNHK・青春アドベンチャーで放送された。YouTubeで聞くことが可能である。



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