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針金で遊ぶ/ワイヤーワーク 03:道具②

前回の続きです。
ラジペンには「バネ付き」と「バネなし」があり、
どちらが使いやすいかといえば
「バネなし」だと書きました。
もっとも、その理由は示さず、
最後は「好きずきです」と。

その通りなのですが、
最初に講座的なものを書きますと言っておきながら
結局のところが「好きずき」では、
ちょっと説得力に欠けるというもの。
何といってもワイヤーワークにとってのラジペンは
唯一絶対とも言える重要な道具です。
ということで、「バネなし」を推す理由を
改めて書き足したいと思います。

先ずラジペンとはどんな道具かということで、
基本的なことを3つあげます。
 ①片手で握って使うものである。
 ②モノを切る場合はともかく、
  曲げたり引っ張ったりする場合は、
  先ずモノをつかむ必要がある。
 ③モノをつかむためには最初に先端を開き、
その後グリップを握りしめることで
  閉じながらつかむ。
この3つが、機能と使い方の基本ですが、
バネの「ある/なし」で、
使い方に僅かな差が生じるのです。
①②に関してはどちらも同じですが、問題は③。
とにかくラジペンは先端を開かなければ何もつかめませんが、
「バネあり」は構造的に最初から先端が開いています。
それに対して「バネなし」は自分で開かなければなりません。
その違いにより、必然的にペンチの握り方が変わるのです。
2枚の写真で見比べていただきたいのですが、
最初は「バネあり」で次が「バネなし」です。

バネあり

バネなし

ポイントは小指の位置。
「バネあり」は4本の指がグリップの外側にありますが、
「バネなし」は小指だけが内側にきています。
実際に使っていただければすぐに分かるのですが、
「バネなし」の場合、
全ての指をグリップの外に置いてしまうと
思うようにペンチを開けません。
そのため小指を内側に入れ、
開くときは小指を外に押し出すようにします。
反対に、閉じるときは残り3本の指を
握りしめるようにして使います。
指の分担制ですね。
ちなみにハサミを使うときに
小指を内側に入れることはありません。
なぜかというと、
ハサミの場合はモノを切るときに
グリップの端が完全に閉じてしまうので
指を入れておくと挟んでしまうからです。
ところがラジペンはモノをつかんだ時も
グリップの端は指1本分くらいの隙間が残っています。
それは「バネあり」でも同じです。
またハサミと違ってラジペンの場合は
つまむだけでなく強く握り締める使い方もしますので
グリップ側の空き部分が必要になります。
これは、てこの原理を利かせるためですね。

少し長くなりましたが、
実は「あり/なし」問題の核心は、ここからです。
バネがある場合、グリップを外に開くチカラが加わるので
ラジペンを握った指にテンションが伝わります。
そのチカラがあるため、ラジペンを軽く握ったくらいでも
ある程度は手の中で安定するものです。
だだし軽く握る分、一体感に欠ける感じは否めません。
また、ペンチを手から落とすリスクも増します。
さらに複雑な構造のものを作っているときに
バネが邪魔になることもあります。
その点、小指を中に入れた場合は、
よりしっかり保持することが可能になり、
手、指との一体感を得やすくなるのです。
さらに「バネあり」に慣れてしまうと、
「バネなし」を使うのに苦労しますが、
その逆はありません。
ワイヤーワークはペンチワークでもあります。
自在にペンチが使えることで、
作品のクオリティーをあげることにもつながるでしょう。
以上の理由で、「バネなし」を勧めます。

それでは、また。

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