一方通行

今年の春、彼と別れた。

「話しがある」と言われた時点で覚悟はしていた。
「別れよう」と言われた時でも「好きでいてほしい」と願った。

それから夏になって、秋になって、今は冬になろうとしている。

沢山の男の人と出会った。
私はあてもなく、誰かと付き合う訳でもなく、ただふらふらしていた。

その中の一人にこんな事を言われた。

「嫌な気持ちにさせたらごめんなさい。
前に連絡をとっていた時期は上手くいかなかったけど、忘れられません。
こんなにタイプな人に出会えるなんて中々なくて、正直余裕がなくて、かっこ悪いとは思うんですけど、もう一度チャンスをくれませんか。」

良い言葉だと思った。
思いつきで発したのではなく、きっといくらか悩んだ上でこの言葉を選んだんだろう。

私が振り向けば、
私の事を好きだと言ってくれる人を選べれば、

私が「会いたい」と言ったら「めんどくさい」と返すような人ではなく、「僕はまた会えたら嬉しい」と笑ってくれる人を選べれば。

女の人は愛された方が幸せなんてよくいうけれど。

それでも私は、別れた彼にその言葉を言われたかった。

もし彼が「あの時はごめん。別れてしまったけれど、やっぱり忘れられないんだ。もう一度チャンスをくれないかな?」と言ってくれたら。

私は全てを許すのに。


約束を守らなかったことも、
私を傷つけたことも、
まるでゴミを捨てるように私を捨てた事も
全部全部許すのに。

私は「もう本当にだめかと思ったよ」と笑って、彼に抱きついて、彼の腕の中で眠りたいのに。


今でもまだこんな馬鹿な事を思うぐらい心に残ったままで。

私が勝手に好きになったの。
私が勝手に舞い上がって、
貴方にも同じように好きになってほしくて。

全然大丈夫じゃないのに、
これっぽっちも感謝の気持ちなんてないのに、
「今までありがとう。私こそごめんね」なんて、
思ってもないことを言って、
好きになった事を謝って。


まるで好きな人を諦めるかのように
好きではない人を選んでしまったら
私は誰のために生きているんだろう。