ふまけんの神棚のこと

 みなさんの家に、神棚はありますか?
 私の家にはなかった。行灯家は「何か信仰しているの?」と訊ねると、父に「うちは金目教だよ」と教えてくれるような家庭だったためである。(※金目教とは、横山光輝先生原作の忍者漫画および特撮テレビ番組『仮面の忍者 赤影』に登場する、甲賀流忍者である祈祷師・甲賀幻妖斎が率いる謎の宗教。霞谷七人衆と呼ばれる甲賀忍者の一団を使って、金目像を中心とした本陣を建設し、京に攻め上らんと企む【出典:wikipedia】)
 このたび、ふまけんが表紙のウインクアップが発売された。それにより、不毛に喘ぎ、夜になると山から巨大な熊が降りてきてそのからだを屹立させながら畑を荒らし、困窮を絵に描いたようだった私の故郷の村は救われた。寿ぎたい。ふまけんの神棚を作ろう。そう思った。
 まずは、神棚について調べてみる。

 実に明快であった。せっかくなので、ふまけんを神として棚をこしらえるのではなく、ふまけんの神を祀るために棚をこしらえよう。私は日本における付喪神の考えかたが好きだ。便宜上この場では「ふまけんの神棚」と呼ぶ。また、神棚をこしらえるにあたり必要なものを調べたところ、こちらもかなり人によってばらつきがあるようだ。出雲大社のホームページを確認すると、以下の通りだった。

 信仰のものなのだから、自分で決めなければならないこともある。その文言が深く胸に刻まれた。インターネットで得た知識を踏まえたうえで、自分で決めることにした。

◼︎ ふまけんの神棚作りに必要なもの
・お神酒を注ぐための器
・塩を盛るための小皿
・榊
・榊を生ける花瓶ふたつ

 おそらくこれで神棚のようなものができるはずである。神棚に絶対の正解はないとのことだったが、榊は一対にし、左右に配置しなければならないという決まりであるらしい。つまりシンメである。なぜ榊を生けるのかというと榊という漢字は『木』と『神』を合わせており、榊は神道において、神と深い関わりのある樹木ということだそうだ。日本では古来より植物や先端が尖ったものには、神様の力が宿ると考えられており、榊には神籬(ひもろぎ)、つまりは神さまが降り立つ依り代としての役割もあるとのこと。ふまけんの神が降り立つ依り代としての、榊…。この情報に関しては終活ねっとというサイトを参照した。こんなにはやく終活について調べることになるとは思わなかった。善は急げだ。死に急げかもしれない。

 とりあえず必要なものを揃えた。ふまけんのウインクアップをみるたび「そのふまけんをしまってくれんか…わしには強すぎる…」になってしまう。はやく神棚をこしらえて祀り上げなくては。おそらく小皿はまんまるなものを用意したほうがいいような気がするが、この小皿であれば野沢菜なども載せられそうであるためこれを選んだ。また、花瓶は割と持っているが対になるものはなかったため新たに購入、お神酒を注ぐための器はちょうどよいものがなかったため自分の持っているグラスでまかなう予定である。榊はスーパーマーケットの仏花コーナーに売っていた。

 これが急ごしらえの神棚である。お神酒はないため料理酒をグラスに注いだ。ふまけんの神よ、許したまえ。シンメの榊が神秘的な雰囲気を醸し出している。また、塩をメチャクチャうつくしく三角に盛れたので注目してほしい。そして、ちょうどよく去年私に不幸が降り注ぎすぎたため会社の人たちが厄除けに連れて行ってくれた際にいただいた、浅草神社の白い封筒もついでに祀った。神さま同士なかよくしてほしい。そしてついに、ふまけんのウインクアップを祀る。

 その神々しさに、涙があふれる。
 ふまけん大明神、ふまけん大社。初詣は、ふまけん大社へ。あたらしい年への願いをこめて。新年のよろこび、豊かな安心。ふまけん厄除け大師…。
 さて、まだウインクアップは開けそうにない。しばらく神棚に祀っておくことにする。