コンマは点にあらず

久しぶりの文法編です。現在分詞の華麗なプレーの続きをご紹介する前に、どうしてもコンマについての認識をシフトチェンジする必要があるんですね。

標題にも書きましたが、英語のコンマと、日本語の句読点の点とは、似て非なるまったくの別モノです。「 , 」と、「 、」は、機能がまったく異なるんです。

そう言われても、?????ですよねえ。

では、まず日本語の「、」から。これは、文章の区切りを表す記号ですね。

ところが日本語というのは点をまったく使わずに書いたところで多少読みづらさはあったとしても意味の取り違えがそれほど頻繁に起こるわけではありません。現にこのひとつ前の文章は、点なしで書きました。でも、意味はわかっていただけましたよね。

確かに、接続詞の後でつけるとか、意味の区切りで使うなど、一定のきまりのようなものはあります。しかし、それほど厳密かと言うと、どうもそうでもなさそうなんです。

ここは区切っておいた方が意味がわかりやすくなる、その方が自分の言いたいことが通じる、相手にわかってもらいやすい、文学的な香りを出したい、などの書き手の表現の自由にある程度委ねられているのが日本語の点、だと私は感じています。

それに対して、英語のコンマは、一言で言ってしまうと「校正記号」なんです。

校正記号ってわかりますかね?編集のお仕事の方はお馴染みでしょうけど、学校の作文の添削とかで先生に朱書きで訂正された記憶ありませんか?

以下に校正記号の一例をアップしておきます。(読みにくいね)
赤インクで記号を入れて、原稿を直していくためのものです。

で、英語のコンマがこの記号に似ているのですよ。

英語って、語順がとっても大事なので、それを上手く調整するために、必要になってくるようなのです。特に、文章の前後を入れ替えたり、文言を挿入したりするときに、よく使います。

たとえば、

When I was a child, I would play in the garden.

(子供のころは、その庭で遊んだものでした。)

同じ意味の区切りで日本語の「、」来るので、ついつい同じものだと思ってしまうのですが、本来、When I was a child というまとまりは、時を表すものなので、文章の最後にくるのが鉄則なんです。(英語の語順のヒミツのところでお話したとおりです。)

ですから、本来は

I would play in the garden when I was a child.
(その庭でよく遊んだものでした。その時私はこどもだったのですが。)

となるのが、英語のズームアウトの基本ベクトルなんです。(しかもコンマなしっ!)

そうなんだけれども、どうしても「子供のころはね」ということを強調したい時に、本来後ろに来るべき時をあらわすことば(ここでは副詞句)を先に言いたいので、前にもってくる。

すると、本来の語順と違ってしまうので、「本当は後ろにあるものを持ってきちゃいましたよ。だからホントの文章はここから始まりますよ。」という合図としてコンマを使うんです。

校正記号という意味、おわかりいただけました?

これで、もしかしたら英語の語順のズームアウトにひっかかりがあった人もスッキリしてもらえたのではないでしょうか?

<英語のしっぽのつかみかた⑥>  英語のコンマは校正記号


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