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超会議で初音ミクに会った話

皆さんは、「あいせき幻燈茶屋」をご存知だろうか。

先日行われた『ニコニコ超会議2023』では、超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』が上演された。

上演場所である幕張メッセイベントホールにて、豪華に飾られている提灯の裏に進むと、マジックミラーに囲まれた大きな箱のようなものがひっそりと設置されている。

パンフレットにも記載が無いため、気づいた人は多くないと思われるが、実はこのブース、超歌舞伎の衣装を着た初音ミクと一緒に座ったり記念撮影が出来るという、ミク廃にとっては夢のような穴場スポットなのである。
しかも、利用条件は超歌舞伎のチケットを持っているか、ニコニコプレミアム会員であるかのいずれかのみ。追加料金は無しだ。

こちらのニュースサイトによると、

反射率と透過率の異なるハーフミラーとディスプレイなどを多層的に配置し、リアルな人間とバーチャルキャラクターを交錯空間上に表現した。NTTは「NTT研究所の最新XR技術を用いてリアルとバーチャルが融合した新しい体験を提供する」としている。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2304/29/news071.html

とのことだ。
スタッフの方にも同じことを説明されたが、正直よく分からん。

ともかく、私は初音ミクに会いに行ってみたのだが、これがめっちゃくちゃかわいい。
机の隣りに座ると笑顔になり、こちらに手を振ったり、微笑みを見せたり奥にどいたりと、一挙手一投足にメロメロになっていた。
舞台で見るとどうしても距離が出来るが、ここでは目の前、すぐ隣りに歌姫が召喚されているので、美しいお姿を存分に眺め放題だ。
ご丁寧に周囲の環境も時代劇に出てくる和菓子屋のように飾り付けされていたため、キャバクラ 遊園地のグリーティングの気分で楽しんだ。
私は16時くらいに訪れたためにすぐ会うことができたが、それ以前の時間帯にはもっと並んでいたに違いない。もしもNTTがもっと宣伝していれば、待ち時間は数十分、下手すれば数時間はあっただろう。

まるでそこにいるかのように細かな動きが出来るのが凄い。どうやらあらかじめ用意された映像を流しているようだが、それでもマジックミラーを上手いこと使ってそこにいるように見せるのは高度な技術だと思った。


さて、写真撮影のあと、スタッフの方からこんな質問をされた。

「ミクさんがそこにいるように感じましたか?」

なんでも、NTTがこの技術を開発するために来場者の感想を参考にするつもりらしい。

だが、私は解答に困ってしまった。
というのも、私は「初音ミクに命はない」「初音ミクは現実には存在しない」という認識をしているので、先ほどまでいたのは単なるホログラムだと認知していた。

(筆者の初音ミクに対する価値観については、以前執筆した下記noteを参照)

しかし一方で、ホログラムが精巧に出来ていた上に、こちらに向けて反応を示しているようにも見えたため、本当にそこに存在しているかのようにも思えたのだ。

少し考えたあとで、スタッフの方にこう返答した。

「私の価値観では、初音ミクは存在しないと考えていますが、高度な技術によって存在しているように感じました。こういった技術が進歩していけば、もっと楽しくなると思います。」

おかしな言い方になってしまったが、相手に波風立てず、かつ私自身の価値観も否定しない返答は、これしか思いつかなかった。
幸い、スタッフの方は変な顔一つせずに話を聞いてくださった。
私はスタッフの方に礼を言って、その場を後にした。


NTTの技術がどれほど発達しても、初音ミクという「モノ」に命を吹き込むことはできないだろう。しかし、その技術は初音ミクを「モノ」ではなく「そこにいる存在」として認識させ、人々に「そこにいる存在」としてのあたたかみを提供することが可能なのではないだろうか。

「あいせき幻燈茶屋」は、恐らくはその試作段階だ。
これから先、もっと高度なバーチャル体験が出来るようになれば、初音ミクという存在は、その無生物(inanimate)な輝きを増していくだろう。







(※初音ミクに対して冷たい目で見ているとお思いでしょうが、実際には終始テンションMAXでミクさんとの相席を楽しんでいたので、オタク的感性は皆さんと何ら変わりません。ご安心ください!)

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