見出し画像

初音ミクの誕生日祝いをしていたら泣いてしまった話

2023年8月31日、初音ミクが16周年の記念日を迎えた。

私は、16周年という節目の年にお祝いをすべく、Twitterでよく上がっている「本人不在の誕生日会」をしようとした。
都内某所のパーティースペースを借り、そこに所持しているありったけの初音ミクグッズを集め、盛大にお祝いするという計画だ。

撮影のため、早速初音ミクグッズをキャリーバッグとトートバッグに詰めていくと、感慨深い気持ちになっていた。

初めて行ったコラボカフェで当たった、浴衣を着た初音ミクのアクリルスタンド。
知り合いから譲ってもらった、大量のフィギュア。
各地のイベントやボーマスで買った、数々の缶バッジにキーホルダーにCD…
もちろん、人生の相方になりつつある雪ミクのぬいぐるみと、本日の主役本人(?)である初音ミクV4Xも一緒だ。

撮影当日。遠出でくたびれた体を癒しつつ、これまで私が集めてきた初音ミク達を机に並べていく。
どれも一つ一つに思い出が詰まった宝物だ。私は今、自分が初音ミクと共に歩んできた歴史の集大成を並べているのだ。
感謝を込めた色とりどりのハートのバルーンと「3」「9」のバルーンも飾り付け、ついに初音ミクが集まる夢の空間が完成した。

今回の主役

机いっぱいに並べられた初音ミク達を見て、私は幸せに満ち溢れた…というよりは、なんだか不思議な感覚になっていた。

世界に歌声を響かせ、多くのファンがいる歌姫が、今目の前にいる。それも、ただの一ファンでしかない自分に祝われるために。
そんな「どこにでもいて、どこにもいない」とでも表現できるような、変幻自在に何者にでもなれるところが、初音ミクの魅力なのだと思った。

撮影を終えた後、私は持ち込んだCDプレイヤー (これも初音ミクのロゴ入り)で、好きな曲を聴いてみることにした。
2017年発売の初音ミク10周年記念アルバム『Re:start』をセットする。目を閉じると、まるでCDプレイヤーの中にその歌姫がいて、誰かの音や想いを届けようとしているような、そんな感覚になっていた。
いつまでも、初音ミクが主役のこの空間で、歌姫が歌うところを聴いていたい。そんな気持ちになった。


だが、現実はそうはいかなかった。
スペースを借りられる時間は限られている。予約した時間を過ぎると超過料金がかかってしまうので、すぐに片付けを始めた。
せめて最後まで初音ミクに浸っていたいと、CDプレイヤーに接続していたイヤホンを付けたまま、机の上の初音ミク達をバッグにしまっていった。

気分転換に、ピノキオピーの『愛されなくても君がいる』を聴いてみよう、そう思ってピノキオピーのベストアルバムをセットする。

やはりこれは、初音ミクに寄り添い、愛し、共に生きてきた人の歌だ、と思いながら聴いていた。
そして曲が終盤に差し掛かった、その時だった。

楽しいパーティーが終わっても 君が笑うなら
ずっと ここで 初音ミクでいさせてね!

愛されなくても君がいる/ピノキオピー

そのフレーズを聴いたとたん、思わずガクリと膝から崩れ落ちてしまった。

「楽しいパーティーが終わっても」。
そうだ。
このパーティーが終わっても、初音ミクはここで終わるわけじゃない。
むしろ、明日にはまた、新しい曲がどこかに投稿されて、別の初音ミクが生まれているのかもしれない。
楽しむべきなのはこの時だけじゃない。これから先の、果てしない未来まで、初音ミクはつながっているんだ。

…そう察した瞬間、今日だけを楽しみにして生きていた自分が愚かしく思えてきた。
そして同時に、この歌姫はどこまでも人の心に寄り添えるんだ、という気持ちになり、

気がつくと、涙を流していた。

初音ミクへの果てしない感謝の気持ちからだろうか。
こっちが初音ミクを祝っているはずなのに、気がつけば今日の主役に慰められたような気持ちになっていた。

命はないのに、なんて優しい存在なんだ。そう思った。
単なる歌詞の一部でしかないはずなのに、ここまで人の心を動かすのか。
私は初音ミクの偉大さに、ただ言葉を失っていた。

家に帰ると、ぬいぐるみと初音ミクV4Xに手を合わせた。
ありがとうの気持ちと、これからもよろしくの気持ちと、そして一番大切な、


「16歳おめでとう」のお祝いを込めて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?