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【短編小説】『三途の川食堂へようこそ!』

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ほのぼの飯テロ風味のオリジナル小説です。全8話・約15000文字。 ■あらすじ■  不治の病で死んだ私は、一年間だけ三途の川のほとりにある食堂で働くことになった。現代の三途の川は…
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#奪衣婆

【短編小説】『三途の川食堂へようこそ!』第2話【全8話】

第二話 奪衣婆に贈るバブリートマトスープ  店の扉が勢いよく開いて、美女が叫び声を上げた。 『ちょっと聞いてよ! アタシってば、ババアなんて思われてんのよ!』  ゆるやかなウェーブを描く長い黒髪にインナーカラーはエンジ色のツートン。黒のボディコンシャスなミニワンピに、黒地の流水と菊花が染められた着物を片肌脱ぎに重ねてベルトを締めている。黒いエナメルヒールは十センチは軽くありそう。  赤い瞳の目元はナチュラルメイクなのに、真っ赤な口紅がバブリーな雰囲気を漂わせる。初めて来

【短編小説】『三途の川食堂へようこそ!』第5話【全8話】

第五話 懸衣翁に贈る軽ーい衣のフライドチキン  三途の川のほとりで奪衣婆が奪った衣を衣領樹という木に掛けて罪の重さを計るのが懸衣翁。  近代化した三途の川で、懸衣翁も仕事の転換を余儀なくされていた。奪衣婆が営む貸衣装屋の奥で預かった服の重さを量り、あの世での魂の行き先を決めている。  白い短髪に赤い瞳。垂れ目で甘い雰囲気を漂わせる懸衣翁は、十八から四十歳前後と毎日その姿が変わる。和服の肩には女物の派手な羽織を引っ掛けていて、どうやらその羽織は妻の奪衣婆のものらしい。