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映画 くれなずめ


くれなずめを最初に知ったのは、Twitterのプロモーションだったかと思う。
好きな俳優だらけじゃん!と
それはとても単純なきっかけだった。
藤原季節さん、高良健吾さん、若葉竜也さん、ハマケンさん、成田凌さん
それから、ん?アルプススタンドのはじのほうの先生?

物語よりも、あのわちゃわちゃとした感じがとても好きで
公開を楽しみにしていた
公式HPをチェックすると、驚いた事に地元の映画館での上映がなく
ミニシアターに行った際にスタッフさんに予定を聞くも
「上映予定はないです」とのこと
行きつけていた駅のシネコンの(雰囲気からしてたぶん責任者?)白シャツスタッフさんに近づいてこっそり聞いても「上映予定はないです」

残念に思っていたら、熊本復興映画祭での上映が決まっていた。

もう、これはもう行くしかない!

ちょうどお休みの日と重なっていたオープニングの日に熊本へ
プチ旅行を兼ねて参加。
会場は映画館のように斜めに席が昇っていくわけではない
広い会場に折りたたみいすが並べられたホールだった。

前の席の人の頭の隙間から、隣の人のスマホのライトを気にしつつ見た「くれなずめ」は泣いて笑って、いつのまにか笑っているのに泣いているという
とんでもなく揺さぶられた自分に驚き不織布のマスクが吸い取らない涙をハンカチで押さえつつ見ていると「ガルーダ!」のくだりでポカーンとなったのを思い出す。


当初予定されていた4月29日上映開始日はコロナ禍により延期

生配信イベントもリアルタイムで追いかけた

※5月12日からはめでたく地元シネコンで上映される事を知り何度も通った。



この映画は、わたしがずっとずっと前から抱えていた後悔の念を優しく癒してくれた
物語終盤最後に6人で会った日をやり直す。
過去を書き換えてやろうぜと、思い切り手を振り涙する5人に見送られがら吉尾がもらす「泣くなよ」が胸に刺さる。

生配信イベントでもあった「自分ごととしてしみこんでいく」映画なのだと思う。


◆ ◆ ◆

わたしには、年が離れた弟がいた。
父が再婚をし出来た弟は、わたしの子供達とほぼ同学年だった。

それでもわたしの事を「お姉ちゃん」と呼んで慕ってくれた。
夏休みや冬休みはリュックを背負って泊りに来て、わたしの子供達(いわゆるおじさんおばさんとなる訳だけど)と兄弟のように遊んでた。

彼が小学校2年の時

その日は、わたしが子供達を連れて実家に遊びに行った。
彼は「今日学校で習った」と家庭科の教科書を持って「お姉ちゃん、ホットケーキを作って」と嬉しそうに話しかけてきた。
わたしは、少し疲れていて「また今度ね」とやんわりと断った。

しばらくして、また
「お姉ちゃん、お腹すいた。おにぎり作って」と甘えてきた。
わたしは、また「さっき晩御飯食べたから、また今度ね」と断った。

その日が わたしと弟の最後の日だ。

じゃあ、またね。と子供たちと一緒に車に乗り込み手を振る。
またねーと子供達も手を振る。
小さな彼もまた、それに答えて「またねー!」と手を振り見送ってくれた。


「また明日」
「また明日って、なんか良いよな」

ネジと吉尾の会話はわたしの心を溶かす。

明日、また今度会えるという漠然とした思いは絶対ではないことを知ったのは弟が事故にあい入院したと聞いた日だった。

「友達の家に遊びに行って、カードを忘れたと、横断歩道を翻った」
「その人は、家族に夜ご飯をと車を走らせていた」
「急ブレーキをかけたけれども間に合わなかった」

信じられない事は起きる

病院で意識のないままベットに横たわった小さな弟は
7日間意識がもどらないまま、脳死ののち心臓が停止した。


「また今度ね」と作ってあげなかったホットケーキとおにぎりを布団に横たわった小さな弟の枕元に置きわたしは泣いた。


ずっとずっと心に残っている後悔を、この映画は優しく包み込んでくれた。

「くよくよすることから逃げんなよ」と欽一は言う。

「次は絶対電話出てやるから」と明石が言う。

「死んでたら偉いのかよ!死んでも死んでなくても同じなんだよ」とユキエが言う。

「なんか、お菓子もらいに来たみたいになっちゃって」と大成が言う。

永遠の別れは悔やんでも、悔やみきれない。
でも、それで良い
生きるだけだろと優しく包んでくれる。


近しい人の死は受け入れがたく、どうしようもない後悔と一緒に
突然に、本当に突然に起こる。

いつか起こる大切な人との永遠の別れ
最後の日に後悔しない人なんてきっといない。
小さな、とても小さな棘が心に刺さったまま人は生き
なにかのきっかけで思い出す。

記憶の中で彼は生き続け、お姉ちゃんと呼びかけてくれる。
シチューが嫌いと俯いて泣いた彼も
きゃあきゃあと遊ぶ彼も
「ホットケーキ作って」と「おにぎり作って」と言った彼も
写真がなくても いつもずっと一緒に生きている。

彼が生きたかった今日を生きているなんて、そういう大袈裟な事ではなく
ただ、ずっと一緒に生きているんだよ。と背中をさすってくれるような映画です。ぜひ機会があれば。ぜひ。

配信も始まっています。

良かったら、ぜひ2回見てください。
「くれなずめ」おススメです。






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