古い電話機の子機を修理しようと分解しながら思ったこと
みなさん、こんにちは。すぎっちです。
今回は家電回路の修理技術的な話です。
我が家にはSANYOの電話機があるんだけど、買って10年以上経つ古株の家電です。保証期間はとっくに過ぎていて、昨年末くらいに子機の液晶表示が全く表示されなくなった。通話は発信着信もできるのでそのまま使っていたのですが、ちょっと時間もできたので直るものなら修理しようとした結果を書いておきます。
なお、故障は事実だけど、原因の推定はあくまでオレの推定の域なのでそこはよろしく。壊れたモノが教えてくれることは多い。
結論:うちの子機は修理不可能でした。当面このまま使います。
おそらくはLCDドライバICの破損だと思われます。ドライバICはCOG(Chip On Glass)で、LCDモジュールごと交換するしかないのですが、入手不可能なので修理はあきらめて、そおっと元に戻しました。w
写真:
思ったこと:
冒頭にも書いたが、モノは壊れたときに、どう壊れたかを教えてくれる。それを解析技術によってなぜ壊れたかに展開できれば、次の設計に生かすことができる。そうやって日本のモノづくりは高品質に磨きをかけてきた。だが今は、ソフトウエアで価値を生み出す時代になってハードウエアやメカを重視しなくなっている。
身の回りのモノが捨てられるのは、昔は壊れた時だったが、今では時代に合わなくなった時に、壊れてはいないが捨てる。という時代になった。だから、ハードウエアはこれ以上長持ちする必要が無い。それよりも時代的に価値が無くなるのが先に来る。という事だ。
ゲーム機などが判りやすい例だろう。壊れていないからと言って、今さら任天堂DSや初代PlayStationで遊ぶ人はマニアだけだ。壊れていなくても、未来永劫には使えないのだ。
だからと言って、故障原因を調べて修理する事もできないで、すぐ捨てたり、買い替えしたりというのはSDGsではないよなぁ。
家電メーカの方々には、技術の進化や顧客のニーズよりも、地球レベルでどうあるべきか、どう生命サイクルを循環させるのか。考えてほしい。もはや人間が食っていくこと、商売すること、だけの時代じゃない。21世紀の地球システムの理解と運用からブレイクダウンして、個別の機器設計に反映すべき時代だ。
と、ここに提言しておこう。(何様だと言われるだろうけどw)
つまり、ソフト更新しない機材は、シンプルで長持ちでゴミを出しにくい設計にする。ソフト更新する機材は、周辺機器(例えばキーボードなど)の感性価値を高めて、周辺機器は世代を超えて使いまわせるようにして、CPUとかの必要部分だけの更新とリサイクル率の向上(メーカーによる回収や買取)。とか進めて地球環境保護をもっと進めてもらうといいな。
とか分解しながら思ったのであった。
じゃ、またね。
ここからは回路技術的な内容のメモ書きなので、興味ある人だけどうぞ
修理メモ
手順:故障の現象をよく見て、仕組みから原因を推定する
・発信着信は問題なし。
⇒表示部だけの不良
・LCDのバックライトは明るく点灯
⇒LCDのセグメントがONにならない不良
⇒FUSEや電源系の問題ではない。
・LCDはきれいに不点灯(どこかのセグメントが付きかけたり、表示部の中のITOという透明な配線が見えたりしてはいない)
⇒LCD表示器の劣化や破損ではない。LCDを表示させるIC(LCDドライバー)に電源が来ていないか、通信が来ていないので、表示駆動をさせていない状態。
という推定をして、原因がLCDドライバー素子手前で「導通不良」の可能性大だとすると
まず最初に疑うべき箇所は、コネクタです
表示が出ない「だけ」ということは、LCDモジュールのフレキとメイン基板(ガラエポ0.8mm)の接続コネクタを最初に疑うべきだ。LCDドライバーへの電源供給も、マイコン素子からLCDドライバー素子への表示データ通信も、このコネクターを経由しているからというのもあるけど、実は回路の「劣化導通不良」を起こしやすい1番の原因はコネクタなんだ。2番目はFUSE、3番目は素子不良(あくまでオレの経験則だが)。
コネクタは使う間にだんだん端子を押さえている力が低下してくる。そうなると接点の接触圧力が下がる。コネクタ接点部分で接触抵抗増大となり、電流が流れなくなるのだ。フレキのコネクタと接する端子部分は表面に金メッキをしているが、フレキ自体が接点で押されて跡がついて(=へこんで)しまうので、これも接点の接触圧力を低下させてしまう。
そこで今回、コネクタからフレキを外して拭いて再度コネクタに刺しなおすなどしてみた。しかし、状況は全く変わらなかった。残念!!。
次の故障率順番はFUSEなんだが、電源系ではないLCDドライバーの部分だけにFUSEが入ってるはずはないので、その次の「LCDドライバーIC自体の破損」ではないかと考えた次第。
だが、これはCOGのドライバー素子だから交換修理できない。と思いつつも
LCDドライバー素子破損の原因を推察してみる
①静電気破壊の可能性?
子機に手を伸ばしたときに、冬場の静電気がバチッと飛んで、液晶表示用のドライバーICが壊れてしまったのでは?という推定。あるいは、表示窓のホコリを乾いた布でふき取るときに、表示窓の透明樹脂板に静電気が発生。静電気は電位の低い部分(回路のGND部分)に流れようとするが、最も距離的に近いのがLCDドライバー素子であり、静電気の高圧でドライバー素子が破損したのではないか?という推定。が考えられた。なぜなら構造的に、表示窓からドライバICまでの距離が近い。1cm程度の距離だ。これだと静電気はギリ飛ぶ距離だな。
耐静電気試験の現場では、いわゆる人体モデルで1万ボルト以上の電圧印可を行う。静電気GUNを使って「バチッ」と静電気を飛ばす試験機があるんですよ。有名なのはこういう試験機。
https://www.noiseken.co.jp/products/emc_type/ess/
そういえば子機が壊れて表示が出なくなったのは冬場だった記憶がある。
けど、ほかの子機のメーカも同様の構造にせざるを得ない。(液晶表示のすぐ下には電話をかけるためのボタンを配置するしかない。)つまり、COGのドライバーICは表示部のすぐ上に配置するしかない。だから表示部に触れたら、指先の静電気はドライバーICに向かって流れやすい。ここまで距離が近いと、静電気で破壊してもおかしくないと思う。しかし他メーカの場合は「子機の液晶が壊れやすい」という情報がネットに無いから、これはSANYOの子機固有の問題(ドラシバーIC自体が静電気に弱い)という事なのかも。
SANYOで電話機と言えば鳥取サンヨーかなぁ。昔は携帯電話とか作っていたはず。LCD自体やLCDドライバーIC、LCDモジュールも作っていたんじゃなかったかな、(記憶があいまいでゴメン。)このLCDモジュールがSANYOのオリジナル設計、製造だとしたら、この部材が他メーカよりも壊れやすい可能性はあるが、比較したことはないから真実はわからない。
②ショート破壊の可能性?
表示窓の透明樹脂板は上ケースに両面テープで貼られている。さらに透明樹脂板はユーザから押されたときの力を、スポンジで受けて、その下のLCDモジュールに直接力が加わらないようにしてある。だが、今回そのスポンジは長年の劣化により加水分解してべとべとだった。(綿棒で軽くふき取れる)つまり、加水分解してできた低インピーダンスの導通体(そんな事あるか?)によって、ショート破壊した可能性はないか?
と思って加水分解した茶色のべとべとを綿棒で集めて絶縁抵抗値を測ってみたが、まったく問題なし。とはいえ、水分を含んだ樹脂がCOGのドライバーに密着していたら、ITO側(LCD側)に加わる電圧がおかしくなる事はあるだろうと、綺麗にべとべとをふき取った。 が、 ふき取り後も状況は変わらず。もうドライバーICが壊れているんだろう。
③スポンジが加水分解してスポンジとしての「力を受け止める機能」が低下して、外力でドライバーIC近傍を断線させた?。
とか考えてみたが、外観の破損、力が加わった形跡はなし。
これ以上調べても結局は新しいICDモジュールを入手できなければ治らないのでここらで考えるのをやめて、分解と逆の手順でそおっと元に戻す。
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