初期研修病院の選び方 パート1
巷には、どういう病院を選ぶかという基準について様々な噂が流れている。当然ながら万人に共通する正解は無いし、また理想を完全に満たす病院は存在しないかもしれない。第一本記事は小生の経験をもとにしているのでエビデンスレベルは低い。そうはいっても、学生の想像よりかはマシだと思うので、参考までに記すことにした。
都会か地方か、そして病院の規模について
私は地方を推す。地方の2.5(〜3)次救急を担うハイパー病院がよい。ただし大きすぎてもダメで、目安として研修医の募集人数は10人/年以下がよい。地方は確かに交通の便は悪いし、謎の方言に悩まされ、商業施設が限られるなど、デメリットは想像に難く無い。それでも初期研修をするのには地方が適している。これを理解するには、都会での病院で研修するデメットを知るとよい。
✳︎都会といっても都道府県によって規模が異なるので、東京のような極端な大都会を想定していただきたい。すなわち都会の全病院を否定しているわけではなく、アンチテーゼとしてわかりやすいよう、極端な例を述べることをここに断っておく。
最も重要なのは、都会の大病院では医者が充足しており研修医は仕事を与えられず、まともに診療の経験ができないという危険性である。初期研修医のうちにどれだけ診療にたずさわり経験を積むかは非常に重要である。これに関し詳しくは後日改めて記事にしようと思う。
都会では医者の多さだけではなく、患者の権利意識が高く、マスコミが目をつけているという点で地方と異なる。地方では良くも悪くも、まだ「お医者様」文化が残っていて、若い医者だからといって馬鹿にされることはそうない(態度の悪い医者を生み出す一因でもあるが)。モンスターペイシェントに遭遇する可能性は地方の方が低かろう。
マスコミの目とは、研修医の医療過誤を見つけ記事にせんとするマスコミのことである。病院としては当然、メディアに晒されたくはない。すると一番安全なのは、研修医に重要な仕事を任せないことである。研修医を採用するにもかかわらず、いわば保身のため研修医の育成は二の次、三の次という病院もあり得よう。
次に、都市部では病院が多く各病院ごとに役割分担されている場合があり、一つの病院で経験できる症例に偏りが生じうる。初期研修は専門によらず広い知識、経験を得る場なのだから(前の記事参照)、この偏りは看過し難い。やれ神経内科が無いだとか、腎臓内科が無いだとか、すべての診療科が揃っている病院は稀であるがそういう意味ではなく、脳梗塞は診るが脳出血はあそこの病院が担当だからうちでは診ない、といったケースがあり得る。
大学病院レベルでは患者の重症度、疾患頻度が大きく偏るし、そもそも研修医の手におえるレベルでないと仕事を任せられるわけがない。診療科がズラッと揃っているような大きすぎる病院は、初期研修に向かない。また医者が多い病院では仕事を任されないリスクがあることは前に述べた通りである。なお研修医の人数は10以下が良いとした理由もこれである(加えて一学年内で不仲を生じやすく、一丸となって成長しにくいという理由もあるが)。
ついでに脱線すると、初期研修中は極力同じ病院で研修するのがよい。病院の中には上記偏りをカバーすると謳い、(地域医療研修以外でも)研修期間中、別の病院でも研修できると宣伝するところがある。一見良さそうだが、これは勧められない。働く病院が変われば、人間関係、電子カルテ、採用薬、その他ローカルルールが変わるので、診療科の勉強以前にそれを覚えなくてはならない。これはあまりに非効率的であるし、精神的にもしんどい。転校するくらいの気力は必要と思っていいだろう。
都会と地方の比較に話を戻す。これは理由として弱いが、都会には遊びという誘惑がある。地方で研修した私は、同期や先輩と遊んだこともあったが、あくまで仕事第一であった。初期研修はモラトリアムではなく、いわば専門家になる修行の一環である。それを阻害するリスクは避けるべきだ。
また近年流行している例の伝染病のことを考えると、都会より地方の方が安全かつ負担が少ないだろう。
他にもあった気がするが、今思い出せないので一旦筆を置く。思い出したらまた記事にする。
今後パート2以降で、初期研修でどういう仕事を任される病院がいいのか、規模が小さすぎる病院はどうしてダメかを記し、巷に流れる噂の真偽を検討したい。
また、本ブログの趣旨とズレるかもしれないが、いつか医学教育の問題点にも触れたい。
「最後の方はアンタの備忘録だろ!」と思った方、正解です。
以上
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