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ユナボマーの思想

セオドア・カジンスキーという男性をご存知でしょうか。
別称はユナボマーです。

幼少期のIQテストで167のスコアを出し、飛び級を繰り返してハーバード大学に入学、その後に最年少でカリフォルニア大学バークレー校助教授になりました。

そこで突如辞職し自然の中で自給自足の生活を送り始め、その際に周囲の自然が商業活動のために破壊されたことがきっかけとして、現在の技術社会を打倒するためとして1995年まで十七年間に渡り様々な技術者などに爆弾を送りつける活動を行い、逮捕されました。

FBIで最も捜査に時間と費用がかかった事件と言われていますが、証拠を残さない、自分とは関連づけられない嘘の証拠をあえて演出するなど、非常に巧妙な手口であったためだとされています。

詳しくはWikipediaで見ていただければと思います。


そんな彼が捕まった大きな要因は、事件を止めることを引き換えに新聞社にユナボマーとしての論文掲載を要求してそれが許可され、その論文がセオドア・カジノスキーとしての論文の主張と文体に似ている事が判明したことでした。


新聞に掲載された論文では以下のことなどを主張していました。

・テクノロジーを打倒すべきである
テクノロジーは社会を不安定にし、人々を満たされないモノにする
・人々は大勢のために遺伝子操作される
・左翼にも右翼にも相容れてはいけない


この論文は1995年のものであり、今から28年も前のものですが、的中している部分もあるように思います。


・テクノロジーを打倒すべきである
テクノロジーは社会を不安定にし、人々を満たされないモノにする
パソコンの普及、スマホの普及により人々の精神疾患が増えているという研究があります。
ベストセラーとなった『スマホ脳』では、著者の住むスウェーデンではスマホが浸透した時と同時期に精神病や不眠症が増加したと言います。
また、アメリカなど含む複数の国を対象にした研究では、スマホによりストレスが増加すること、IQがおよそ10程度下がっているという結果もあったそうです。


・人々は大勢のために遺伝子操作される
遺伝子操作とは違いますが、人間の脳や体を現体制にフィットさせるようになっている流れはあります。
アメリカでは特に早かったですが、ADHDやASDといった発達障害への研究が行われており、投薬も行われています。
現代では様々なルールを忠実に守るための能力が求められており、それらを実行できない人々はそれまでは「変わり者」だったところから「発達障害者」になりました。
今後、遺伝子技術が発達してきて安全だという風潮さえできれば、これまでは服薬によって現代社会に適応していた人には遺伝子操作が行われてもおかしくありませんし、当事者としても効果の少ない薬をいつまでも飲むよりはそれを望むかもしれません。


・左翼にも右翼にも相容れてはいけない
ここでカジンスキーはこう説明しています。
左翼主義者は社会主義者、ポリコレ活動家、人権活動家、動物保護活動家、フェミニスト活動家などとと定義される。
これらの活動家のエネルギーは劣等感と過剰な社会化の二つであり、我々の世界が持つ狂気が最も広い範囲で顕在した存在の一つである。
右翼主義者もまた間抜けであり、伝統的な価値観を守ると言いつつも技術革新と経済発展を支持しているが、技術と経済が発展すれば価値観が変わることに永遠に気づかない。


30年前の発表にも関わらず、的を得ている部分があるように思います。

SNS疲れなどのようにテクノロジーは人々を不安にしています。

人々は体制に合わなければ異常として判断されます。

人権を守るための強烈な活動によってなぜか人々は思ったことを言えなくなったり、したいことがで出来なくなったりしていますし、かといって経済や技術革新がそれらを解決してくれてもいません。

犯行自体は別として、この論文には高い評価がされたようです。


カジンスキーは逮捕後の判決で弁護士を解雇して自身が弁護人を行いましたが、その理由は弁護人がカジンスキーを精神異常者として、そのため刑を免れる権利があると主張したからでした。
ユナボマーは自身を精神異常者ではないとしていましたし、そのために刑を免れるという戦い方は選びませんでした。


ふと考えたのですが、精神異常とは何なのでしょうか。

カジンスキーの頭脳とは程遠い自分には彼を理解できませんが、では自分が彼を理解できなければ、多くの人が彼を理解できなければ、彼は異常者なのでしょうか。

イーロンマスクの宇宙開発も自分には理解できませんが、それが必ず間違っているとはいいきれません。単に自分が理解できていないだけの可能性があるからです。

もちろん精神異常というものは存在していますが、もしカジンスキーが錯乱していたのではなく、彼の頭脳を持ってして考えればそれが人類の未来にとって最も適している行動だったのかもしれません。


ユナボマーに触れてみて色々と考えはしたのですが、ではそれを自分にどう活かしましょうか。


一つ考えたのは、頭脳が全てを解決するわけではないということです。

「自分はもっと頭が良かったらなあ」と思うことはあるのですが、自分がなんとかして今の知能から数%向上させられたとしてもカジンスキーには追いつきませんし、飛び抜けた知能を持つカジンスキーですら刑務所で死を迎えました。(それがカジンスキーにとって不幸であったかどうかは分かりません)

二つ目は、自分にはカジンスキーの考えが正しいかも間違いかも分からないということです。

強烈な思想は刺激的ですし、カジンスキーに影響を受けた人もおそらくたくさんいたとは思うのですが、いくら彼の頭脳が優れていて、他の知識人が彼の論文を支持したとしても、それが正しいかどうかは自分には分かりません。


「なんも分からんかった」

これだけ書いてはみましたが、こんな結論になりました。

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