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さよならミッドナイト

窓辺に腰掛けてひとり吸うたばこ、隣に寄り添う影のないだけでひどく広く感じた。
煙が遠ざかっていく、僕を置いていく。
さよならって言ってはじめて、ぼくはぼくになれたきがした。
目を離せば遠ざかる煙に掴む。視界が眩しいからメガネを外した。
寝たフリ続ける僕の恋人。

胃の中のぐちゃぐちゃを全部吐き出して楽になる。後味は薬の残骸が喉に詰まるだけだった。
もう一度体を起こしてたばこを吸う。ZIPPOで付ける煙が光って消えた。
煙の燃焼が遅い。冬なのに、雨が降ってるカラだろうか。
屋根にぺちゃぺちゃと当たる雨音がぼくのこころを鳴らしているようだった。
煙とともにぼくのこどもが逃げていく。駆け回るようなさみしいこども。
ずっと愛し方を間違えていた。


アダルトチルドレン、とひとはぼくにいった。
白い煙がニコチンなのか吐く息なのかわからなくなった。
それがわからないようにわたしは、過去の悲しさと今の悲しさとの境がわからなくなっていた。

推しと好きな人と離れてはじめてわたしはわたしのしらないわたしのよわさについて向き合った。
ずっと親からの愛がわからなかった。
私が愛に飢えていて愛が分からない理由を、私が常に不安でさみしがりやな理由を向き合った。
わたしはほんとうに変わりたかったから。
今変わらないと一生変われないと思った。好きな人も推しもいないから。変わることは怖いけれど変わらなきゃ行けないと思った。きっとこれは必要な試練だから。

好きな人への愛と親への不信感を混同していた。
親に愛されてるのか分からないのと好きな人に愛されているのか分からない不安とは全く別物であるはずなのに同じようなものとして捉えていた。
わたしはきみにずっと理想のお母さんをさせていたんだと気づいた。
それはひどく苦しい作業だった。

好きな人が推しが愛してくれていたことわたしのことをわたしとして愛してくれていたことに離れてからやっと気づいた。失っ手から気づくのは遅すぎたが、失いでもしないと気づけなかった。
好きな人も推しもずっと手を広げてわたしを守ってくれていたのに、わたしはずっとそれに甘えるばかりで甘えて吸い尽くしてそれでも気づけなかった。
ずっと愛されていたのに。

わかっているつもりだった。でもつもりだけだった。
眠れない夜に会いに来て眠れるまで抱きしめてくれるのは愛だ。わたしの将来を本気で案じてやりたい事に背中を押してくれるのは愛だ。私の不安をみて目を見て話してくれるのは愛だ。わたしはずっと抱きしめられて守られていたのに、わたしはずっと抱きしめられたい、と思っていた。
愚かな。

ぬいぐるみをだきしめる。
どうしてずっと不安だったの。
安心感をえられたことがないから。
安心して帰る場所だと思っていたものが揺らいでしまったから。
どうして安心したかったの。
守られていることを知りたかったから。
まもられていたんだよずっとあなたは、守られていたんだよ。
ほんとうにたいせつだよとなんどもいってくれていたのに抱きしめてくれていたのに信じるのが怖くて突き放し続けた。
どうして信じるのが怖かったの。
信じて裏切られたくないから。
どうして信じて裏切られないかこわかったの。
わたしはわたしがわからないから。

わたしはわたしがわからない?
わたし、「わたし」(というひとりのにんげんとして)扱われることをしらなかったから、ずっと。そんな発想もなかった。わたしのことわたしとしてみてくれるなんて。
そんなこと考えたこともなかった、考えれもしなかった。

ただ、愛を知りたかっただけなのにあまりにも傷つけてしまった。
どうして傷つけてしまったの
"それ"を言われるのが怖かったから。
先に言ってしまおうと思った。
自分でされるのが嫌なことを先にすることで自分が言われないように拒絶してしまった 弱くて愚かな。
ほんとうは好きで大切でたまらなくて愛を信じたくていつだってもう一度あいたいのに。

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